今年は各産地の茶葉をひとつずつ詳しく取り上げるシリーズを書いていこうと思います。取り上げる順番は、基本的にクオリティシーズンの茶葉が日本で出回る時期に合わせていきます。
記念すべき1回目の今回は、ちょうどこの年末年始の頃に出回り始めたダージリンのオータムナルを見ていきましょう。
そもそもダージリンとは?
ダージリンはインドの北東部、ヒマラヤ山脈の高峰カンチェンジュンガの麓に位置し、ネパールとの国境付近にある産地です。標高が高く気候が冷涼なため、植民地時代から避暑地として知られており、寒さに強い品種である中国種のほか、クローナル種*1が主に栽培されています。なお、日本では紅茶の産地の中でも特に有名ですが、山岳地帯にあって畑を新しく広げることが難しいせいで、生産量はインド全体の1~2%ほどしかありません。
ダージリンのクオリティシーズンは、3~4月頃のファーストフラッシュ(春摘み)、5~6月頃のセカンドフラッシュ(夏摘み)、そして10~11月頃のオータムナル(秋摘み)と年に3回あります。なお、セカンドフラッシュとオータムナルの間には雨季があり、クオリティシーズンと比べて茶葉の質は悪くなります*2が、時期が長く茶葉の生育が速いので、生産量も多くなります。そのため、「ダージリン」という名前で流通している安価なブレンドは、この雨季の茶葉の比率が大きいそうです。
オータムナルの特徴
基本的に、ダージリンの特徴は「香りの良さ」と「爽やかながらしっかりした渋み」にありますが、一年の最後に摘まれるオータムナルは渋みが比較的穏やかになり、秋の実りを思わせる芳醇な香りと深い甘みが現れます。「ダージリンを飲んでみたいけど、紅茶の渋みがあまり得意ではない」という人でも飲みやすいと思います。
飲み方については、ダージリンの他のクオリティシーズンと同じく、基本的にはストレートで飲むのがおすすめです。ただ、甘みやコクがあるのでミルクティーにするのもありと言えばあり。その場合は、ミルクの量を控えめにするか、抽出に使う茶葉を多めにするとよいでしょう。
他の時期との比較
では、他のクオリティシーズンと比較してみましょう。以下の写真は、左から順にファーストフラッシュ、セカンドフラッシュ、オータムナルを並べたものです。
ファーストフラッシュは、茶殻の色や茶液の水色(すいしょく)が他の2つと明らかに違いますね。その淡い色から連想されるように、若々しいフレッシュな香りが特徴です。味の面では、この3つの中でも特に渋みが強い傾向にあります。
その隣のセカンドフラッシュは、茶殻や水色はオータムナルに似ていますが、香りや味は大きく異なります。質の高い茶葉には、「マスカテル・フレーバー」と呼ばれる特徴的な香りがあるほか、オータムナルに比べて渋みもやや強めになります*3。
なお、上の3つはいずれもルピシアの茶葉です。ファーストフラッシュとセカンドフラッシュはそれぞれ定番商品のブレンド、オータムナルは今季のブレンドを使いました。
相性の良い食べ物は?
秋の実りを感じさせる味わいというだけあって、秋の果物とよく合います。特にリンゴとの相性は抜群で、アップルパイとは至高のペアリングです。
それ以外でも、フルーツタルトやイチゴのショートケーキなど、果物を使ったお菓子とは基本的によく合います。また、ドライフルーツやナッツ類とも相性が良いです。個人的にはモンブランやキャラメルもありかなと思います。
産地別紅茶の研究シリーズの一覧はこちら。