(最終更新:2024年8月26日)
11/1は紅茶の日。11月に入り、冬の足音が少しずつ近づいてくると、だんだん温かいミルクティーが恋しくなってきます。美味しいミルクティーを飲むには、アッサムやケニアなどコクのある茶葉を選ぶのが不可欠。しかし、もう1つ考えなければならないことがあります。それは、
ミルクティー用の牛乳ってどれを選べばよいの?
という問題です。
当たり前と言えば当たり前ですが、ミルクティーの味を左右するのは茶葉だけではありません。紅茶を淹れた後にたっぷりと注ぐ牛乳も、ミルクティーの味に影響を与える要因のひとつです。
では、最高に美味しいミルクティーを飲むには、どんな牛乳を使えばよいのでしょう? この謎を解くために、まずは少し情報収集をしてみました。
まずは、先日訪れたジャパン・ティー・フェスティバルの会場で、スタッフの方からこんな話を伺いました。
ミルクティーに合うのは断然、低温殺菌の牛乳。 普通の牛乳を使うとマスキングが起こる。
マスキングが何なのかはよくわからなかったのですが、低温殺菌がおすすめだそう。ちなみに普通の牛乳は、殺菌処理の方法としては超高温殺菌に当たるのだとか。詳しくは雪印メグミルクのこちらのページに解説があります。
次に、紅茶に詳しい僕の友人に意見を聞いてみました。すると、こんな返事が。
飲んで美味しい牛乳なら大抵は美味しいが、やや濃いめのほうがよい。低温殺菌のノンホモがベスト。加工乳に抵抗がなければ特濃のものでもあり。
ノンホモ、つまりノンホモジナイズド牛乳という名前は聞いたことはありましたが、どういう製法なのかはよく知らず。調べてみると、牛乳のホモジナイズ(均質化)加工に使う機械のメーカーのブログに、次のような説明がありました。
ノンホモジナイズとは、均質化していない物質を指します。
混じりあっているように見える物質内部に、むらがあることは珍しくありません。
特に物質を構成する分子の大きさが違うものを混ぜ合わせると、むらができやすいでしょう。
牛乳を例にとると、牛乳の成分はタンパク質や脂質、水分です。
これらの物質はそれぞれ分子の大きさが異なるため、時間がたつと牛乳の表面に脂肪分が膜をはります。
これが本来の牛乳なのです。
しかし、このままでは味にむらがでたり、加工しにくかったりします。
そこで牛乳を均質化(ホモジナイズ)することにより品質を安定させ、より多くの人においしい牛乳を提供しているのです。
つまり低温殺菌かつノンホモが、搾乳直後の状態に最も近いということになるわけですね。そう聞くとなんだか美味しそうに見えますが、上の三丸機械工業のブログではノンホモ牛乳にあまり肯定的ではないような……。
そんなことを考えていたら、以前にも紹介した大阪の紅茶専門店、ロンドンティールームの公式サイトでこんな記事を見つけました。
「低温殺菌のものを使うと、おいしいミルクティーになる」とよく言われています。
牛乳としてそのまま飲むのであれば、低温殺菌の牛乳はおいしいでしょう。しかし、ミルクティーにする際の牛乳としては、低温殺菌の牛乳を使用したからと言って、特別美味しく感じられることはありません。
(出典:ロンドンティールーム オンラインマガジン「低温殺菌の牛乳を使うと、ミルクティーがおいしくなるって本当?:ロンドンティールームの見解」)
言ってることが全然違うじゃん! 困りました。これではどの牛乳にすればよいのか判断できません。かくなるうえは……
自分で実験するしかねぇ。
というわけで、スーパーで牛乳を買ってきて、ミルクティーの飲み比べをしてみました。今回使ったのは以下の3種類です。
- 雪印メグミルク牛乳(いわゆる普通の牛乳枠)
- タカナシ乳業 コクっとミルク北海道4.0牛乳(乳脂肪分多め枠)
※タカナシの公式サイトによると、現在は「北海道4.0牛乳」という名称に変わっているようです。
- タカナシ乳業 低温殺菌牛乳(低温殺菌枠。乳脂肪分は普通)
茶葉はアッサムとケニアのブレンドティーを使用します。このブレンドをティーポットで淹れて、テイスティングカップに1杯ずつ注ぎ、3種類の牛乳を大さじ1杯ずつ入れて比較しました。そして、普通の牛乳のミルクティーを基準にしながら、それ以外の2つの牛乳で作ったミルクティーの味を分析してみました。
まずはコクっとミルク北海道4.0牛乳です。乳脂肪分が多めなので当然ですが、牛乳の味が濃く感じられます。そのためコクの強いアッサムのCTCなどの茶葉に向いていると思います。また、ロイヤルミルクティーやマサラチャイのように茶葉を煮込んで作る場合に使うとリッチな仕上がりになるはずです。
一方、スリランカやニルギリのようなコクがあまり強くない茶葉では、牛乳の濃さに紅茶が負けてしまうように感じました。僕はスリランカの紅茶を飲むことも多いので、この点はちょっとマイナスです。
次に低温殺菌牛乳です。牛乳の濃さの点では普通の牛乳と変わりませんが、味自体がいつもとは違いました。そしてこの味、僕はちょっと苦手です……。
この低温殺菌牛乳のミルクティーを飲んだときに思い出したのが、自分の幼少期です。僕は子どもの頃は牛乳が嫌いで、にもかかわらず父の実家が酪農をやっていて、帰省すると搾ったばかりで鍋で火にかけただけの牛乳を毎回飲まされました。そのときの牛乳の味を思い出してしまったのです。
先ほども触れたように、低温殺菌牛乳は普通の超高温殺菌牛乳と比べて牛乳本来の味が残っています。この牛乳本来の味には、旨味だけでなく臭みも残ってしまっているようです。そのため、低温殺菌牛乳のミルクティーを美味しいと思うかどうかは人それぞれだと思います。
……というわけで、今回の実験の結論は、
牛乳単体で飲んで、自分が美味しいと感じるものを使えばよい
ということです。
こってりした牛乳が好きな人は脂肪分が多めのものを使えばよいし、牛乳本来の味が好きな人は低温殺菌やノンホモジナイズドの牛乳を使えばよいでしょう。また、茶葉によって牛乳を使い分けるという手もあります。
ただ、スーパーなどで売られているごく普通の牛乳で十分美味しいと感じられる人(僕自身もそうです)は、普通の牛乳をミルクティーに使ってもまったく問題ないと思います。また、牛乳のまろやかさはほしいけど脂っぽくなるのが嫌という方は、低脂肪牛乳を使うのもありかもしれません*1。
*1:ただし無脂肪牛乳はさすがに水っぽくなりすぎるので、あまりおすすめできません。また低脂肪牛乳もそれなりに水っぽくなります。