ただの紅茶好きが紅茶について色々語ったり勉強したりするブログ

ただの紅茶好きが、紅茶について知っていることをお話ししたり、紅茶の本やレッスンで勉強したりするブログです。

同じ名前なのに味も香りも違う! アップルティーを飲み比べてみた

(最終更新:2023年7月16日)

前回の記事でようやく茶葉のブレンドの話ができたので、ここまでに説明した内容を踏まえて、今回は同じ名前の茶葉を比較してみたいと思います。

 

今回のテーマに選んだのはアップルティーです。非着香の茶葉ではなくフレーバードティーを選んだのは、茶葉のブレンドだけでなく着香の仕方にも注目していただきたかったから。その中でアップルティーを選んだのは、フレーバードティーの中で自分がいちばん好きだからです(笑)。同じフレーバードティーでも、アールグレイはあまり得意ではなく……。

 

……とまあ、前置きはここまでにして、さっそく比較してみましょう。今回は4種類の茶葉を取り上げます。

 

リプトン アップルティー

まずはスーパーなどでも手軽に買える、リプトンのアップルティーからです。

f:id:juri_iruj_tea:20190420210321j:plain

このときはちょうど増量中だったんですね……。

開封する前に、パッケージの裏側を見て、茶葉の産地を確認してみましょう。

f:id:juri_iruj_tea:20190420210415j:plain

原産国は「ケニアインドネシア」だそうです。

後でも説明しますが、ケニア産の茶葉は渋みが少なく、まろやかな口当たりで飲みやすいのが特徴です。これに対し、インドネシアの茶葉はマイルドながら、香りのほうがやや際立っている印象があります。

では、肝心の茶葉を見てみましょう。

f:id:juri_iruj_tea:20190420210725j:plain

大きさがとても細かいですね。一般的なティーバッグには、こうした小さめの茶葉が使われることが多いです。茶葉以外に見える白い塊は、リプトンが「カプセル型フレーバー」と呼んでいる、リンゴの香りを抽出してカプセルにしたものと思われます。現にこの写真を撮っている間も、甘い香りがよく漂っていました。

では、実際に淹れてみましょう。

f:id:juri_iruj_tea:20190420211244j:plain

淹れてみると、リンゴの香りはさほど強くはなく、ほどほどといったところ。しかし、口に含んでしばらくすると、リンゴの香りが口いっぱいに広がります。味に関しては、ケニア産の茶葉が中心とあって渋みが少なめ。

ちなみに、普通はフレーバードティーにミルクを入れることはあまりないのですが、今回は試しにミルクを淹れてみました。ケニア産の茶葉はミルクティーにも合うので、これもミルクを入れて飲めることは飲めます。ただし、当然ながらリンゴの香りは薄れます。

 

トワイニング アロマティックティー アップル

スーパーなどで比較的簡単に入手できるものとして、もうひとつトワイニングのアップルティーも見てみましょう。

f:id:juri_iruj_tea:20190420211756j:plain

おしゃれで可愛らしいイラストですね。このパッケージになったのは、2018年の秋からのようです。

続いて裏側はこちら。裏というより、箱の底ですが……。

f:id:juri_iruj_tea:20190420212021j:plain

原産国は「中国、アルゼンチン」。中国はキームンで知られる著名な紅茶の産地のひとつですが、アルゼンチンは意外でした。僕もこれまでアルゼンチンの紅茶は飲んだことがありません。どんな茶葉なのでしょうか。

f:id:juri_iruj_tea:20190420212248j:plain

先ほどのリプトンと比べて、さらに細かくなっているのがわかりますね。そしてリプトン以上に甘く強烈な香りが……。さすが「アロマティックティー」の名前を冠するだけのことはあります。

ではでは、実際に淹れてみます。

f:id:juri_iruj_tea:20190420212426j:plain

リプトンと比べると、色がやや薄めですね。味もあっさりで、コクが少ない分、リプトン以上にゴクゴク飲めてしまいます。

しかし香りは相変わらず強烈。リンゴ以外に花というか、コスメのような甘く鮮烈な香りがします。僕はあまりこの香りは得意ではありませんでした……。ミルクを入れてもこの香りは残りました。そのうえ味は消えてしまうので、これはリプトン以上にミルクには向かない茶葉ですね。

 

さて、ここまで手に入りやすいブランドを見てきたので、今度は紅茶専門店の茶葉を見てみましょう。といっても、全国あちこちに店舗があるルピシアですが……。

 

ルピシア アップルティー

ルピシアの茶葉はパッケージの写真を撮っていないので、代わりにオンラインストアのリンクを掲載しておきます。

www.lupicia.com

原産国は「ケニア、インド」。リンク先の写真をよく見ると、丸いコロコロとした茶葉が含まれているのがわかるかと思います。これは以前の記事でも紹介したCTCと呼ばれる製法で加工された茶葉です。いちおうCTCの説明をもう一度振り返っておきましょう。

CTC製法では、摘んできた茶葉を専用の機械で潰して(Crush)、引き裂いて(Tear)、丸めて(Curl)製造します。茶葉の大きさも何も関係なく潰して丸めてしまうので、製造にかかる時間が短く済み、大量生産が可能です。また、成分の抽出も早くなるので、ミルクティー向きの茶葉になることが多くなります。

 

 茶葉の写真は別に撮ってあります。

f:id:juri_iruj_tea:20190420215352j:plain

CTCの丸い茶葉のほかに、ドライフルーツにしたリンゴそのものが含まれていることにお気づきかと思います。このように花びらや果実、スパイスなどを混ぜて香りを茶葉に吸収させたものを、(狭義の)フレーバードティーと区別してブレンデッドティー(blended tea)と呼ぶ場合もあります。ただし、このアップルティーは香料も使用しているようなので、(狭義の)フレーバードティーでありブレンデッドティーでもあると言えるでしょう。

この茶葉で実際に淹れてみるとこのようになります。

f:id:juri_iruj_tea:20190420215204j:plain

淹れてすぐにわかるのが、本物のリンゴを思わせる甘く上品な香り。リプトンやトワイニングはいかにも香料であることがすぐにわかってしまう香りでしたが、ルピシアは瑞々しいリンゴの果実を思わせます。

味はリプトンと同様、ケニア産の茶葉がメインなので、適度なコクがあります。ミルクを入れてもコクが残るうえ、なんと香りが消えません。お好みで砂糖やハチミツなどを入れれば、リンゴのケーキを食べているような気分になります。

実は今回フレーバードティーにもかかわらずミルクを入れていたのは、これが理由でした。先ほども説明したように、フレーバードティーは香りを楽しむものなので、香りを消してしまうミルクを入れることは普通はありません。しかしルピシアのアップルティーは、ミルクを入れても味や香りを楽しめるようにブレンドされているのです。

 

ルピシア デカフェ・アップルティー

さて、実はルピシアにはもうひとつアップルティーがあります。それはデカフェ、つまり特殊な製法でカフェインを除去したものです。

www.lupicia.com

茶葉の生産国はスリランカ。お気づきでしょうか、通常のアップルティーと生産国が違います。これはおそらくルピシアデカフェの茶葉がどれも基本的にスリランカ産だからだと推測されます。

ちなみに、生産国がケニアではないせいか、CTCの丸い茶葉が含まれていません(以下の画像参照)。スリランカでもCTCの茶葉は生産されているはずですが、理由はよくわかりません……。

f:id:juri_iruj_tea:20190420215514j:plain

こちらも実際に淹れてみました。

f:id:juri_iruj_tea:20190420215538j:plain

水色は通常のアップルティーとあまり変わりませんね。上品なリンゴの香りがするのも、通常の茶葉と同様です。ただし味は明確に違います。スリランカ産のオーソドックスな茶葉のため、これまでの3つと比べて渋みが強めです。ミルクを入れても香りは消えないものの、通常のアップルティーほどミルクティー向けではないかもしれません。基本的にはストレートで飲んで、ミルクを入れるとしたら少しだけにするとよさそうです。

 

というわけで、今回は各ブランドから販売されているアップルティーを飲み比べてみました。同じ「アップルティー」という名前でも、香りや味の違い、その違いを生む茶葉のブレンドの違い、そしてその背後に見える各ブランドの意図の違いまでおわかりいただけたでしょうか?

アップルティー以外の種類でも、メーカーによってブレンドがまったく異なります。ぜひパッケージや茶葉をじっくり観察したり、実際に淹れて飲み比べたりして、違いを楽しんでみてください。