(最終更新:2021年11月8日)
今日4月21日は英国のNational Tea Day(紅茶の日)。そこで今回は英国にまつわるテーマを取り上げようと思っていたのですが、コロナ禍で現地どころか国内でも出かけるのが難しいため、具体的に何の話題にしようか決めかねていました。
そんな風に考えあぐねていたところ、たまたまTwitterの相互フォロワーの方から、フォートナム・アンド・メイソン(Fortnum & Mason)のブレンドティーを分けていただきました。
フォートナム・アンド・メイソンといえば、英国を代表する高級紅茶ブランドのひとつです。これぞ渡りに船ということで、今回はフォートナム・アンド・メイソン(以下、「F&M」)のブレンドティーの飲み比べをしていきます。
- そもそもフォートナム・アンド・メイソンとは?
- アフタヌーンブレンド(Afternoon Blend)
- ブレックファストブレンド(Breakfast Blend)
- アールグレイクラシック(Earl Grey Classic)
- フォートメイソン(Fortmason)
- アイリッシュブレックファスト(Irish Breakfast)
- ジュビリーブレンド(Jubilee Blend)
- クイーンアン(Queen Anne)
- ロイヤルブレンド(Royal Blend)
- ウェディングブレックファスト(Wedding Breakfast)
- 最後に
【本編に入る前の補足】
- F&M本国の公式サイトによると、今回飲み比べた茶葉はいずれも「Fortnum's Famous Teas」というカテゴリに分類され、F&Mオリジナルのブレンドティーとして扱われています。F&Mにはそれ以外にも「Black Tea With Fruit(フルーツの香りのフレーバードティー)」「Single Origin Teas(産地別のお茶)」「Botanical Infusions(ハーブ系のブレンドティー)」など、さまざまなカテゴリのお茶があります。
- また、Fortnum's Famous Teasの中にも今回取り上げられなかった商品があります。そちらは手に入り次第、飲んだ感想をこちらの記事に追加していきます。
- この記事ではティーバッグの商品を使っていますが、同じ商品でもティーバッグとリーフティーではブレンドに違いがあるようです。そのため、リーフティーの場合は味や香りが変わる可能性がある点をご理解ください。
さて、まずは飲み比べに入る前に、そもそもF&Mとはどのようなお店なのか、簡単に確認しておきましょう。「そういう説明はいいから」という方は、こちらのリンクから飲み比べに進んでください。
そもそもフォートナム・アンド・メイソンとは?
冒頭で「英国を代表する高級紅茶ブランド」と言っておきながら何ですが、F&Mは紅茶だけのブランドというわけではなく、食品を中心とした高級百貨店と呼ぶほうが適切でしょう。
F&Mの創業は1707年。アン女王のフットマン(下級召使い)だったウィリアム・フォートナム(William Fortnum)がヒュー・メイソン(Hugh Mason)と共にロンドンのピカデリーで店を開いたのが始まりです。それ以来、王侯貴族ご用達の食料雑貨店として300年以上にわたって営業を続けつつ、日本を含めた世界各国で店舗網を拡大してきました。
日本語版の公式サイトに掲載されている社史によると、世界で初めてスコッチエッグを考案したのはF&Mだそうです*1。また、ケチャップで有名な米国のハインツ社から1886年にベイクドビーンズの缶詰を買い取り、英国で初めて販売したのもF&Mと言われています。
そのほかにも、F&Mの歴史については以下のサイトに読みやすくまとめられているので、興味のある方は目を通してみてください。
そんな歴史あるF&Mですが、日本では三越や大丸などの百貨店を中心に店舗を展開しています。といっても、英国F&Mの直営ではなく、バウムクーヘンでお馴染みのユーハイムが代理店として商品の販売やティールームの営業を行っています。日本橋三越のコンセプトショップにはベーカリーが併設されているのですが、パンやスコーンが美味しいのはユーハイムだからなんですね。
F&Mの説明はここまでにして、いよいよ飲み比べを始めましょう。ちなみに順番は商品名のABC順になっています。
アフタヌーンブレンド(Afternoon Blend)
スリランカのハイグロウンとローグロウンのブレンドとのことですが、スリランカ特有の強い渋みはなく、むしろコクや苦味が強めです。香りも穏やかで、ストレートでもわりと飲みやすいのですが、ミルクを加えるとほろ苦いカフェオレのような味になります。昼下りに飲むと、その苦味が眠気を吹き飛ばしてくれそうです。
ブレックファストブレンド(Breakfast Blend)
酒樽を思わせるモルティな香りと、キャラメルのような甘く香ばしい味わいがあります。渋みは口に含んで少し経ってから、じわじわと舌先に広がってきます。いかにも典型的なアッサムの味なので、当然ながらミルクティーにもよく合います。
アールグレイクラシック(Earl Grey Classic)
今回飲み比べた中では茶葉が比較的大きめなのもあってか、味は全体的にマイルドです。香りは他のアールグレイにありがちなスパイシーさより、ベルガモットの甘酸っぱい香りのほうが目立ちます。僕はアールグレイ全般が得意ではないのですが、これはわりと飲みやすく感じました。
ただ、一般的なアールグレイはミルクを入れても美味しい場合がありますが、F&Mはミルクを加えると人工香料のきつさが強調されてしまうので、ストレートのままのほうが美味しい気がします。
フォートメイソン(Fortmason)
味自体は渋みが少なく、ストレートでも飲みやすいのですが、香りはかなり個性的です。サイトでは「繊細なオレンジの花の芳香を加え、ほのかなフローラルなフレーバーに仕上げ」たと説明されているものの、オレンジそのものの香りというより、お香のような匂いがします。ある意味アールグレイ以上に好みが分かれそうなフレーバーです。
アイリッシュブレックファスト(Irish Breakfast)
上の「ブレックファストブレンド」の渋みとコクが強くなったような味と、花束のようなフレッシュな香りがあります。アッサムとケニアのブレンドとのことで、この2つの特徴がダイレクトに現れているようです。ストレートで飲むと舌が痺れるほど渋みが強いので、F&Mの中では最もミルクティー向きと思われます。
ジュビリーブレンド(Jubilee Blend)
エリザベス女王の即位60周年*2を記念して作られたブレンドで、茶葉の産地はスリランカとインド、そして中国とのこと。渋みが少なく、まろやかな甘みがあるので、この「インド」はダージリンのことではないかと思われます。ミルクを加えると華やかな香りが現れるものの、マイルドすぎてミルクティーにするには味が薄い気がします。
クイーンアン(Queen Anne)
F&M創業時に即位していたアン女王にちなんで名付けられた、アッサムとスリランカのブレンドです。華やかな香りとは裏腹に、甘みが少なく苦味と渋みがやや強い味です。ストレートでも飲めますが、ミルクを足すといかにも定番のミルクティーの味になります。
ロイヤルブレンド(Royal Blend)
F&Mの紅茶の中でもおそらく最も有名な商品です。「クイーンアン」と同じくアッサムとスリランカのブレンドで、上品な香りがあるのも「クイーンアン」に似ていますが、味は甘みが際立ちます。舌の側面に渋みを感じるものの、他の商品に比べればまろやかな味わいなので、香りをミルクで邪魔しないようストレートで飲むのがよいかと思います。
ウェディングブレックファスト(Wedding Breakfast)
ウィリアム王子とキャサリン妃の結婚を記念して作られた、アッサムとケニアのブレンドです。アッサムもケニアもコクの強い茶葉が多い傾向にありますが、この「ウェディングブレックファスト」は香りの良い茶葉を選んでブレンドしているようで、ブーケのような香りとマイルドな味わいが特徴です。「ブレックファスト」の名前が付いている他の商品とは異なり、ミルクティーよりストレートで飲むほうがおすすめかもしれません。
最後に
というわけで、F&Mのブレンドティー9種類を飲み比べてみました。味や香りにそれぞれの個性はあるものの、概ねどのブレンドも飲みやすく、毎日飲んでも飽きない仕上がりになっているように感じました。
「そうは言っても、そんな高級ブランドの紅茶を毎日飲むなんて……」と思われるかもしれませんが、よくよく値段を見てみると、実はそこまで「高級」というわけでもないのです。
たとえば、F&Mの日本版サイトでは、「ロイヤルブレンド」のティーバッグが1,296円で販売されています。この額面だけではやや高めに感じられますが、実は1箱あたりティーバッグが25個入っているので、単純計算で10個あたり518.4円ということになります。
一方、日本の主なブランドを見てみると、
・ルピシアの「ベルエポック」:ティーバッグ10個入りで720円
・カレルチャペックの「エブリデイ ディンブラ」ほか:ティーバッグ5個入りで594円(10個あたりでは1,188円)
・神戸紅茶の「THE COTTON」:ティーバッグ20個入り864円(10個あたりでは432円)
というように、単価で言えばF&Mは日本のブランドと比較しても値段が大して変わらない(場合によってはむしろ安い)のです。もちろん日東紅茶の「デイリークラブ」やリプトンの「イエローラベル」のようなスーパーで手軽に買える商品ほど安くはありませんが、紅茶専門店の商品と同じくらいの価格で、紅茶の本場である英国のブランドが飲めるなら、一度試してみる価値があるのではないでしょうか? もしかしたら、日本のブランドにはない好みの紅茶が見つかるかもしれません。