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カフェや喫茶店の紅茶にモヤモヤした話

(最終更新:2020年8月23日)

 

最近、カフェや喫茶店で紅茶のメニューに力を入れているのを見かけることが増えてきました。紅茶専門店でなくても、複数の茶葉を揃えたり、シングルエステート(単一茶園)の茶葉を出したりすることが珍しくなくなってきています。また、ファミリーレストランのドリンクバーでも、ティーバッグではなく茶葉からお茶を淹れられるのが当たり前になりつつあります。

 

しかし、その中には「残念な」紅茶を出すお店も少なくありません。今回は、そんな「残念な」お店に関する、ただの愚痴です。

 

 

たとえば、東京都内のとあるカフェは、自家焙煎のコーヒーの種類が豊富なほか、紅茶もダージリン、ヌワラエリヤ、ニルギリ、アールグレイなど複数の種類を揃えていました。

また、イタリアのブランドのコーヒー豆と大きなベルギーワッフルが売りの別のカフェでは、店頭の黒板でシングルエステートの茶葉を扱っていることをアピールしていました。

さらに、新宿にある某高級ホテルのラウンジでは、ドイツの紅茶ブランド「ロンネフェルト」の茶葉を扱っていることをアピールしていました。

 

しかし、どのお店も茶葉の味や香りはうまく引き出せていませんでした。水色(すいしょく)は紅茶らしい色が付いているものの、香りがほとんど立っておらず、味もどこかあっさりしていたのです。

 

その原因はおそらくコーヒーマシンやエスプレッソマシンから出るお湯を使っていたことにあります。

 

紅茶が好きな人なら誰でも知っているように、紅茶は基本的に「汲みたて、沸かしたて」のお湯で淹れるものです。ここでいう「汲みたて」とは、水道などから注いだばかりで空気をたくさん含んでいるということ。つまり、美味しい紅茶を淹れるには、空気をたくさん含んだ沸騰直後の熱湯を使うのが(一部の例外を除いて)必要になります。

 

一方、コーヒーやエスプレッソの場合、抽出に最適なお湯の温度は人によって意見が異なるものの、おおよそ85~95℃前後の範囲に収まるようです。たとえば、コーヒーの淹れ方を解説しているUCCのサイトでは、適切な抽出温度は92~96℃とされています。

 

こうした中途半端な温度のお湯を、水道の蛇口からではなくエスプレッソマシンから出して紅茶の抽出に使えば、「汲みたて、沸かしたて」という紅茶に最適な条件にならないことは明らかです。しかも、チェーンのカフェやコーヒーショップならまだしも、「うちは紅茶にもこだわっていますよ( ・`ω・´)」と言いたげなお店がこんな失態を平気な顔でやらかしているのを見ると、顔が引きつってしまいます。メニューに紅茶を揃えること自体は結構ですが、出すからにはできるだけ高いクオリティのものを出す努力をしていただきたいと思います。

 

とはいえ、そういう努力をしているお店でも、こだわりが強すぎて独りよがりになってしまうのは、それはそれで困りものです。

 

たとえば、ある紅茶専門店では、ランチタイムにサンドイッチのセットを提供しています。サンドイッチの種類は複数の中から選べるようになっていますが、セットの紅茶はホットかアイスかは選べるものの、種類については「セイロンティー」一択。産地やブレンドについての情報は何もありません。

 

ランチメニューとセットの紅茶、しかも種類は選べないとなると、いわばその店の「顔」とも呼べるような、スタンダードな茶葉を選ぶのが普通のはずです。店に来るのは紅茶好きとは限らず、たまたま通りすがりで入った人が来店することも考えられるわけで、そういった人にも「美味しい」と感じてもらえるようにするには、極端な個性がなく、味や香りのバランスの良い茶葉を選ぶのが無難です。たとえば、ディンブラやキャンディなどの産地を選んだり*1、複数の産地の茶葉をブレンドしたりすることになります。

 

ところが、このお店の「セイロンティー」として出てきたものは、いわゆる無難な茶葉とは香りも味もかけ離れていました。香りはメントール系で、味は渋みが強く、典型的なウバの味と香りがしたのです。僕個人としてはウバは好きなものの、一般的にウバは好き嫌いが分かれる茶葉と言われており、セットメニューのデフォルトの紅茶にするにはリスクが大きすぎます

 

おまけに、茶葉の量が多すぎるのか、1杯目から明らかに味が濃く、差し湯をしなければストレートで飲むのは難しい状態でした。このお店が実際に何を考えてこのような淹れ方をしているのかはわかりませんが、初めからミルクを入れて飲むよう強制されているようで、あまり良い印象は持てませんでした。

 

念のため付け加えておきますが、これが「ミルクティー向きの茶葉を注文した」とか「最初からウバを選んだ」とか「このお店では最初からミルクを入れて飲むことを推奨している」というような状況であれば大いに納得できます。しかし、このお店はランチメニューとセットの「セイロンティー」として、つまりその店のスタンダードな紅茶の立ち位置として、特に何の説明もないまま、濃く抽出したウバ(と思われる紅茶)を出してきたのです。これはお店のこだわりが強すぎるというか、説明不足で不親切というか、独りよがりがすぎるように思います。

 

最初の例のように、紅茶の知識がなさすぎて茶葉のポテンシャルを引き出せないのも困りものですが、こだわりが強すぎるあまり、特定の飲み方を強制していると取られかねないのも考えものです。ただでさえ紅茶はコーヒーや緑茶に比べて敬遠されがちな状況で、紅茶に対して誤った、または偏ったイメージを持たせてしまうようなことをするのは、いかがなものかと思います。まして、それが有名店であれば尚更です。

 

客に媚を売れとは言いませんし、それぞれのお店で独自の哲学や思想、ポリシーを持つのは決して悪いことではありません。むしろ、そうした独自性があるからこそ、客を惹きつける面もあるでしょう。とはいえ、それもあくまで客への配慮があってこそではないのかなぁ……と濃すぎる紅茶にミルクと砂糖をドバドバ入れながら思いました。