(最終更新:2020年10月18日)
前回の記事で、スリランカの7大産地の茶葉を飲み比べた後、「あること」に気づいたと書きました。
勘の鋭い方はお気づきかもしれませんが、実は飲み比べに使った茶葉はどれもオーソドックス製法で作られたもので、CTC製法で作られた茶葉がひとつもなかったのです。
とはいえ、これも仕方のないこと。実は、スリランカ紅茶の大部分はオーソドックス製法で作られており、CTCの茶葉は相対的に非常に少ないのです。
Tea Exporters Association Sri Lanka(スリランカ茶輸出業者協同組合)が発表している統計レポートによると、2019年の1年間にスリランカで生産された茶葉の量は300,134トンで、うちオーソドックス製法の紅茶は273,907トン(約91.2%)なのに対し、CTC製法の紅茶は23,585トン(約7.8%)しかありませんでした*1。つまり、スリランカ産のCTC紅茶は手に入りにくく、オーソドックス製法の茶葉と比べると希少価値が高いことになります。
しかし、わずか8%足らずとはいえ、CTCの茶葉が作られているのは確かです。そこで今回はスリランカ紅茶の飲み比べの続きとして、スリランカ産CTC紅茶の飲み比べをしてみました。
- ところで、そもそもCTCって?
- 飲み比べに使った茶葉
- ディンブラCTC(マウントバーノン茶園)
- キャンディCTC(ロスチャイルド茶園)
- サバラガムワCTC(ネルンワッタ茶園)
- ルフナCTC(デラワ茶園)
ところで、そもそもCTCって?
さて、本題の飲み比べに入る前に、「そもそもCTCって何だよ?」と思っている方がいらっしゃるかもしれないので、簡単におさらいしておきましょう。「別に復習なんていらないよ」という方は、こちらをクリックして飲み比べに進んでください。
CTCとはCrush(潰す)、Tear(引き裂く)、Curl(丸める)の頭文字を取ったものです。以前紅茶の製造工程に関する記事で説明したように、摘んできた茶葉を陰干しした後、酸化発酵させる前に茶葉を揉み、圧力をかけるプロセスが入りますが、この工程をCTC機と呼ばれる専用の機械で行います。
このCTC製法で作られた茶葉は、下の写真のように、本来の茶葉の形を留めておらず、丸くコロンとした形をしています。通常の茶葉と比べて抽出のスピードが速く、ミルクティー向きの茶葉になることが多い傾向にあります。
先ほども説明したように、スリランカではCTC製法はあまり盛んではありませんが、世界的に見ればむしろオーソドックス製法よりCTC製法で作られた茶葉のほうが多く、全世界で生産されている紅茶の6割以上がCTCの茶葉とも言われています。これはインドのアッサムやニルギリ、またはケニアでは、ほとんどの茶葉がCTC製法で作られているためです。
飲み比べに使った茶葉
CTC製法の説明はここまでにして、さっそく飲み比べに入りましょう。まずは使った茶葉をご紹介します。
今回の飲み比べでは、ジャパンティーフェスティバルで購入したMITSUTEAのスリランカ紅茶7種テイスティングセット(ミルクティー編)のうち4種を使いました。いずれもシングルエステート(単一茶園)の茶葉です。
先に名前だけ挙げておくと、
- ディンブラCTC(マウントバーノン茶園)
- キャンディCTC(ロスチャイルド茶園)
- サバラガムワCTC(ネルンワッタ茶園)
- ルフナCTC(デラワ茶園)
の4つです。なお、茶葉の写真もいちおう撮ったのですが、大きさが少し変わるだけで違いがほとんどわからないので、今回は割愛します……。
では、いよいよ実際の飲み比べに入りましょう。今回も産地の標高順に飲んでいきます。なお、味や香りはあくまで僕の感想であり、人によって感じ方が変わる点はご了解ください。
ディンブラCTC(マウントバーノン茶園)
口に含むとタンポポのような花の香りが広がります。味はオーソドックス製法のディンブラと比べて渋みが少なく、コクが強めです。
また、CTCの茶葉はミルクティーに向いているので、今回はミルクを入れた状態の写真も撮ってみました。ミルクの量はテイスティングカップ1杯につき大さじ1です。
ミルクを入れると花のような香りはそのままに、さっぱりめのミルクティーになります。元々少ない渋みが消えて、ゴクゴク飲めるようになります。物足りないと言えば物足りないかもしれませんが、あっさりめのミルクティーが飲みたいときにはぴったりです。
キャンディCTC(ロスチャイルド茶園)
水色(すいしょく)はディンブラと大して変わりませんが、香りや味はまったく違います。オーブンで煎ったクルミのような甘く香ばしい香りと、ディンブラよりさらに渋みの少ない味です。非常にマイルドながら、コクはしっかりしています。
ミルクを入れると香りは残りつつ、まろやかな味になります。ディンブラ以上に飲みやすいミルクティーになります。
サバラガムワCTC(ネルンワッタ茶園)
水色の違いはやはりあまりよくわかりませんが、香りはディンブラやキャンディと大きく異なり、濃いハチミツのような甘い香りがします。渋みはほぼゼロで、コクはまあまあといったところです。
ミルクを入れると香りは幾分控えめになりますが、カフェオレのようなほろ苦い味わいになります。茶葉のパッケージには「濃厚なミルクティーになる」と書いてありましたが、あまり濃厚さは感じられません。あくまでカフェラテではなくカフェオレのような味です。
ルフナCTC(デラワ茶園)
水色は他の3つと比べると若干明るい気がしますが、やはり大きな違いはありません。しかし香りは4つの中でいちばん個性的で、落ち葉のような、土のような香りです。味もボディが強めでインパクトが強いものの、後味はすっきりしています。
ミルクを入れても強いコクが残ります。濃厚なのはサバラガムワよりむしろこちら。それでいて後味のすっきりさは変わりません。個人的に、ルフナはオーソドックス製法よりCTC製法の茶葉のほうがミルクティーに向いているように思います。
というわけで、CTCの茶葉の飲み比べもこれで終了です。水色の違いは普通の茶葉ほど大きくはありませんが、香りや味のバリエーションは普通の茶葉と同じくらい豊かなのがわかりました。当然と言えば当然ですが、CTCの茶葉でも味や香りは通常の茶葉に近い特徴があるんですね。オーソドックス製法で好きな産地の茶葉がCTC製法でも作られていたら、飲み比べて違いを楽しむのも面白いかもしれません。
改めて、前回の記事はこちらです。
teaisbalmforthesoul.hatenablog.com
*1:なお、足しても100%にならないのは、わずかながら緑茶が作られているからです。