産地別紅茶の研究、第3回はニルギリを取り上げます。ニルギリは紅茶好きの人ならともかく、そうでない人にとっては印象の薄い産地のような気がするので、今回は少し詳しめに説明しようと思います。
産地の特徴
「そもそもニルギリってどこだよ」という人のために、まずは場所を地図で確認しておきましょう。赤いマーカーの付いているところがニルギリです。
ご覧のとおり、ニルギリはインドの南部にある産地で、西ガーツ山脈南部の丘陵地帯に位置しています。同じインドの産地でも、北東部にあるダージリンやアッサム*1からは遠く離れており、むしろ海を挟んだスリランカのほうが近いと言えるでしょう。なお「ニルギリ」という名前はタミル語で「青い山」という意味だそうです*2。
以前「ルピシアだより」に掲載されたニルギリ紅茶の特集記事によると、ニルギリは標高が低い茶園ほどCTC製法の茶葉が多く、標高の高い茶園では主にオーソドックス製法の茶葉が作られているそうです。その中でも生産量が多いのはCTCの茶葉で、ニルギリ紅茶の約90%がCTC製法で作られているとも言われます。
ところが、日本ではニルギリのCTCを見かける機会があまり多くありません。まったく流通していないわけではないものの、紅茶専門店でニルギリを探すと、たいていOPやBOPなどオーソドックス製法の茶葉が出てきます。おそらくこれはCTCの茶葉の大半が国内で消費されているためと思われます。インドは煮出しミルクティー*3が主流なので、ミルクティー向きの茶葉の需要が大きいのです。この点はアッサムやドアーズなど、インドの他の産地にも当てはまります。
茶葉の特徴
日本でニルギリのCTCの茶葉があまり手に入らないことを踏まえ、ここからはオーソドックス製法の茶葉を前提に説明していきます。
先ほど述べたとおり、ニルギリはスリランカの近く*4に位置しており、そのうえディンブラやヌワラエリヤとは「茶園の標高が高い」「山の西側の斜面に位置する」という点も共通しています。そのため、ニルギリのオーソドックス製法の茶葉はディンブラやヌワラエリヤと似た特徴があり、華やかな香りと爽やかな渋みを持っています。特にディンブラとはよく似ており、茶園やブレンドによっては区別がほとんどつかなくなる場合もあるほどです。また、クオリティシーズンも1~2月とディンブラやヌワラエリヤと同じような時期にやって来ます。
とはいえ、ニルギリの特徴は何から何までディンブラと同じというわけではありません。たとえば、水色はディンブラよりも淡く、明るいオレンジ色になる場合が多いです。また、味や香りも軽やかで、渋みやコクはやや控えめになる傾向があります。
そのため、ニルギリは基本的にミルクなしで飲むほうがよいと考えておくとよいでしょう。ストレートで飲むのはもちろん、レモンティーにするのもおすすめです。クセのない味わいと爽やかな香りを持つニルギリは、レモンを始めとする柑橘類との相性が抜群。何しろルピシアが毎年ニルギリの新茶を出す際、レモン入りの蜂蜜やシロップなどの商品と一緒に売り出すほどなので、相性は折り紙付きと言えます。
また、近年は夏になるとフルーツを漬けたアイスティーが流行っているようですが、そのベースとしてニルギリを使うのもおすすめです。
相性の良い食べ物
ニルギリはディンブラと同じく組み合わせの相手を選ばない紅茶ですが、レモンティーやフルーツティーにすると美味しいということは、当然レモンを始めとするフルーツとよく合います。以前このシリーズで取り上げたダージリンオータムナルもフルーツとの相性の良い紅茶ですが、ニルギリはそれ以上に生のフルーツとのペアリングに適していると言えそうです。また、フルーツタルトやイチゴのショートケーキなどフルーツを使ったお菓子ともよく合います。
これからどんどんフルーツの美味しい季節になっていくので、ニルギリと一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか?
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