ただの紅茶好きが紅茶について色々語ったり勉強したりするブログ

ただの紅茶好きが、紅茶について知っていることをお話ししたり、紅茶の本やレッスンで勉強したりするブログです。

ダージリンファーストフラッシュとは? 産地別紅茶の研究(5)

(最終更新:2023年11月18日)

今年も日本の紅茶ファンが待ちに待ったダージリンファーストフラッシュのシーズンがやって来ました。今回はそんなダージリンファーストフラッシュの特徴や魅力、おすすめの飲み方や相性の良い食べ物について見ていきます。

 

そもそもダージリンとは?

注:この節は以前投稿したダージリンオータムナルの記事とまったく同じです。すでにお読みいただいている方は、こちらのリンクから次の節に移動できます。

 

ダージリンはインドの北東部、ヒマラヤ山脈の高峰カンチェンジュンガの麓に位置し、ネパールとの国境付近にある産地です。標高が高く気候が冷涼なため、植民地時代から避暑地として知られており、寒さに強い品種である中国種のほか、クローナル種*1が主に栽培されています。なお、日本では紅茶の産地の中でも特に有名ですが、山岳地帯にあって畑を新しく広げることが難しいせいで、生産量はインド全体の1~2%ほどしかありません

ダージリンのクオリティシーズンは、3~4月頃のファーストフラッシュ(春摘み)、5~6月頃のセカンドフラッシュ(夏摘み)、そして10~11月頃のオータムナル(秋摘み)年に3回あります。なお、セカンドフラッシュオータムナルの間には雨季があり、クオリティシーズンと比べて茶葉の質は悪くなります*2が、時期が長く茶葉の生育が速いので、生産量も多くなります。そのため、「ダージリン」という名前で流通している安価なブレンドは、この雨季の茶葉の比率が大きいそうです。 

ファーストフラッシュの特徴

基本的にダージリンは「香りの良さ」と「爽やかながらしっかりした渋み」を特徴とする茶葉ですが、その中でも春に茶摘みの時期を迎えるファーストフラッシュは、水色(すいしょく)、香り、そして味から新茶特有の若々しさ感じることができます。

もう少し具体的に説明しましょう。まず水色については、以前取り上げたヌワラエリヤと同じように酸化発酵が抑えられている茶葉が多いため、典型的な紅茶の色とは異なり美しい山吹色になります。また、香りは茶園によって蘭や百合、バラなどに喩えられる優雅な香りになることもあれば、ぶどうやリンゴなどを思わせる瑞々しい香りになることもあります。さらに味については、香りの華やかさや甘さの余韻を残しつつ、熱湯で淹れた緑茶のような渋みや青みも強く感じられます。

ダージリンファーストフラッシュ_プッタボン

2021年のプッタボン(ピュッタボン)茶園のEX-2。銀座のリーフルダージリンハウスで購入しました。

以上のように、緑茶に通じる特徴を持つダージリンファーストフラッシュは、やはり緑茶と同じようにミルクを加えずストレートで飲むのがおすすめです。また、紅茶を淹れる際は基本的に沸かしたてのお湯を使うのがセオリーですが、ダージリンファーストフラッシュの場合、お湯の温度が高すぎると新芽の部分からエグみが出てきてしまうので、一度沸騰させた後に少し冷ましたお湯を使うとよいでしょう。ただし、お湯の温度が低すぎると、香りの成分が十分に抽出されなくなってしまうため、90℃くらいがベストだと思います。温度の調整が難しいときは、熱湯を使いつつ、茶器の予熱を省略すると、お湯の温度が自然と85~90℃くらいになります。

さらに、OPやFOPなど大きめの茶葉を使う際は、抽出時間を長めにすると、茶葉の味わいをしっかり引き出すことができます。上の写真のプッタボンも、6~7分かけて抽出しています。

  

相性の良い食べ物は?

緑茶やヌワラエリヤと風味が似つつ、よりいっそう繊細な味わいのダージリンファーストフラッシュは、やはり和菓子との相性が抜群です。ダージリンファーストフラッシュを飲む際は、「紅茶だからケーキやビスケットがよいかな」といった思い込みを捨てて、ぜひ和菓子を合わせていただきたいと思います。

とはいえ、一口に和菓子と言っても、いろいろな種類がありますよね。そこで、ダージリンファーストフラッシュに合うのは具体的にどんな和菓子なのか、いろいろ食べ比べて検証してみることにしました。

 

ダージリンファーストフラッシュに合う和菓子選手権

ダージリンファーストフラッシュに合う和菓子選手権

ラインナップは以下の7点です。併記のないものは、近所のスーパーで調達しました。

以上の7個とダージリンファーストフラッシュの相性を「おすすめ」「まあまあ」「ちょっと微妙」の3段階で評価した結果、次のようになりました。

 

おすすめの和菓子

筆頭はやはり羊羹です。予想どおりすぎてちょっとつまらないのですが(笑)、風味の似ているヌワラエリヤも小豆を使った和菓子との相性が良いので、ダージリンファーストフラッシュに合うのも当然と言えるでしょう。

また、甘納豆ダージリンファーストフラッシュと一緒に食べるのにおすすめです。ダージリンの渋みが甘納豆の豆くささを和らげてくれるので食べやすくなります。個人的には羊羹より甘納豆と合わせるほうが好きかもしれません。

 

まあまあな和菓子

羊羹や甘納豆ほどではないにせよ、相性が良いと感じたのは饅頭和三盆(干菓子)です。饅頭に関しては、ひよ子の黄身餡の優しい甘さと紅茶の渋みのバランスが思いのほか良く取れていました。また、和三盆は何しろ砂糖なので紅茶と合わないはずがありません。ただ、それなら普通の砂糖でもよいわけで、わざわざ和三盆にする必然性もないように感じて「まあまあ」の評価としました。

 

ちょっと微妙な和菓子

最後に、ダージリンファーストフラッシュと組み合わせるにはちょっと微妙に感じたのは、かりんとうカステラ、そしてみたらし団子です。かりんとうは揚げ油と黒糖、カステラは卵、みたらし団子は醤油の味が強く、ダージリンファーストフラッシュの風味を殺してしまっていました。

この3つに限らず、繊細な風味のダージリンファーストフラッシュは、味が濃いものや脂っぽいものと組み合わせるには向いていないように思います。

 

というわけで、ダージリンファーストフラッシュのおすすめの飲み方やフードペアリングについて見てきました。今年は例年より梅雨入りが早いようなので、梅雨のジメジメした気候で憂鬱になった気分を、華やかな香りのダージリンファーストフラッシュで吹き飛ばしてはいかがでしょうか?

*1:ダージリンクローナル種について、ルピシアのサイトでは、「中国種とアッサム種、これらを交配させた交雑種(ハイブリッド)の中から、特に品質や耐病性、収量などにすぐれた茶樹を選抜し母樹にしたもの」と説明されています。

*2:乾季で雨量が減ると、茶葉の生育が遅くなり、養分がじっくり溜め込まれるので、基本的に雨季より乾季のほうが味や香りが良くなります。