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産地別の紅茶の特徴――ポイントは「渋み」と「香り」

(最終更新:2023年8月22日)

前回の記事では、紅茶の種類と名前のつけ方に、次の3つの基準軸があることをお話ししました。

(1)後から人の手で香りをつけられたかどうか
(2)産地はどこか、摘まれた時期はいつか
(3)葉の大きさはどれくらいか

では、具体的にどんな名前の茶葉があり、それぞれどんな特徴を持つのでしょうか? 今回は紅茶の主な産地とそれぞれの茶葉の特徴について、簡単にお話ししたいと思います。

 

まずは以下の図をご覧ください。紅茶の主な産地とその特徴をまとめたチャートです。

紅茶の産地別特徴チャートv3

ご覧のとおり、図の横軸は渋みの強さを、縦軸は香りが特徴的かどうかを表しています。また、図の中にも注がありますが、名前の色が白い産地の茶葉は比較的コクがあり、ミルクティーに向いているのに対し、名前の色が黒い産地は、どちらかと言えばストレート向きです。もちろん究極的には個々の茶葉によりますが、おおむね上の図のように考えておけば間違いないでしょう*1

ここからは主な産地の名前と茶葉の特徴を1つずつ見ていきます。目当ての産地がある方は、以下の目次から産地名を選択してください。

  

ダージリン

インドの北東部、ヒマラヤ山脈の麓に位置し、ネパールとの国境付近にある産地です。クオリティシーズンが年に3回あり、それぞれの茶葉の特徴が大きく異なります。

ファーストフラッシュ(春摘み)

3~4月にクオリティシーズンを迎える一番茶で、花やフルーツを思わせるフレッシュな香り、そして緑茶のような甘みと渋みが特徴です。酸化発酵の度合いが低いものが多く、水色(すいしょく)は薄いオレンジや黄金色になります。初めて見た人は紅茶とは思わないかもしれません。フレッシュな香りを楽しめるように、ストレートで飲むのがおすすめです。

ファーストフラッシュの特徴やフードペアリングについては、以下の記事で詳しく解説しています。

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セカンドフラッシュ(夏摘み)

ファーストに続き、5~6月頃にクオリティシーズンを迎えるセカンドフラッシュは、ダージリンの中でも特に質が高いと言われています。「マスカテルフレーバー」と呼ばれる瑞々しい香り*2比較的しっかりした渋みが特徴で、水色はファーストフラッシュを濃くしたようなオレンジ色や薄い褐色になることが多いです。ファーストフラッシュと同じく、基本的にはストレートで飲むのがおすすめですが、サイズの細かい茶葉を使ってミルクティーにできる場合もあります。

セカンドフラッシュの特徴については、以下の記事で詳しく説明しています。

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オータムナル(秋摘み)

セカンドフラッシュの後、雨季を挟んで10~11月頃に摘まれた茶葉は「オータムナル」や「オータムフラッシュ」と呼ばれます。ファーストやセカンドとは異なり、香りや渋みがやや穏やかで、その代わりに甘みが強くなる傾向にあります。水色も赤みを帯びるようになり、より「紅茶」と呼ぶに相応しい色になります。飲み方については、ファーストやセカンドと同じく基本的にはストレート向きですが、どっしりとした甘みはミルクティーに向いている場合もあります。

オータムナルについては、以下の記事で詳しく取り上げています。

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アッサム

ダージリンと同じく、アッサムはインドの北東部に位置する産地です。地図上で見れば近いところにありますが、ダージリンが山岳地帯にあるのに対し、アッサムはブラマプトラ川が流れる広大な平野に位置しています。なお、インドで生産される紅茶の約半分がアッサムで作られているとも言われています。

クオリティシーズンは5~6月頃で、この時期の茶葉はダージリンと同じく「セカンドフラッシュ」と呼ばれます。コクが強く濃厚な味わいと、「モルティフレーバー」と呼ばれる芳醇な香りが特徴で、水色は濃い赤褐色をしています。基本的にはミルクティー向きと言われますが、僕はモルティな香りをストレートで楽しむのも好きです。

アッサムについては、以下の記事で詳しく解説しています。

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ニルギリ

ダージリンやアッサムがインド北部の産地なら、ニルギリはインドの南部、西ガーツ山脈付近に位置する産地です。年間を通じて茶葉が生産されてはいますが、クオリティシーズンは1~2月。日本で出回るのは春先の3~4月頃です。

水色は鮮やかなオレンジ色で、草木や花を思わせるクセのない香り適度な渋みや甘みがあり、さまざまなブレンドやフレーバードティーのベースとしてもよく使われます。コクの強い茶葉であればミルクティーにできる場合もありますが、基本的にはストレートで飲むのがおすすめです。また、レモンティーにも向いているほか、フルーツを使ったアレンジティーのベースとしても便利に使えます。

以下の記事では、ニルギリの特徴や相性の良い食べ物について、詳しく説明しています。

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スリランカ(ヌワラエリヤ、ウバ、ディンブラ、キャンディ、ルフナ)

上の図の中ではバラバラの位置にありますが、この5つはいずれもスリランカ(旧名ではセイロン)の産地です。この5つにウダプセラワとサバラガムワを加えてセブンカインズ(seven kinds)と総称されますが、それぞれの特徴が大きく異なるので、以下の記事で別途詳しく取り上げます。

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ケニア

日本ではあまり知られていないかもしれませんが、ケニアはインドやスリランカと並ぶ世界有数の紅茶生産国です。生産量ではインドに次ぐ世界第2位で、輸出量に至ってはなんと世界でもトップ。特に英国向けの輸出が多く、英国で出回っているティーバッグのほとんどにケニア産の茶葉が使われていると言われています。また、赤道直下の高原地帯に茶園が広がっているので、年間を通じて生産量が安定しています。

元々アッサムから茶の種子を持ち込んだことで茶の栽培が始まった地域なので、味や香りはアッサムに似つつ、ややフレッシュな印象があります。水色もアッサムを明るくしたような、鮮やかな赤色です。クセが少なく、適度な渋みとコクがあるので、ストレートでもミルクティーでも楽しめます

ケニア産の紅茶については、以下の記事で詳しく取り上げています。

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ジャワ

インドネシアのジャワ島の紅茶は、日本では大塚食品の「ジャワティストレート」が有名ですね。ケニアと同じく赤道直下の産地なので、年間を通じて茶葉の生産が行われています。「ジャワティストレート」を飲んでもわかるように、ジャワ紅茶は適度な渋みとクセのない味が特徴です。水色は「ジャワティストレート」と同様の綺麗な赤色になります。

 

キームン

中国の安徽省祁門県(あんきしょうきーむんけん)にある産地です。上の図の中でもかなり高い位置にあるのは、蘭の花に喩えられる優雅な香り燻製のようなスモーキーな香りがあるため。後者のスモーキーな香りは、茶葉を炭火で乾燥させることで着くのだそうです。一方、香りのインパクトとは対照的に、味は渋みが少なく深いコクと甘みがあります

キームンについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

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日本

近年は国産紅茶の生産量が少しずつ増えてきており、生産者の方々の努力により、茶葉の質も年々上がってきています。最近はスーパーなどでも国産紅茶のラベルを見ることも多くなりました。味や香りについては、緑茶と同じく産地や品種によって異なりますが、全体的には渋みが少なく柔らかな口当たりと独特の旨味が特徴です。

 

というわけで、紅茶の主な産地とそれぞれの特徴を見てきました。「たくさんあって、どれにすればよいのかわからない……」という方は、まずはストレートティー向きの茶葉とミルクティー向きの茶葉を1つずつ選んで、飲み比べるとよいでしょう。たとえば、ダージリンとアッサムならスーパーなどでも手に入りやすいと思います。

そして、自分の好みの方向性がわかってきたら、それに近い他の茶葉も試してみてください。たとえば、ダージリンが好きならニルギリやヌワラエリヤ、アッサムが好きならケニアやルフナなどを選ぶとよいでしょう。そうしていろいろな茶葉を試していけば、紅茶通に一歩近づくはずです。

*1:なお、紅茶の渋みと香りだけに注目したチャートのため、隣り合っているからと言って味や香りが似ているとは限りません。

*2:「マスカットのような香り」と表現されることもありますが、実際はマスカットというよりワインに近い香りと呼ぶほうが適切かもしれません。