(最終更新:2021年1月18日)
前回は紅茶の製造工程についてお話ししたので、今日はその工程の最後、茶葉の配合(ブレンド)についてお話しします。
市販されている茶葉には、実にさまざまな名前が付いています。たとえば、次のようなものです。
この3つについては、以前説明した紅茶の種類と名称のルールに則っています。
また、これらのどれにも当てはまらない命名がされている場合もあります。たとえば「イングリッシュブレックファスト」「イブニングティー」といった飲み頃の時間が付けられていたり、ルピシアの「ベルエポック」「ラタタン」「ユニオンジャック」のような個性的な名前が付けられていたりする場合です。
このようなブレンド名は、基本的にメーカーやブランドが好き勝手に命名しています*1。そして、その名前に相応しい味や香りになるよう、色々な産地やシーズンの茶葉を各メーカーがブレンドしているわけです。
では、「ニルギリ」「ヌワラエリヤ」など、産地が1か所に限定されている「シングルオリジン」の茶葉は、ブレンドをしていないのでしょうか?
実はその答えは、「している」です。というのも、ひとつの産地の中にいくつもの茶園があり、異なる茶園の茶葉をブレンドしているからです。
「同じ産地の茶葉をブレンドする必要なんてあるの?」と思われるかもしれませんが、実は茶葉の香りや味は産地だけでなく、茶園や年によっても変わります。さらに同じ茶園の中でも畑の場所が違うと、標高が変わって気候も変わるので、香りや味が当然違ってくるのです。加えて、お茶は植物ですから、天候の影響で不作の年があったり、香りや味がよくなかったりします。
でも茶葉を買う側にとっては、そんな事情なんて知ったことではありません。好きなブランドのお気に入りの茶葉は、いつもの味でいて欲しい。年によって味が変わってしまうのは嫌なわけです。
そんな消費者の我が儘に応えるべく、メーカーは茶葉の味や香りが変わることがないよう、毎年さまざまな茶園の茶葉をブレンドしています。スーパーで普通に買える茶葉も、もしかしたら毎年、メーカーのティーブレンダーが苦労してブレンドレシピを作っているのかもしれません。
たとえば、リプトンのイエローラベルはケニアをメインとしたブレンドで、ミルクを入れても楽しめるコクと、渋くなりにくい飲みやすさを重視しています。
また日東紅茶のデイリークラブは、セイロンのハイグロウンとアッサムがメインになっており、リプトンに比べるとやや香り重視のブレンドです。
こんな風にブレンドティーの産地を見て、どんな茶葉なのかを予想してみたり、メーカーが何を重視してブレンドしているのか考えたりするのも、紅茶の楽しみ方のひとつです。今度スーパーのお茶コーナーに行ったら、パッケージの裏側に書いてある産地を見比べてみてください。思わぬ発見があるかもしれません。
*1:「イングリッシュブレックファスト」のような昔からある定番のものは例外です。