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トワイニングのティーバッグ紅茶全種レビュー

今日4月21日は英国のNational Tea Day(紅茶の日)です。昨年はフォートナム・アンド・メイソンのブレンドティーを飲み比べましたが、今年は同じ英国のブランドであるトワイニングの商品のうち、ティーバッグの紅茶を全種類飲んでレビューしたいと思います。

トワイニング全種レビュー

【本編に入る前の補足】

日本で販売されているトワイニングの紅茶は、主にティーバッグのタイプとリーフティーのタイプがありますが、今回飲み比べるのはティーバッグの商品のみです。リーフティーの商品とは茶葉の産地やブレンドの仕方が異なる可能性があり、その場合は風味が変わってくるのでご注意ください。

 

さて、飲み比べに入る前に、まずはトワイニングがそもそもどんなブランドなのか、簡単に確認しておきましょう。特に興味のない方やレビューを早く読みたい方は、こちらのリンクから進んでください。

 

そもそもトワイニングとは?

トワイニング社の起源は、1706年に創設者のトーマス・トワイニングが開いた「Tom's Coffee House」というコーヒーハウスにまで遡ります。コーヒーハウスとは、17~18世紀の英国で流行した喫茶店*1で、政治家や商人、上流階級の人たちの社交場としても機能していたそうです。その名のとおり、コーヒーハウスでは主にコーヒーが提供されていましたが、Tom's Coffee Houseではお茶*2も提供し、人気を博しました。

その翌年の1707年、トーマスはTom's Coffee Houseの隣に「Golden Lyon(ゴールデンライオン)*3」というお茶の専門店を開きます。コーヒーハウスは男性だけの社交の場だったのに対し、Golden Lyonは女性の入店も認めたため、一躍人気店になったそうです。なお、このお茶の専門店は、300年以上が経った現在もロンドンのストランド通りで営業を続けています

そして、その後もトワイニング社は事業を拡大させ、1837年にはヴィクトリア女王から王室御用達の称号を授与されました。現在、トワイニング社はAssociated British Foodsという多国籍企業グループの傘下にありますが、トワイニング家10代目当主のスティーブン・トワイニング(Stephen Twining)氏は国際マーケティングチームの取締役広報部長兼マスターブレンダーを務めているそうです。創設者トーマスの魂は今でも連綿と受け継がれているんですね。

ちなみに、日本では片岡物産が1965年から総代理店としてトワイニングの商品を販売しています。日本市場で展開されている商品は、本国である英国と共通しているものもある一方、日本向けに独自に開発されているものや、本国と名前が同じでもブレンドが異なるものもあるそうです。

 

ティーバッグ紅茶のレビュー

ではいよいよ実際に飲んでいきましょう。なお、順番は公式サイトの掲載順と同じです。また、今回はテイスティングのために抽出時間を3分に揃えましたが、パッケージに書かれているおすすめの抽出時間は商品ごとに異なります。

 

アール グレイ

トワイニングのアールグレイ

アールグレイってどんな風味なんだろう?」と思っている人に飲んでほしい、いかにも正統派アールグレイです。ベルガモットの香料が香り、味は渋みが少なくマイルド。水色(すいしょく)は薄い褐色で、少し暗めな気がします。

なお、同じアールグレイでも、他のブランドにはミルクティー向きの商品もありますが、トワイニングの「アール グレイ」はコクが弱いので、牛乳を加えると紅茶の味が負けてしまうのではないかと思われます。そのためストレートで飲むのがおすすめです。この点はトワイニングの他のアールグレイにも当てはまります。

 

レディ グレイ

トワイニングのレディグレイ

「アール グレイ」をベースに、オレンジピールやレモンピールを加えたトワイニングオリジナルのブレンドティーです。Wikipediaによると、英語の「Lady Grey」はトワイニング社の商標として登録されているとのこと。
普通の「アール グレイ」がベルガモットの香りなのに対して、こちらはレモンやオレンジの香りが強く、爽やかな印象があります。口に含んでもレモンの香りが残り、「アール グレイ」ほどのクセがないので飲みやすく感じられます。アイスティーにしてもよさそうです。

 

カフェインレス アール グレイ

トワイニングのカフェインレスアールグレイ

カフェインが除去されているので、普通の「アール グレイ」より苦みや渋みが少ない分、香料のスパイシーさが強く感じられます。ベルガモットの香りが好きな人は美味しく飲めると思いますが、紅茶の味自体はいっそうマイルドになっているので、飲みごたえのある味を求める人にとっては物足りないかもしれません。

 

ジャスミン アール グレイ

トワイニングのジャスミンアールグレイ

他のアールグレイ系の商品よりも水色がほんの少し明るいかもしれません。香りはジャスミンの主張が強く、僕には人工的でわざとらしく感じられました。味はベルガモットのスパイシーさが強めです。

 

オレンジ アール グレイ

トワイニングのオレンジアールグレイ

濃縮還元のオレンジジュースのような風味がします。僕は嫌いではありませんが、元々のアールグレイの香りがオレンジに負けている気がするので、そもそもアールグレイをベースにする意味はあるのか?と思ってしまいます。

 

ピーチ アール グレイ

トワイニングのピーチアールグレイ

甘酸っぱい強烈な香りがします。桃の印象もありますが、僕はなぜか森永製菓の「ハイチュウ」を思い出しました。口に含むと桃の主張が幾分和らぐものの、やはりアールグレイ本来の風味は控えめです。

 

ダージリン

トワイニングのダージリン

水色は薄い褐色で、柿や洋梨のような果実系の香りがします。口に含むと、舌の裏や周りの部分で感じる渋みと、ダージリンならではの甘みがあります。セカンドフラッシュのマスカテルフレーバーっぽくはありますが、クオリティシーズン以外の茶葉も混ざっている気がします。

普通はダージリンを飲むときにミルクティーにはしませんが、試しに牛乳を加えてみると、烏龍茶のような香ばしさが際立ちました。以前別の記事で飲んだ台湾の「三點一刻(さんてんいっこく)」というミルクティーバッグに近い味かもしれません。

teaisbalmforthesoul.hatenablog.com

 

セイロン オレンジ ペコ

トワイニングのセイロンオレンジペコ

水色は明るめのオレンジ色。草原のような香り強い渋みがある一方、コクはやや控えめです。いかにも典型的なスリランカのハイグロウン(特にディンブラ)のような風味がします。ミルクティーにするとキレがあり、さっぱりした味わいになりますが、多少水っぽく感じられるかもしれません。個人的にはストレートで飲むか、レモンティーにしたい味です。

 

イングリッシュ ブレックファスト

トワイニングのイングリッシュブレックファスト

以前別の記事でも取り上げましたが、今回改めて飲んでみました。

水色は濃いめの赤褐色。前回は1分半しか抽出しなかったので、マイルドすぎる印象でしたが、今回は3分しっかり抽出したおかげで渋みとコクのバランスがよく、キレのある味わいになりました。「セイロン オレンジ ペコ」とは方向性が少し異なるものの、これもスリランカの特徴が強く表れているブレンドです。

牛乳を足すと渋みが取れてまろやかになりつつ、コクはしっかり残るので、バランスのよいミルクティーになります。スリランカ産の茶葉でミルクティーにしたければ、「セイロン オレンジ ペコ」よりこちらのほうがおすすめです。

 

ハウス ブレンド

トワイニングのハウスブレンド

これも以前別の記事で飲み比べましたが、そのときは2分抽出で、今回より短めでした。

水色は「イングリッシュ ブレックファスト」に似た赤褐色で、ケニア産の茶葉がブレンドされているせいか、赤みが強く出ています。香りもケニアの特徴が際立っており、花のような甘い香りがします。口に含むと、最初に強い渋みがあり、後からコクが口の中に広がります。ミルクティーにすると、アーモンドミルクのようなナッツっぽさを感じます。

 

ゴールデン アッサム

トワイニングのゴールデンアッサム

水色は暗く濃い褐色。今回飲み比べた中ではいちばん濃い色になりました。モルティーな香りと舌全体にまとわりつくどっしりとしたコクがあり、いかにもアッサムらしい飲みごたえのあるブレンドです。ミルクを入れても強いコクと苦みが残るので、紅茶の味がしっかりしているミルクティーを飲みたいときにおすすめです。

 

プリンス オブ ウェールズ

トワイニングのプリンスオブウェールズ

水色はやや淡く、ダージリンの透明度を下げたような色をしています。商品紹介には「スモーキーで優雅なブレンド」とありますが、そこまでスモーキーな香りはなく、むしろウッディーな香りの印象が強めです。味はキームンらしい旨みがありつつ、渋みのないマイルドな味わいです。ミルクティーにすると、一転して華やかな花の香りが強くなります。

 

まとめ

というわけで、トワイニングティーバッグ商品をすべてレビューしてみました。どの商品も個性豊かで、典型的な紅茶の香りや味が幅広くカバーされているので、紅茶ビギナーの方がいろいろ試してみるのにぴったりのブランドだと思います。しかもスーパーやコンビニで手軽に手に入るので、なおさら便利ですね。この記事で気になる商品が見つかったら、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか?

*1:一時はロンドンだけで3,000店舗もあったと言われています。

*2:当時はインドやスリランカなどの植民地で茶樹の栽培が始まる前であり、お茶はもっぱら中国から輸入されていました。特に人気を集めていたのは武夷岩茶で、「Bohea tea(ボヘアティー)」と呼ばれていたそうです。

*3:スペルがLionではなくLyonなのは、英国トワイニングの公式サイトで確認済みです。念のため。