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ティーバッグ、先に入れるか? 後から入れるか?

(最終更新:2023年5月13日)

「毎日の生活に紅茶を」と言っても、ハードルの高さを感じてしまう人が多いようですが、その原因のひとつは「ティーバッグで淹れた紅茶はおいしくない」「ティーバッグで淹れても『本当の』紅茶の味はしない」という思い込みにあるように思います。中には「紅茶の本場イギリスでは、ティーバッグで淹れる人なんて誰もいない」などと勘違いしている人もいるとかいないとか。

ちょっと調べればすぐにわかることですが、英国で消費されている紅茶のほとんどは、リーフ(茶葉)ではなくティーバッグで淹れられています。英国の新聞「The Guardian」に掲載された以下の記事によると、英国で飲まれている紅茶の96%がティーバッグだそうです。

www.theguardian.com

もちろんポットのリーフティーを飲むこともないわけではありません。とはいえ、日常的には「マグカップにティーバッグを放り込み、お湯を注いで、ミルク(と砂糖)をたっぷり入れて飲む」というほうが当たり前なのです。

たとえティーバッグであろうと、ポイントさえ押さえていれば十分に美味しい紅茶を楽しめます。むしろ上で説明した淹れ方を踏まえると、ティーバッグで淹れるほうが「英国流」とさえ言えるかもしれません。

しかし、ティーバッグで紅茶を淹れようとして、誰もが一度は迷うことがあります。それは「ティーバッグをカップに入れるのは、お湯の前か、それとも後か」という問題です。

紅茶メーカーやブランドのウェブサイトを見てみると、ほとんどが「お湯→ティーバッグ」の順を推奨しています。

 

ティーバッグ|紅茶のおいしいいれ方|日東紅茶

ストレートティー(ホット)のいれ方 | 紅茶の専門家リプトン(Lipton)

Uf-fu | おいしいティーバッグの入れ方

おいしい紅茶のいれ方 | AHMAD TEA

紅茶のいれ方 | トワイニング紅茶 TWININGS TEA TIME

※このトワイニングのページは、カップではなくポットで淹れる場合を想定しているようです。そのわりに画像はカップですが……。

 

だったらお湯を先に注ぐほうが正解なのね……と思いたくなるかもしれませんが、僕はどうしても納得がいきません。お湯を先に注ぐと、次のようなデメリットがあるのではないかと思うのです。

 

1. お湯の温度が下がって、成分がうまく抽出されなくなるんじゃないの?

基本的に紅茶は沸かしたての熱湯で淹れるのがベストです*1カップティーバッグを先に入れておけば、沸騰直後のお湯をすぐにカップに注ぐことができます。しかし、ティーバッグを後から入れてしまうと、ティーバッグを投入するまでにお湯の温度が下がってしまううえ、ティーバッグを投入すること自体もお湯の温度が下がる原因になります。

 

2. 後からお湯を入れたほうが茶葉がジャンピングするんじゃないの?

Tea Magazineという紅茶メディアのブログでは、ティーバッグで淹れるときの手順として、あらかじめティーバッグを広げておくことを推奨しています。 

美味しい紅茶が出来るためにはジャンピングという茶葉の動きが大切です。

ぺちゃんこになっているティーバッグでは茶葉が素早くジャンピングが出来ないので、形を整えておきます。

そもそも「美味しい紅茶が出来るためにはジャンピングという茶葉の動きが大切」と断言できるのかについても疑問の余地があるところですが、とりあえずいったん置いておくとして。ジャンピングについてこのように説明している一方で、ティーバッグとお湯のどちらを先に入れるかについては次のような説明しています。 

お湯を入れたカップティーバッグをそっと入れましょう。

ティーバッグより先にお湯を入れるのは
ティーバッグが風船のように膨らんで浮いてしまわないためです。

……ティーバッグが膨らんだほうが、茶葉の動ける範囲が広がって、ジャンピングしやすくなるんじゃないですか? 僕にはどうにも矛盾しているように思えるのですが、そんなことはないのでしょうか……。

 

3. というか、ティーバッグが沈みませんよね?

先ほども紹介したリプトンのページでは、次のように説明されています。 

ティーバッグが空気で浮かび上がらないように、カップの縁からすべらせるように静かに入れます。

いやいやいや、無理だって、後から入れたほうが絶対浮かぶって。ドリンクバーとかで何度も試したことあるけど全然沈んでいかないじゃん。

 

……というようなモヤモヤを抱えていたところ、「ティーバッグ→お湯」の順番を推奨しているところがいくつも見つかりました。

その中のひとつは、大阪の紅茶専門店ロンドンティールームです。同店のサイト内の「ティーバッグの正しい淹れ方」という記事では、こんな説明がされています。 

■「お湯をカップに入れてから、ティーバッグを入れる」はNG■

初めにカップにお湯を入れておき、そこへティーバッグを投入してはいけません。なぜなら、ティーバッグを入れるまでの間に、お湯の温度がどんどん冷めてしまうからです。紅茶は高温(95℃以上)でなければ、成分が充分に抽出されず、おいしくなりません。

まさに我が意を得たり、でした。ちなみにこの記事では、カップティーバッグの紅茶を淹れるためのポイントとして、「ティーカップではなくマグカップを使うこと、使用するティーバッグの内容量に注意を払うこと」の2点が挙げられています。

 

続いて2つ目は、神戸紅茶ティーバッグ商品の紹介ページ(リンク先はロイヤルブレンドのページ)です。ここには「美味しい紅茶の淹れ方」という欄があるのですが、そこには次のように書いてあります。 

ティーポットまたはガラスサーバー、ティーカップに湯通しして温めます。酸素を含んだ汲みたての新鮮な水を充分に沸騰させて、一人分でティーバッグ1個をティーポットまたはガラスサーバーに入れてカップ1杯分約150ミリリットルのお湯を注いで2分間蒸らします。蒸らし終えたら、ティーバッグを軽く2~3回振って取り出してください。

この順番を素直に守れば「ティーバッグ→お湯」の順番になりますよね。ティーバッグで紅茶を淹れる順番としては、どう考えてもこちらのほうが自然だと思います。

 

日本のサイトだけでは説得力がないので、最後に英国のアーマッドティー(Ahmad Tea)というブランドの動画を紹介しましょう。この動画はアーマッドティー本国のティーテイスターがティーバッグで紅茶を淹れる方法を説明したものですが、0:14付近の部分を観ると、最初にティーバッグを開封し、空のティーカップに入れているのがわかります。その際、「茶葉がよく抽出されるよう、先にカップを温める人もいる*2」という補足はあるものの、ティーバッグをカップに入れるタイミングについては何の言及もありません。

www.youtube.com

それにしても、上に挙げたアーマッドティーの日本語サイトではお湯を先に注ぐよう勧めていますが、本国の説明と一致していなくても大丈夫なのでしょうか……。

 

というわけで、日本の紅茶業界の通説に負けず、今後も僕は「ティーバッグ→お湯」の順で淹れようと思います。でももし「いややっぱりお湯が先でしょ」という方がいたら、コメントでご意見をお聞かせください。

ティーバッグで紅茶を淹れる

 

*1:ただし、香りや味の違いを楽しむために、お湯の温度を意図的に下げる場合、またはダージリンのファーストフラッシュのように熱湯から少し冷ました温度が最適な茶葉の場合などは除きます。

*2:原文は、Some people would actually also like to warm this cup first so that it will help the tea brew. と話していると思います。