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イングリッシュブレックファストを飲み比べてみた(1)前編

(最終更新:2023年10月24日)

 

突然ですが、イングリッシュブレックファストという紅茶をご存じでしょうか? スターバックスコーヒーに「イングリッシュ ブレックファスト ティー ラテ」という商品があるので、名前は聞いたことがあるという方も少なくないでしょう。

イングリッシュブレックファスト(名前が長いのでこの後は「EB」と略します)とは、その名のとおり「英国風の朝食*1」に合うとされる紅茶のブレンドです。ここでいう「英国風の朝食」とは、「英国で美味しい食事がしたければ、一日に3回朝食を取ればよい*2」というサマセット・モームの言葉にあるようなフル・ブレックファストの豪華な食事だけでなく、伝統的な都市労働者の「パンやポリッジを砂糖入りのミルクティーで流し込む」というような朝食*3も含まれます。そのため、EBは往々にしてミルクティー向きのブレンドとして配合されています。

しかし、一口に「ミルクティー」と言っても人によって好みが異なるように、EBの製法についても、実は明確に決まっているわけではありません日本語版Wikipediaには「アッサム茶、セイロン茶、ケニア茶を用いるものが大多数を占め、高級品にはキームン茶が含まれることがある」とありますが、そのとおりにブレンドされている茶葉は少なく、メーカーやブランドによって使われる茶葉の種類が大きく変わってきます。

逆に言えば、EBの茶葉の配合や風味を見ることで、そのブランドの「美味しいミルクティー像」が浮かび上がってくるかも…………?

というわけで、今回は各ブランドが販売しているEBの茶葉を7種類集め、その飲み比べをしてみました。

  

トワイニング イングリッシュブレックファスト

まずはスーパーや食料品店などでも手に入りやすいものということで、トワイニングのEBを飲んでみましょう。このパッケージに見覚えのある方も多いのではないでしょうか?

トワイニング_イングリッシュブレックファスト

「まろやかな味わいが特長の紅茶」だそうで、茶葉の産地はスリランカとのこと。抽出時間は1分半がよいそうです。ミルクを入れても飲める茶葉のわりに、かなり短めですね。

トワイニング_イングリッシュブレックファスト_産地

なお、どの茶葉でも抽出する時間はパッケージ等の説明に従うことにします。

ティーバッグを開いて茶葉を見てみると、ずいぶん細かいのがわかります。これだけ小さければ、抽出が速いのも頷けますね。

トワイニング_イングリッシュブレックファスト_茶葉

実際に淹れてみると、色も香りも意外と大人しめです。花のような、果実のような、穏やかな香りがします。

トワイニング_イングリッシュブレックファスト_水色

実際に飲んでみても、やはりマイルドでまろやかな味です。ベースの茶葉はキャンディかディンブラあたりなのかなぁと推測。あまりにまろやかなので、ミルクを入れると紅茶の味が負けてしまいます。ミルクティーというより「紅茶味の牛乳」です。ミルクを入れて飲むなら、1分半より長く抽出したほうがよさそうです。

 

トワイニング ゴールデンチップドイングリッシュブレックファスト

実はトワイニングのEBには、少し値段が高い商品もあります。「ラージリーフティーバッグ」というシリーズのひとつです*4

トワイニング_ゴールデンチップドイングリッシュブレックファスト

茶葉の産地のメインはアッサムで、抽出時間の目安は4分。先ほどの安いEBと比べるとかなり長いですね。

トワイニング_ゴールデンチップドイングリッシュブレックファスト_産地

とはいえ、抽出時間が長いのは、茶葉を見れば納得できます。「ラージリーフ」というくらいなので、先ほどと比べるとかなり大きめです。また、「ゴールデンチップド」という名前のとおり、金芽がたくさん含まれています。

トワイニング_ゴールデンチップドイングリッシュブレックファスト_茶葉

この金芽は、茶葉を揉んで酸化発酵させるプロセスで、茶葉のエキスが新芽に浸透し、黄金色に染めることによって作られます。このゴールデンチップが多いほど、茶葉の価値も上がると言われています。

実際に淹れてみると、通常のEBと比べて色が濃く、香りもスモーキーでパンチがあります

トワイニング_ゴールデンチップドイングリッシュブレックファスト_水色

味もアッサムらしく、ともすればエグさを感じられるようなインパクトの強さがあります。エグみが強い分、ミルクを入れても味がしっかり残るので、ミルクティーにするにはこちらのほうがよさそうです。逆に、ストレートで飲むなら先ほどの安いEBのほうが飲みやすいと思います。

 

ロンネフェルト ジョイオブティー イングリッシュブレックファースト

続いては、このブログでも何回か取り上げているドイツの紅茶ブランド、ロンネフェルトのEBです。

ロンネフェルトのティーバッグ商品である「ジョイオブティー」の特徴は、カップの持ち手の部分に引っ掛けられること。このためお湯を注いでもティーバッグが沈む心配がなく、抽出がしやすくなっています。

ロンネフェルト_イングリッシュブレックファースト

茶葉はBOPほどの大きさですが、実はなんとウバのセントジェームスという茶園のシングルエステート(単一茶園の茶葉)だそうです。EBはたいていブレンドの茶葉なので、シングルエステートはかなり珍しいと思います。

ロンネフェルト_イングリッシュブレックファースト_茶葉

水色はやや薄め。ですが、香りは典型的なウバのメントール香で、森の中にいるようなスモーキーな香りがします。有り体に言えばサロ◯パスの香りです(笑)。

ロンネフェルト_イングリッシュブレックファースト_水色

味は渋みがメインでコクは少なめ。エグみはないので飲みやすいのですが、ミルクとの相性はあまりよくないように感じました。ミルクを入れても紅茶の味や香りは残るものの、それぞれ別々に自己主張しておりマッチしていません。どんな飲み方にも合うとされていますが、個人的にはストレートがおすすめです。

 

長くなるので今回はここまで。残りの4種は次回飲み比べます。お楽しみに。

続きはこちら。

teaisbalmforthesoul.hatenablog.com

*1:より厳密に言えば「イングランド風の朝食」です。

*2:"To eat well in England you should have breakfast three times a day."

*3:このあたりについては、川北稔(1996)『砂糖の世界史』に詳しく書かれています。

*4:ただし、現在はトワイニングの公式サイトから商品紹介のページがなくなっており、終売になってしまったようです。