久しぶりのイングリッシュブレックファスト飲み比べです。今回は日本橋三越の英国展(オンライン含む)で購入した茶葉4点をレビューします。なお、順番はブランド名のABC順です。
- Benoist イングリッシュブレックファースト
- Birchall グレートリフトブレックファストブレンド
- Darvilles of Windsor イングリッシュ・ブレックファスト
- Ringtons ゴールド
Benoist イングリッシュブレックファースト
まずはスコーンでお馴染みのベノアです。元々は英国のブランドだったそうですが、現在は紀鳳産業という日本企業のブランドのひとつとなっています。
袋入りとティーバッグの2つのタイプがありますが、今回はティーバッグを購入しました。ティーバッグは個包装になっています。
開封すると、テトラ型のティーバッグが入っています。茶葉はCTCタイプ(丸くコロコロとした形の茶葉)で、量は2.0gです。原産国は「インド」だそうですが、おそらくアッサムだろうと思われます。
パッケージ側面に書いてある「三角ティーバッグの美味しい淹れ方」によると、「温めたティーカップに三角ティーバッグを入れ、沸騰したお湯を注ぎ3~4分待ちます」とのことなので、抽出時間は3分と4分にしました。なお、写真左が3分です。
水色はダークブラウンで、いかにもアッサムらしいスイートポテトのような甘い香りがします。味は適度なコクと甘みがあり、渋味もありますが、あまり強くはありません。3分でも4分でも味は大きく変わらないように感じました。
ミルクティーでも飲んでみましょう。
元々控えめだった渋味がさらにマイルドになるので、ゴクゴクと飲めるミルクティーになります。ただし、3分だと少し水っぽい気がします。ストレートのまま飲むなら3分で、ミルクティーにするなら4分抽出したほうがよいでしょう。
総評としては、オーソドックスなアッサムのCTCといったところ。上品で風味のまとまりが良い反面、パンチの強さを求める人には物足りないかもしれません。また、2gのティーバッグ8個入りで税込778円という価格設定はちょっと割高に感じられます。とはいえ、個包装になっているのは嬉しいですね。
Birchall グレートリフトブレックファストブレンド
次はBirchall(バーチャル)というブランドです。日本では今年の5月に販売が始まったばかりとのこと。当然ながら、英国展に出店するのも今年が初めてだったようです。
なお、ブランド名はダージリン紅茶協会の創設メンバーであるバーチャル・ジョージ・グラハムという人物に由来するそうです。
今回購入した「グレートリフトブレックファストブレンド」は、アフリカ大陸東部にあるグレートリフトバレー(大地溝帯)周辺の産地のブレンドだそうです。日本の総代理店であるマウントマヨンジャパンのサイトには、「ルワンダからケニアのグレート リフト バレーまで、最高のお茶が見つかる東アフリカ全域の農園から独占的に調達されています」という記述があります。
箱を開けると個包装ではなく、ひとつのビニール袋にティーバッグ15個がまとめて入っています。ティーバッグはベノアと同じくテトラ型。中の茶葉はCTCタイプです。東アフリカの産地はCTC製法が主流なので、当然と言えば当然ですね。
淹れ方については、推奨抽出時間が2分であるという記載しかありません。茶葉の量が約3.1gなので、お湯の量は150mlにしました。蒸らし時間は2分と3分です(写真左が2分)。
水色は赤みを帯びた濃いめの褐色。ミルクチョコレートのような色とも言えそうです。草や土のような香りで、いかにもアフリカ産の茶葉という印象。味は強烈な渋味と多少の酸味に加え、なぜか微妙に塩っぱい味があります。一方、渋味が強いわりにコクはあまり強くなさそうです。
ミルクティーにすると水っぽくなりそうな気がしたのですが、いちおうこれも牛乳を足してみました。
案の定、少し水っぽくなりました。また、牛乳のおかげで渋味は多少和らぐものの、酸味は最後まで残ります。あくまで推測ですが、この酸味はパッケージの一部が透明になっていて、光が入り込むせいではないかと思われます。
以前別の記事でも検証しましたが、紅茶(に限らず茶葉全般)は光に長時間当たり続けると異臭を放つようになります。ここで言う「光」は直射日光だけでなく、室内の照明の光も含みます。もしかしたらこの商品もパッケージの中に光が入り込んで茶葉が劣化しているのかもしれません。
teaisbalmforthesoul.hatenablog.com
渋味が強烈で不快なうえ、茶葉の劣化のリスクがあることも踏まえると、正直ちょっと微妙な商品かなぁと思います。ちなみに価格は15個入りで税込1,701円でした。茶葉の量が多めとはいえ、やっぱり割高ですかね……。
Darvilles of Windsor イングリッシュ・ブレックファスト
次のダーヴィルス・オブ・ウィンザーは英国展の常連ブランドです。日本ではルウラルという会社が輸入代理店を務めています。
今回飲むダーヴィルスのブレンドはアッサム、スリランカ、ケニアの茶葉を使用しているそうです。ティーバッグは平べったいタイプで、個包装になっています。
ティーバッグを開くと、中の茶葉はこのようになっています。CTCの茶葉が目立つような気がしますが、スリランカの茶葉とほとんど一体化しているようにも見えます。
パッケージ側面におすすめの淹れ方が英語で書いてあるのですが、「ティーポットの場合は4~5分、カップの場合は1~2分蒸らしてください」*1とのこと。もしかして、ティーポットで淹れる場合でもティーバッグは1個しか使わないのでしょうか……。
まあ、今回はどうせティーカップを使うので関係ありません。ティーバッグ1個(茶葉2.5g)を約120mlの熱湯で抽出します。時間はさすがに1分では短すぎる気がしたので、2分と3分にしました(写真左が2分)。
水色は赤みを帯びた褐色。バーチャルと色の系統は同じように見えます。香りは草原のような香りと土っぽさが同居しており、後から酸化発酵による甘い香りも感じられます。味は渋味、甘み、コクのバランスがちょうどよい感じ。ただ、3分だと少し渋味が強すぎる気がするので、ストレートで飲むなら蒸らし時間は2分が限界かと思います。
ミルクティーにもしてみましょう。
牛乳を加えても水っぽくならず、しっかりしたコクがあります。乳脂肪分の多い牛乳を使っても紅茶の味が負けないと思うので、リッチなミルクティーが飲みたい人におすすめです。
というわけで、総評としてはストレートでもミルクティーでも楽しめる万能なブレンドと言えるでしょう。さすが英国王室ご用達のブランドです。しかもティーバッグ25個で税込1,944円なので、ここまでのベノアやバーチャルよりも1杯あたりの値段は安くなります。
Ringtons ゴールド
最後に飲むのはリントンズの「ゴールド」です。
実はリントンズはこのブログで2回取り上げたことがあります。1回目は3年前(2020年)の英国展の会場でミルクティーを飲んだとき、2回目は昨年(2022年)の春に「カッパス」という商品を飲んだときです。
teaisbalmforthesoul.hatenablog.com
teaisbalmforthesoul.hatenablog.com
どちらの記事でも感想は非常に残念なものでしたが、日本橋三越や新宿伊勢丹の英国展で毎回行列ができているのを見るにつけ、「どうしてこんなに人気なんだろう?」と不思議に思っていました。そこで今回、一番人気の「ゴールド」を自分で淹れてみることにしました。
というわけで、まずはパッケージです。他の3つと比べ、包装の仕方が簡易なものになっています。
ティーバッグは紐なしで、2包がひとつに繋がっています。英国の紅茶でときどき見かけるタイプですね。
ティーバッグを開いて茶葉を見てみると、非常に細かいCTCの茶葉を使っていますね。ただ、ゴールデンチップのようなものもわずかながら混じっているようです。リントンズジャパンのサイトによると「(茶葉の)芽の部分のみを贅沢に使用」しているそうです。が、そのわりに普通のCTCの茶葉とあまり変わらないような……。
さて、いよいよ実際に淹れてみるわけですが、リントンズジャパン推奨の淹れ方がかなり独特です。商品に付いてきたリーフレットによると、400mlの熱湯で4分間蒸らすのだそうです。ティーバッグ1個で茶葉の量は約3gなのですが、お湯の量がかなり多いし、蒸らし時間も長いですね。
とりあえずはこのリーフレットのとおりに淹れてみましたが、やはり水色はちょっと薄くなりますね。明るい褐色といったところでしょうか。
香りは蜂蜜のようですが、以前飲んだ「カッパス」と同じくポテトチップス(あるいは土から掘り出したジャガイモ)のような香りも感じられます。味はうっすらとした甘みがある一方、渋味はほとんどありません。と言うより、甘み以外の味がほとんどないと表現したほうがよいでしょう。ケニア紅茶らしからぬ甘みなので、茶葉の新芽の部分を使っているというのは本当のようです。
「これだけ味が薄いと牛乳を注いだら水っぽくなるのでは?」と思うのですが、公式としてはミルクティー推奨のようなので、一応ミルクも加えてみます。
が、案の定、水で薄めた牛乳のような味になりました。紅茶の甘みがあるぶん、「カッパス」のミルクティーよりは飲めますが、ペットボトルのミルクティー飲料でもこれより味が濃いんじゃないかな……。
まあ、でも紅茶の渋味を一切受け付けないという人もいるようですし、そういう層には受けるブレンドなのかもしれません。しかし、もっと不可解なのは、リントンズが本国の英国でもそれなりに人気があるらしいということです。こんな水っぽいミルクティーを英国の人が好むとは思えないのですが……。
あまりに不可解だったので、本国の公式サイトで商品のレビューを見てみたところ、こんなクチコミを見つけました(太字は引用者による)。
Lovely blend if you like a stronger brew. We were Yorkshire Tea Gold fans until we discovered this blend.
(濃いめの紅茶が好きならおすすめのブレンド。以前は「ヨークシャーティーゴールド」のファンでしたが、このブレンドに出会ってからは乗り換えました)I like strong flavourful tea and Ringtons Gold Blend is a good option.
(私は風味のしっかりした紅茶が好きなのですが、リントンズの「ゴールド」はぴったりです)
待って、これのどこがstrongなの!? ……と、ここではたと気がつきました。同じページのBrewing Instructions(おすすめの淹れ方)には次のように書かれているのです(太字は引用者による)。
Preparation – Use one tea bag per cup for the perfect of tea.
(淹れる前の準備――美味しい紅茶を淹れるには、カップ1杯に対してティーバッグを1つ使用します)
言ってることが日本と全然違ええええええ
たとえマグカップを使って淹れたとしても、400mlものお湯を使うはずがありません。つまりリントンズジャパン推奨の淹れ方をしたら、本国よりも味の薄い紅茶ができるのは当然なわけですね……。
というわけで、仕切り直しです。お湯の量を200mlとして、マグカップで淹れてみます。なお、本国のサイトに「3~5分蒸らすのがベスト」と書かれている*2ことを踏まえ、抽出時間は間を取って4分とします。つまり最初の淹れ方からお湯の量だけを半分にする形です。
そして最初に淹れた紅茶と比べると……水色からして一目瞭然ですね。
香りはあまり変わりませんが、味は当然ながら濃くなりました。元々の甘みが強くなるのと同時に、舌全体にまとわりつく強烈な渋味が感じられるようになります。これは以前飲み比べたPG Tipsやヨークシャーティーなどの英国庶民派ブランドと同じ系統ですね。ただ、PG Tipsなどと比べると、甘みが強い代わりに、コクはあまり強くなさそうです。
teaisbalmforthesoul.hatenablog.com
最後にこれもミルクティーにしてみましょう。
渋味や苦味は多少残るものの、マイルドなミルクティーになります。個人的にはもう少しコクが欲しいところですが、最初の淹れ方と比べれば雲泥の差です。少なくとも普段から紅茶をよく飲む人は、こちらの淹れ方にするのが正解だと思います。
以上を踏まえると、もしこの味が好きであれば、普段遣いの紅茶としてはちょうどよいでしょう。もちろん高級な紅茶とは口が裂けても言えませんが、価格に見合った品質はあると思います。リントンズの他のブレンドティーより100~300円ほど高いとはいえ、それでもティーバッグ50個で税込1,350円という破格っぷり*3です。たかが数百円を出し惜しみして微妙な品質の紅茶を飲むくらいなら、この「ゴールド」を選ぶことをおすすめします。
というわけで、今回の飲み比べは以上です。2つ目のバーチャル以外は、香りや味が好みであれば、これからの季節のミルクティー用に買ってもよいんじゃないかと思います。
*1:正確な原文は、To Brew: Pour on freshly boiled water and allow to infuse for 4-5 minutes in a teapot, or 1-2 minutes in a teacup.(淹れ方の目安:沸かしたての熱湯を注ぎ、ティーポットの場合は4~5分、カップの場合は1~2分蒸らしてください)となっています。
*2:正確には、Ringtons tea bags are best brewed for 3-5 mins, but no longer.(リントンズのティーバッグは3~5分蒸らすのがベスト。ただしそれより長くならないようにしてください)と書かれています。
*3:日本での販売価格だけを見れば、それなりの値段に思えるかもしれませんが、リントンズの紅茶があくまで日常茶のレベルであるという点については、本国での販売価格を見ればよくわかります。本文中でも引用した本国の公式サイトによると、英国での「ゴールド」の販売価格は2.46ポンドだそうです。この1~2年で円安が進んだとはいえ、今の為替レートで換算しても500円を切ります。ティーバッグ50個で500円というと、日東紅茶の「デイリークラブ」やリプトンの「イエローラベル」すらも下回る価格です。