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アーマッドティーのティーバッグ紅茶全種レビュー

(最終更新:2023年5月21日)

今日4月21日は英国のNational Tea Day(紅茶の日)です。これを記念して、毎年このブログでは英国の紅茶ブランドのレビュー記事を投稿しています。一昨年はフォートナム・アンド・メイソン、昨年はトワイニングと老舗ブランドが続きましたが、今年はアーマッドティー(Ahmad Tea)のティーバッグ商品(ただし日本で手に入るもののみ)を全種類飲んでみたいと思います。

アーマッドティー ティーバッグ商品

 

アーマッドティーとは?

飲み比べに入る前に、そもそもアーマッドティーとはどんなブランドなのか、簡単に紹介しておきましょう。「別に興味ないんだけど」という方は、こちらのリンクから飲み比べに進めます。

アーマッドティーは1986年、ラヒーム・アフシャー(Rahim Afshar)とその兄弟らによって創設されました。元々、父親であるアーマッド・アフシャー(Ahmad Afshar)が紅茶のブレンドや包装の事業を営んでいたそうで、息子のラヒームがそれを土台として、イングランド南部のサウサンプトンで紅茶店を開いたのがはじまりだそうです。なお、お気づきかもしれませんが、「アーマッド」というブランド名は創業者の父親にちなんで名付けられました。

さて、創設直後からアーマッドティーは順調に事業を拡大させていき、1992年にはロシアやウクライナカザフスタンなど、旧ソ連の諸国に参入しました。1996年にはスリランカコロンボでオフィスを開設し、その後もさらなる需要の拡大に対応すべく、1999年にはウクライナ*1、2008年には中国で工場を新設。2010年には現在の所在地であるハンプシャーのチャンドラーズ・フォードに本社を移転し、2012年にはアラブ首長国連邦のラス・アル・ハイマで旗艦工場の操業をスタートさせました。

現在は、日本を含めた80以上の国や地域で商品が販売されています。創業からわずか40年足らずで事業をここまで拡大させたのは、まさしく快挙と言ってよいでしょう。しかも、2015年からは英国の高級食品小売業組合が主催するGreat Taste Awardsというコンテストで受賞し続けており、2018年にはGreat Taste Producer(グレート・テイスト・プロデューサー)の称号も授与されました。本国でこうして高い評価を受けているからこそ、世界的にも事業を展開する一大ブランドとなったのでしょう。

グランドニッコー東京ベイ舞浜ニッコーラウンジのアーマッドティー

ホテルのレストランやラウンジでも、アーマッドティーを採用しているところがあります。写真はグランドニッコー東京ベイ舞浜のニッコーラウンジです。

なお、日本では富永貿易という会社が輸入総代理店を務めています。商品は同社のオンラインショップ「Tasty World!」ブランドの公式オンラインショップで注文できるほか、カルディや成城石井などの食料品店でも購入できます。今回はブランドの公式オンラインショップでまとめて注文しました。

ahmadtea.jp

 

では、いよいよ本題の飲み比べに入りましょう。今回は数が多いので、

の3つに大きく分けたいと思います。なお、商品名の表記は日本版の公式オンラインショップで、茶葉の産地は可能な限り英国版のサイトで確認しています。

ノンフレーバードティーのレビュー

実は香りの着いていないアーマッドティーの商品は、日本では3種類しか販売されていません。

セイロン

アーマッドティー セイロン

ほどよい渋みとコク、そして土を思わせるようなスパイシーな香りがあります。牛乳を足しても水っぽくならず、それでいてキレのある味わいになります。

なお、茶葉の産地はスリランカのローグロウンとミドルグロウンだそうです。日本のブランドではハイグロウンの茶葉(ディンブラやウバなど)をメインに使うことが多い気がするので、ローグロウン主体のブレンドはちょっと珍しいかもしれません。

 

イングリッシュブレックファースト

アーマッドティー イングリッシュブレックファースト

口に含むと、舌にずっしりとくるコクと苦味があり、その後から甘さが追いかけてきます。後味に若干のモルティフレーバーを感じますが、これはセカンドフラッシュのアッサムが含まれているためでしょう。アッサムのほかには、スリランカケニアの茶葉がブレンドされており、当然ながらミルクともよく合います。ミルクティーにすると、ナッツのような風味を感じました。

 

ダージリン

アーマッドティー ダージリン

火入れの強い茶葉を使っているのか、香ばしいを通り越して焦げたような匂いがします。また、薬草のような香りもあります。ダージリンの甘みもなくはないものの、苦味のほうが強い気がします。ファーストフラッシュとセカンドフラッシュの茶葉を使っているそうですが、他のブランドのダージリンには見られない、ちょっと変わった風味です。

なお、ミルクを入れると、焦げ臭さが余計に際立ってしまうので、ストレートで飲んだほうがよいと思います。まあ、そもそもダージリンはミルクティー向きではありませんが。

 

フレーバードティー(カフェインあり)のレビュー

次は香りの着いている紅茶のレビューです。全部で9種類あります。なお、☆のマークが付いている6種類はデカフェもあります。

アールグレイ

アーマッドティー アールグレイ

ベルガモットの香りが強く感じられる、典型的なアールグレイです。味はマイルドながら、やや苦味が強めかもしれません。ベースの茶葉はマラウイケニアブレンドとのことで、ミルクを入れても紅茶のコクが残るので、アールグレイのミルクティーを飲みたいときにはよさそうです。

 

イングリッシュティーNo.1

アーマッドティー イングリッシュティーNo.1

名前からはわかりにくいのですが、アールグレイ系のフレーバードティーです。ただ、上の「アールグレイ」よりは香りが控えめで上品な印象です。味は渋みとコクのバランスがよく、ストレートでもミルクティーでもOKですが、牛乳を入れすぎると香りが消えてしまうので、ミルクティーにする場合は牛乳を少なめにするとよいと思います。なお、茶葉の産地はスリランカとアッサム、そしてケニアとのこと。

 

バニラ☆

アーマッドティー バニラ

バニラの香りも当然するのですが、いざ飲んでみると花のような香りも強く感じられます。「もしかしてアフリカの茶葉がベースか?」と思って調べてみたら、案の定マラウイケニアでした。個人的には茶葉自体の香りとバニラの香料の相性がよくない気がします。

 

チャイスパイス

アーマッドティー チャイスパイス

他のブランドのスパイスティーと比べると、生姜の風味が強めです。パッケージによると、生姜が15%、シナモンが8%使われているそうで、それ以外のスパイスとしては胡椒、クローブスターアニス、カルダモンがブレンドされています。紅茶自体の味はコクがありながらマイルドで、当然ながらミルクティーにしても美味しいです。なお、茶葉の産地はスリランカとアッサム、そしてケニアとのこと。「イングリッシュティーNo.1」と同じ組み合わせです。

 

マンゴー

アーマッドティー マンゴー

香りを嗅いだだけでマンゴーのフレーバーだとわかるほど、まるで本物のマンゴーのような香りがします。紅茶自体の味がマイルドなので、牛乳を加えると紅茶の渋みが消えてマンゴージュースのような味になります。なお、茶葉の産地は「バニラ」と同じくマラウイケニアです。

ちなみに、フルーツ系のフレーバードティーには、香料だけでなく本物の果肉や果皮ブレンドされています。そのおかげなのかはわかりませんが、どれも果物の香りの再現度が高いです。

 

アップル☆

アーマッドティー アップル

青りんごのような甘酸っぱく爽やかな香りがします。赤りんご系のフレーバーではないので、ミルクティーにするにはちょっと微妙かも。なお、茶葉の産地はまたもやマラウイケニアです。

 

ピーチ&パッションフルーツ

アーマッドティー ピーチ&パッションフルーツ

ピーチと言っても、白桃というよりは黄桃系の香りです。パッションフルーツと相まって、南国の気分になります。「アップル」と同じく、これもストレート向きの紅茶です。茶葉の産地がマラウイケニアなのも一緒でした。

 

ストロベリー☆

アーマッドティー ストロベリー

ジューシーないちごの香りがします。ミルクティーにすると、さながらいちごオレのような味になります。茶葉の産地はまたマラウイケニア……と思いきや、「東アフリカ」としか書かれていませんでした。具体的にはどこなんでしょうか……?

 

レモン&ライム☆

アーマッドティー レモン&ライム

最初はレモンの酸っぱい香りがして、後からライムのスパイシーさを感じます。そして紅茶を飲み込む瞬間に、またレモンの後味が現れます。爽やかな風味なのでアイスティーにするのもよさそうです。

なお、茶葉の産地はマラウイケニアでした。ストロベリーだけ産地が違うのでしょうか……?

 

デカフェ紅茶のレビュー

最後はデカフェ紅茶です。全部で9種類ありますが、うち6種類は上で紹介したカフェインありの茶葉と同じ香りです。なお、デカフェの商品にはフレーバードティーしかありません。

アールグレイ、バニラ、アップル、ピーチ&パッションフルーツ、ストロベリー、レモン&ライム

アーマッドティー デカフェ

まずこの6種類については、カフェインの苦味がなくなって飲みやすくなっていること以外、カフェインありの茶葉と香りや味が(ほぼ)変わりません。茶葉の産地はケニアに限定されています*2が、カフェインありの茶葉がマラウイケニア(または東アフリカ)だったので、風味は大して変わらないものと思われます。そのため、この6種類のレビューは省略します。

 

ヘーゼルナッツチョコレート

アーマッドティー ヘーゼルナッツチョコレート

ヘーゼルナッツというよりは、ココナッツのような印象を受けます。冷めてくるとチョコレートの香りがわかりやすくなります。

 

シナモン

アーマッドティー シナモン

個包装には「シナモンスパイス」と書かれていますが、スパイスの印象はあまり強くはなく、シナモンがストレートに香ります。

 

キャラメル

アーマッドティー キャラメル

ほろ苦いというよりは、甘じょっぱい系の香りです。外国のキャラメルにありそうな香りとでも言えばよいでしょうか。ちなみに、多少シナモンっぽさもあるように感じましたが、パッケージによると実際にシナモン香料が使われているそうです。

なお、ヘーゼルナッツチョコレート、シナモン、そしてキャラメルのスイーツ系フレーバー3種はいずれもケニアの茶葉をベースに使っています。マイルドながらコクがあるので、ミルクティーにするのがおすすめです。砂糖も加えれば、さらにスイーツらしくなります。ただ個人的にはいかにも作り物っぽくてどれも好きではありませんでした……。

 

というわけで、全21種類の商品を飲み比べてみました。個人的には「セイロン」と「イングリッシュブレックファースト」、そしてフルーツ系のフレーバードティーが高評価でした。「本物のフルーツみたいな香りの紅茶が飲みたい!」という方には、アーマッドティーは特におすすめです。

*1:本国版サイトの沿革のページでは、年号が1998年になっていますが、拠点紹介のページでは1999年11月16日とされています。日付まで指定されているページのほうが信頼できるだろうと判断し、差し当たり今回は拠点紹介のページに準拠しました。

*2:フルーツのフレーバードティーは、デカフェの商品が本国で販売されていないため、茶葉の産地を確認できません。ただ、本国でも販売されているデカフェのフレーバードティーは、いずれもケニアの茶葉がベースになっているので、フルーツティーも同じと思われます。