もはや半ば以上自己満足で続けているこのシリーズも、10回目が目前に迫ってきました。今回は前回のダージリンと同じく、今年の夏摘みの茶葉が出回り始めたアッサムを取り上げます。
産地の特徴
アッサムはその名のとおり、インド北東部のアッサム州に広がる産地です。同じ北東部にあるダージリンがヒマラヤ山脈の麓にあるのに対し、アッサムはブラマプトラ川沿岸の広大な平野部に位置しています。このアッサム平原は、夏になると強い日差しが茶園を照りつける*1一方、雨季を迎えるので雨も多くなります*2。この太陽光の強さと雨量の多さが組み合わさることで、後で説明するような力強い味わいの茶葉が生み出されます。
クオリティシーズンについては、ダージリンと同じくファーストフラッシュ(春摘み)、セカンドフラッシュ(夏摘み)、 オータムナル(秋摘み)と年に3回ありますが、特に茶葉の質が高くなるのは6~7月頃のセカンドフラッシュと言われています。そのせいか、日本の紅茶専門店では8~10月くらいの時期になると、アッサムのセカンドフラッシュが一気に出回り始めます。
なお、アッサムではインド全体の生産量のおよそ半分にあたる紅茶が生産されています。インドの紅茶生産量は全世界の約半分に相当すると言われているので、単純に計算すれば、世界に存在する紅茶のうち約1/4がアッサム産ということになります。
紅茶の歴史とアッサムの関係
そんなアッサム地方は、実は紅茶の歴史においても重要な役割を果たしています。
19世紀初頭、英国は紅茶の供給を中国からの輸入に依存していました。しかし、英国海軍の少佐だったスコットランド人のロバート・ブルース(Robert Bruce)が1823年にアッサム種の茶樹を発見し、その後ロバートの弟のチャールズ・アレクサンダー・ブルース(Charles Alexander Bruce)が生育に成功したことをきっかけに、1839年にアッサム地方で紅茶の栽培が始まりました。そして、これを契機として、インドやスリランカなどで紅茶のプランテーションが次々と整備され、19世紀の後半になると、英国の紅茶輸入量の大半をインド産やスリランカ産の茶葉が占めるようになりました。
このように、アッサムは英国の紅茶文化が大きく転換するきっかけとなった重要な土地でもあるのです。
茶葉の特徴
一般的にアッサムはコクが強くミルクティー向きであると言われています。確かにそれ自体は間違っていませんが、実際にミルクを加える前に注意していただきたいことがあります。それは茶葉の製法です。
たとえば、アッサムの生産量の約9割を占めるCTCの茶葉の場合、オーソドックス製法と比べてコクと渋みが強く、パンチのある味わいになる傾向が見られます。そのため、CTCの茶葉に関しては、基本的にミルクティー向きと考えて間違いありません。一方、オーソドックス製法の茶葉の場合、特に等級が大きくなると、「モルティ・フレーバー」と呼ばれる麦芽のような香りやスモーキーな香り、蜂蜜のような香りなど、香りの芳醇さが際立つようになります。その反面、味がややマイルドになることがあるので、必ずしもミルクティー向きとは限りません。
このように茶葉の製法によって味や香りの特徴が大きく変わる可能性がある*3ので、「アッサムだからミルクを足しちゃっていいよね」と短絡的に考えず、それぞれの茶葉の特徴をきちんと見極めることをおすすめします。以下の記事では、セカンドフラッシュのアッサムの飲み比べをしており、茶葉ごとに特徴が大きく違ってくることがおわかりいただけると思います。
teaisbalmforthesoul.hatenablog.com
アッサムに合う食べ物は?
アッサムの強いコクに負けず、香りの良さを邪魔しないものということで、クッキーやビスケット、マドレーヌやフィナンシェなどの焼き菓子がまず挙げられます。また、ミルクティー向きと言われるアッサムをあえてストレートで飲みつつ、クリーム系のお菓子やミルクチョコレートを食べるのもおすすめです。
焼き菓子や乳製品との相性がよいことを踏まえると、アッサムはクリームティーにぴったりの紅茶と言えるでしょう。クロテッドクリームをたっぷり塗ったスコーンとの組み合わせは最高です。