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フランス人マダム式アイスティーなるものを作ってみた

(最終更新:2023年8月6日)

夏と言えばアイスティーが美味しい季節ですが、毎年夏になると、SNSで以下の記事が話題になるようです。

dot.asahi.com

残念ながら、この記事に登場するフランス人マダムの「フランスの紅茶の消費量はイギリスよりも多い」という話は真っ赤な嘘*1なのですが、「世界一おいしいアイスティーの作り方」と大見得を切られては、試さないわけにはいきません。そこで今回は、このフランス人マダム式の作り方でアイスティーを淹れて、普通のアイスティーと比較したいと思います。

 

まずは作り方を記事中から引用します。 

(1)できればやかんではなく、鍋に2リットルの水を入れ、沸かす。

(2)沸騰したら火を止め、ティーバッグを3包入れてふたをし、21分蒸らす。

(3)ふたをはずし、菜箸などでそっとティーバッグを取り出す。

(4)粗熱が取れるまで放っておき、粗熱が取れたらピッチャーやジャグなどに移し変え、冷蔵庫でひと晩冷やす。

21分とは何とも中途半端な蒸らし時間ですね。この時間になったのは、マダムいわく、

私はもう何十年も夏になるとアイスティーを作り続けてきて、やっとこの最適な蒸らし時間にたどりついたの。20分でも22分でもダメ。

とのこと。「蒸らし時間には厳密なわりに、ティーバッグの茶葉の量や等級については何も決まりがないんだなぁ……」と若干の胡散臭さを感じます。

というのも、お気づきの方も多いと思いますが、ティーバッグ1個あたりの茶葉の量はメーカー、ブランド、商品などによって異なるからです。また、ティーバッグに使われる茶葉はBOPなど細かめの等級が多い傾向にありますが、これも絶対ではありません。

おそらくこのマダムは、いつも同じ紅茶を使ってアイスティーを作っているのでしょう。だからこそ、21分という中途半端な蒸らし時間に決まったのだと思います。

 

まあ、今回は一応この時間を守って作ることにしましょう。なお、紅茶はスーパーベルクスで購入した「ケリチョゴールド ピュアケニアティー」というティーバッグを使用します。茶葉の量はティーバッグ1個あたり2.0gです。

proudlyfromafrica.com

まずは鍋に2リットルのお湯を沸かします。

お湯が沸いたら火を止めて、ティーバッグを3個投入します。

蓋をして21分蒸らしたら、ティーバッグを静かに取り除き、粗熱が取れるまで放置します。

最後にピッチャーに移し替えて、冷蔵庫で冷やせば完成です(写真左)。

なお、比較対象のアイスティー(写真右)は通常の急冷式(オンザロック)で淹れました。ティーバッグ1個を熱湯100mlで1分半抽出した後、氷を入れたグラスに注いで作っています。

完成したところでさっそく飲み比べましょう。まずは水色(すいしょく)です。通常のアイスティーと比べて色が濃く、暗くなっています。

次は肝心の味です。2リットルの水にティーバッグを3個(=6g)しか使わないので、味が薄いのではないかと危惧していましたが、甘みがしっかり出ているように感じられます。一方、いかにも紅茶らしい渋みや香りは普通のアイスティーよりも弱い気がします。ケニアの紅茶は元々、渋みが控えめでマイルドな味わいですが、フランス人マダム式の作り方では茶葉の量が少ない分、渋みも出にくくなるようです。

また、「甘みがあって渋みが少ないなら、ゴクゴク飲めるアイスティーができるのでは?」と思われるかもしれませんが、僕の舌では甘みだけでなく不快なエグみや泥臭さも少し感じました。これはあくまで僕の推測ですが、熱いお湯に茶葉を長く浸したままにすることで、通常の淹れ方では出てこない成分まで根こそぎ抽出されたのではないかと思われます。

以上を踏まえると、この方法でアイスティーを作るときに高級な茶葉を使うのはもったいないと思います。マダムが話していたように、「毎日飲むものだからこそ、高い紅茶なんて買いませんよ」というくらいの姿勢でちょうどよいと思います。まあ、僕は毎日飲むからこそ、茶葉にも淹れ方にも妥協したくはないのですが……。

 

というわけで、僕個人としては「世界一」と呼べるほど美味しいとは感じませんでしたが、好みは人それぞれですし、茶葉が変わればもっと美味しくなるかもしれません。「この茶葉で作ると美味しかったよ!」というのがあれば、ぜひコメントで教えてください。

*1:2016年の統計では、お茶の人口1人あたりの消費量は、英国が約2kgなのに対し、フランスは0.2kgしかありません。ちなみに日本は1kg弱です。