前回あまり反響がありませんでしたが(笑)、産地別紅茶の研究シリーズは今後もマイペースに続けていきます。今回はちょうどクオリティシーズンを迎えたばかりのディンブラを取り上げます。
産地の特徴
スリランカは、国土の中央から南部にかけて、ピドゥルタラーガラ山(標高2,524m)やアダムスピーク(標高2,238m)などを中心とする山岳地帯が広がっており、その周りを囲むように紅茶の産地が分布しています。ディンブラはその中でも比較的標高の高い土地に位置しているので、基本的にはハイグロウンに分類されます*1。
また、ディンブラは山岳地帯の西側にあり、北東からの季節風が吹く1~3月頃に乾季を迎えます。基本的に紅茶は雨季より乾季のほうが質が高くなるので、ディンブラの場合、年明けからちょうど今くらいの時期(2~3月頃)がクオリティシーズンとなるわけです*2。
茶葉の特徴
スリランカの茶葉は約90%がオーソドックス製法で作られており、その中でもBOPなど等級の細かい茶葉が多いそうなので、この記事でもBOPを前提として説明していきましょう。
さて、ディンブラの特徴について、紅茶のブランドや専門店がどのように説明しているのか調べてみると、「バランスがよい」「個性がない」という言葉がよく使われています。たとえば、
香り、味、水色ともにバランスのとれた(神戸紅茶)
ディンブラは味も香りもバランスの良い紅茶(Tea Magazine)
明るい鮮紅色の水色と力強いフレーバー、そして適度な渋味とバランスのとれたセイロンティーとして一般的な紅茶(リーフルダージリンハウス)
突出した個性がない(キリン「午後の紅茶」)
という感じです。しかし、こうした抽象的な表現では、具体的にどんな味や香りなのかが伝わりにくいのではないかと思います。
確かにディンブラは、ダージリンやウバのような特徴的な香りや渋みも、アッサムやルフナのような強いコクもありません。しかし、いかにも紅茶らしい優雅で華やかな香りと、ハイグロウンの茶葉によく見られる爽やかな渋みがあります。そのため、紅茶を飲み慣れていない人にとっては、ディンブラでも十分に渋く感じられるはずです。
以上を踏まえてディンブラの特徴を具体的に表現すると、「クセのない豊かな香りとやや強めの渋み」にあると言えるでしょう。その香りと渋みを楽しめるように、ディンブラはストレートで飲むのがおすすめですが、やや濃い目に抽出して、キレのあるミルクティーにするのもありです。神保町のティーハウスタカノでは、ランチタイムのセットメニューでこのキレのあるミルクティーを飲むことができます。
相性の良い食べ物
ディンブラは味や香りに突出した個性を持たないので、どんな食べ物とも合わせやすい紅茶ですが、特に脂肪分の多いものと合わせると、口の中に残った脂をディンブラの渋みが洗い流してくれます。
たとえば、ショートケーキやシュークリーム、ミルフィーユなど生クリームやカスタードクリームを使ったお菓子とディンブラの組み合わせは、紅茶がお菓子の味を邪魔することなく、それでいてクリームの脂っぽさをリセットしてくれるという点で、理想的と言えるでしょう。また、以前別の記事にまとめたように、ディンブラはチョコレートとの相性も悪くありません。
少し意外なところを挙げると、以前リプトンがディンブラに合う食べ物としてアーモンドを推奨していました。確かにアーモンドなどのナッツ類は脂肪分が多いので、ディンブラとの相性がよいのも頷けます。
今年のクオリティシーズンのディンブラが出回るようになったら、濃厚なスイーツと一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか?
産地別紅茶の研究シリーズの一覧はこちら。