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スリランカの紅茶に見る、紅茶の風味と香りの違い

(最終更新:2021年11月17日)

今回は、 前回の記事で触れられなかったスリランカの紅茶(いわゆるセイロンティー)について、主な産地と特徴を説明していきます。

 

一口にスリランカの紅茶と言っても、産地によって味も香りが大きく異なりますが、このバリエーションを生む要因となっているのがスリランカの地形です。スリランカは約6万6千平方キロメートルという狭小な面積(ちなみに日本は約38万平方キロメートル)ながら、標高2000mを超える山があるなど高低差に富んだ地形を誇り、この高低差の違いがバラエティー豊かな茶葉を生み出します。

また、標高の差はスリランカの紅茶の分類でも重要な基準になります。スリランカの紅茶は、産地の標高によって大きく次の3つのカテゴリーに分かれます*1。 

 

さて、多種多様なスリランカの紅茶の中でも、特に有名な産地はセブンカインズ(seven kinds)と呼ばれています。おおよその標高順に並べると、 

  • ヌワラエリヤ(Nuwara Eliya)
  • ウダプセラワ(Uda Pussellawa)
  • ディンブラ(Dimbula)
  • ウバ(Uva)
  • キャンディ(Kandy)
  • サバラガムワ(Sabaragamuwa)
  • ルフナ(Ruhuna)

となり、標高によるカテゴリーで分類すると、 

  • ヌワラエリヤ、ウダプセラワ、ディンブラ、ウバ→ハイグロウン
  • キャンディ→ミドルグロウン
  • サバラガムワ、ルフナ→ロウグロウン

というようになります。

なお、以前はウダプセラワとサバラガムワを除いた5か所で「ファイブカインズ(five kinds)」と呼ばれていました。しかし、ウダプセラワが独立した産地として扱われるようになったこと、また生産量の増加に伴いルフナがサバラガムワと分離されたことで7か所となり、近年はセブンカインズと呼ばれるようになっています。

 

では、いよいよそれぞれの茶葉の特徴について、順に見ていきましょう。

  

ヌワラエリヤ

セブンカインズの中でも最も標高の高い産地です。クオリティシーズンは1~2月と8~9月の年2回ありますが、1~2月のほうが質の高い茶葉ができると言われています。蜜を含んだ花のような高貴で上品な香り、あるいはレモンやグレープフルーツを思わせる芳醇な香りが特徴。また、他の産地と比べて水色(すいしょく)が淡く、透明感のある黄金色やオレンジ色になります。緑茶やダージリンファーストフラッシュに近いところもあるので、ストレートがオススメです。

ヌワラエリヤについては、以下の記事で詳しく取り上げているので、よろしければご覧ください。

teaisbalmforthesoul.hatenablog.com

 

ウダプセラワ

ヌワラエリヤと後述のウバに挟まれた産地で、クオリティシーズンは8~9月頃*2。草木のような芳しく香ばしい香りが特徴です。どちらかと言えばストレート向きですが、ミルクティーにするとまろやかな甘みが楽しめます。

 

ディンブラ

華やかな香りと適度な渋みがあり、ニルギリと並んで紅茶のブレンドによく使われます。クオリティシーズンは1~3月頃。どんな飲み方にも応えてくれますが、コクがさほど強くないため、ミルクティーにするときはミルクを少なめにするか、紅茶を濃いめに抽出するとよいでしょう。

ディンブラについては、以下の記事で詳しく解説しています。

teaisbalmforthesoul.hatenablog.com

 

 

ウバ

ダージリンやキームンと並んで世界三大紅茶と呼ばれる産地です。以前はウダプセラワもウバの一部とされていました。クオリティシーズンはウダプセラワと同じく8~9月頃。メンソールに喩えられる爽やかな香りと力強い渋みが特徴です。ストレート向きと言われることが多いものの、ミルクを加えるとフルーティーな風味になるので、ミルクティーもオススメです。

以下の記事では、ウバの特徴や相性のよい食べ物について、詳しく解説しています。

teaisbalmforthesoul.hatenablog.com

 

キャンディ

スリランカ紅茶発祥の地、そしてミドルグロウン唯一の産地です。適度なコクがあり、ミルクティーにも向いていますが、マイルドで優しい甘みがあるのでストレートでも楽しめます。ちなみにモスバーガーで紅茶を注文すると、このキャンディが出てきます。

www.mos.jp

 

以下の記事では、キャンディの特徴などについて詳しく解説しています。

teaisbalmforthesoul.hatenablog.com

 

サバラガムワ、ルフナ

セブンカインズの中で最も標高の低い産地です。先ほども軽く説明したとおり、以前はまとめて「ルフナ」と呼ばれていましたが、生産量の拡大に伴い、サバラガムワとルフナが分離されました。旧ルフナ地域のうち、北部がサバラガムワ、南部が現ルフナであると説明されることが多いものの、名古屋の紅茶専門店ティーズリンアンのサイトによると、同じ茶園でも「ルフナ」と「サバラガムワ」の両方で出荷している場合があるそうで、明確な基準はよくわかりません(汗)。何にせよ、「ルフナ産」ないし「サバラガムワ産」とされる茶葉がスリランカ南西部の標高の低い地域で作られているのは間違いないと思ってよいでしょう。

他の産地と比べても明らかに広いので、味や香りの個性も茶園ごとにさまざまですが、基本的な特徴としては、ふくよかな香りと強いコクが挙げられます。土っぽい香りや、黒糖やハチミツのような味わいが感じられる茶葉もあり、ミルクティーにも向いていますが、個人的には香りの豊かさをストレートで楽しみたいところです。

サバラガムワとルフナについては、以下の記事でも詳しく取り上げています。

teaisbalmforthesoul.hatenablog.com

 

スリランカの紅茶には他にもさまざまな種類がありますが、まずはこの7種類を押さえておけば、紅茶通に一歩近づきます。前回お話しした茶葉の飲み比べをスリランカの紅茶でやるのも面白いかもしれません。

*1:厳密に言えば、製茶工場の標高によって決まります。茶畑の標高ではありません。

*2:一部はヌワラエリヤと同じく1~2月頃。