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TEAPONDのオリジナルブレンド全種レビュー

今日11月1日は日本紅茶協会が定める「紅茶の日」。そんな記念すべき日に産声を上げた紅茶専門店があります。それは東京・江東区清澄白河に拠点を構えるTEAPONDです。2010年11月1日の開業から今年で13周年を迎えたTEAPONDは、清澄白河の本店以外にも、港区の青山、大阪の梅田、京都の四条河原町(10月17日オープン)、そして麻布台ヒルズ(11月24日オープン予定)と、精力的に店舗を増やしています。

今回はそんなTEAPONDのオリジナルブレンド紅茶7種を飲んでレビューしたいと思います。なお、あくまでレビューであって宣伝ではないため、率直に感想を書いているという点はあらかじめご了承ください(このブログの記事はどれもそうですけど)。

TEAPOND商品パッケージ

 

今回の飲み比べのルール

以前ルピシアのブレンドティーを飲み比べたときと同じように、まずは今回のルールを確認しておきましょう。

今回レビューするブレンドティーに限らず、TEAPONDの各商品には「ティーカード」と呼ばれる商品説明のカードが付いてきます。

TEAPONDティーカード

このティーカードの裏面や商品のパッケージには、「おいしい淹れ方の目安」という欄があります。下の写真は「ミルクティーブレンド」のカード裏面です。

TEAPOND ミルクティーブレンド ティーカード裏面

ここで指定されている抽出時間(幅がある場合は最も長い時間)とそのプラスマイナス1分でホットティーを淹れて、味や香りの違いを比較したいと思います。たとえば、上の「ミルクティーブレンド」の場合、目安の時間は最長で3分なので、飲み比べる茶液の蒸らし時間は2分、3分、4分ということになります。なお、茶葉の量は2.5g、お湯の量は約120ml(テイスティングカップ1杯分)で統一します。

さらに、ホットティーだけでなく、水出しアイスティーもすべての商品で作ります。水出しの条件は茶葉2.5g、冷水120ml、抽出8時間で共通です。

 

本題の飲み比べ

それではいよいよ本題の飲み比べに入りましょう。順番は商品名のあいうえお順です。なお、名前に半角スペースが含まれる商品とそうでない商品がありますが、表記はTEAPONDの公式サイトに準拠しています。

アウルブレンド

トップバッターはTEAPONDのハウスブレンドである「アウルブレンド」です。アウル(Owl)は英語で「フクロウ」という意味ですが、お店のロゴにもフクロウの絵が使われているので、ハウスブレンドにぴったりの名前と言えるでしょう。

まずは茶葉の外観を見てみます。ヒマラヤ山脈周辺の産地のブレンドだそうで、おそらくダージリンとネパールと思われますが、茶葉のサイズは全体的に大きめ。新芽の部分もちらほらと見えますね。

TEAPOND アウルブレンド 茶葉外観

さっそくホットで淹れてみましょう。抽出時間は左から3分、4分、5分です。

TEAPOND アウルブレンド ホットティー

水色(すいしょく)はオレンジ寄りの褐色。香りは熟したりんごを思わせる甘い香りの後に焙煎の香ばしさを感じます。味は甘みが強く、渋みがやや控えめでクリアなテイスト。抽出が長くなると、甘みが奥に引っ込み、代わりに渋みが前に出てきます。

どう考えてもストレートティー向きだとは思いますが、一応ミルクティーにもしてみましょう。牛乳の量は5mlずつです。

TEAPOND アウルブレンド ミルクティー

抽出が短いと、ミルクを加えることで渋みが消え、甘みがいっそう際立ちますが、やはりサラサラとしていて水っぽく感じられます。一方、抽出が長いとミルクを加えた後に嫌な渋みが目立つようになります。いずれにせよ、やはりミルクティーには向かないようです。

最後は水出しです。ホットよりも褐色が薄れ、淡いオレンジ色(または濃いめの黄色)になりました。黄金色にも見えます。

TEAPOND アウルブレンド 水出し

香りは最初に花のような香りも一瞬だけ感じられますが、その後に火入れの香ばしさを強く感じます。味は渋みがほとんどなく、甘さも感じます。ただ、茶の味と火入れの香りが上手く溶け合っておらず、分離している印象もあります。香りが気にならなければゴクゴクと飲めるアイスティーですが、個人的にはホットのほうが好みです。

総評としては、澄み切った味わいのストレートティーが飲みたいときのブレンドといったところでしょうか。ハウスブレンドという位置づけのため、いろいろな飲み方ができるお茶を想像していたのですが、予想以上に個性の強いブレンドなので、意外と好みは分かれそうです。

 

アフタヌーン ブレンド

さて、次の「アフタヌーン ブレンド」は、アッサム、ダージリン、キャンディのオーソドックスタイプの茶葉を使ったブレンドです。アッサムのゴールデンチップも混じっているようで、茶葉のサイズは比較的大きめですが、最初の「アウルブレンド」と比べると、細かい茶葉もいくらか含まれるようです。

TEAPOND アフタヌーンブレンド 茶葉外観

ではまずホットティーから。抽出時間は左から3分、4分、5分です。

TEAPOND アフタヌーンブレンド ホットティー

水色はシンプルな褐色で、やや明度が高いように見えます。香りはアッサムのモルティさが多少目立っていますが、そこまで強くはなく、ダージリンの甘香ばしさも感じられます。また、口に含んでしばらく経つと、微妙に柑橘っぽい風味も出てくる気がします。味は甘みと渋みのバランスがよいのですが、蒸らし時間が長くなると、前舌で感じる渋みが強くなるようです。

次はミルクティーにもしてみましょう。牛乳は10mlずつです。

TEAPOND アフタヌーンブレンド ミルクティー

抽出3分ではさすがに水っぽいので、ミルクティーにするなら4分以上しっかり蒸らしたいところ。ただ、長めに抽出してもコクがさほど強くないので、牛乳たっぷりのミルクティーには向かないかもしれません。

水出しでも飲んでみましょう。これも水色は淡いオレンジ色ですが、「アウルブレンド」よりは濃く見えます。

TEAPOND アフタヌーンブレンド 水出し

香りは「アウルブレンド」と同じく、ダージリン由来と思われる火入れの香ばしさが目立ちますが、戻り香に少しだけモルティさを感じます。味はこれも渋みが控えめで、甘みがメインです。ただ、やはりこれも紅茶の味と火入れの香りが分離している気がします。

以上を踏まえると、ストレートで飲むか、ミルクティーにするかによらず、ホットティー向きの紅茶と言えそうです。香り、甘み、渋み、コクのいずれも突出しておらず、風味のまとまりがよいので、嫌いな人がいないお茶かと思います。ある意味「アウルブレンド」よりこちらのほうがハウスブレンドらしいかもしれません。

なお、公式サイトのブレンダーズノートには、「大きなティーポットでたっぷり紅茶を淹れて、入れっぱなしの茶葉から嫌な渋みが出ないような銘柄」とありますが、自分でもティーポットで試したところ、6~7分で普通にエグくなります(汗)。渋みが苦手な方は、蒸らし時間が過ぎたら別のポットに移し替えたほうがよいでしょう。

 

イングリッシュ ブレックファスト ティー

さて、次の「イングリッシュ ブレックファスト ティー」は、以前別の記事でも簡単にレビューしたことがあります。

teaisbalmforthesoul.hatenablog.com

今回はじっくり味わってみましょう。まずは茶葉の外観です。アッサムとスリランカブレンドだそうで、ここまでの2つと比べるとやや細かくなっています。それでも他のブランドのイングリッシュブレックファストと比べれば大きめかと思います。アッサムのゴールデンチップもたくさん含まれていますね。

TEAPOND イングリッシュブレックファストティー 茶葉外観

それではホットから淹れてみましょう。時間は2分、3分、4分です。

TEAPOND イングリッシュブレックファストティー ホットティー

水色は赤橙色といったところでしょうか。赤みを帯びている感じがします。香りはアッサムのモルティな印象が強めですが、スリランカの爽やかさもある気がします。味は渋み主体でコクもしっかりしています。抽出を2分で止めると甘みも感じられますが、新芽の部分が多いせいか、4分では少しエグくなるようです。ストレートで飲むなら3分が限界かもしれません。

次はミルクティーでも飲んでみましょう。牛乳の量は10mlずつです。

TEAPOND イングリッシュブレックファストティー ミルクティー

抽出時間によらず、コクがあって飲みごたえのあるミルクティーになります。甘みは控えめでほろ苦く感じられる一方、バタークッキーのような風味もあります。英語圏では紅茶の味をbiscuity(ビスケットのような)と表現することがあるそうですが、このミルクティーはまさにその形容詞に相応しい味わいです。

最後は水出しです。鮮やかなオレンジ色になります。

TEAPOND イングリッシュブレックファストティー 水出し

香りに若干のモルティさを感じますが、あまり強くはありません。味は甘く爽やかでゴクゴクと飲めます。

以上を踏まえると、いろいろな飲み方で楽しめますが、基本的にはホットミルクティー向きのブレンドと言えそうです。名前のとおり、朝の眠気覚ましにちょうどよいお茶かと思います。パンやスコーンなどと合わせるのもよさそうです。

 

セレンディピティ

4番目の「セレンディピティ」は、セイロンティースリランカ紅茶)のブレンドです。「セレンディピティSerendipity)」という言葉は、セイロン島の古い呼び名である「セレンディップ」が由来なので、スリランカ紅茶のブレンドにぴったりの名前ですね。

ではまず茶葉から見てみましょう。ここまでの3つと比べると、茶葉がずいぶん細かいですね。スリランカの紅茶は細かめのBOPが多いので、いかにもセイロンティーブレンドという見た目をしています。

TEAPOND セレンディピティ 茶葉外観

ホットティーは2分、3分、4分で淹れました。水色はやや暗めの褐色です。

TEAPOND セレンディピティ ホットティー

花びらや花の蜜のようなほの甘い香りがします。味は渋み主体で、多少の甘みも感じられる気がします。抽出が長くなると、口全体に渋みがまとわりつくようになります。ストレートで飲むなら抽出時間を2分程度に留めるのがよいかもしれません。

次はミルクティーです。牛乳は10mlずつ加えました。

TEAPOND セレンディピティ ミルクティー

牛乳を入れても紅茶らしい渋みは健在で、キリッとしたミルクティーになります。他のミルクティー用のブレンドと比べると、コクがやや控えめなので、舌触りがサラサラとしています。ミルクティーにするなら3分以上は蒸らしたいところです。

水出しでも飲んでみます。ホットティーよりも水色の赤みが際立つようです。

TEAPOND セレンディピティ 水出し

香りはホットとは打って変わってウッディーな印象が強めです。味はクセがない一方、全体的にのっぺりしているとも言えそう。アイスティーにするなら急冷式のほうがよいかもしれません。

というわけで、基本的にはホットで淹れて紅茶らしい渋みを楽しむブレンドと言えそうです。「紅茶は渋みを楽しむものだ」と思っている人(僕もそうです)におすすめ。逆に渋みが苦手な方は素直に別のブレンドを選びましょう。

 

ダージリン スノードロップ

ここからは後半戦に入ります。5つ目の「ダージリン スノードロップ」はファーストフラッシュのダージリンだけを使ったブレンドです。茶葉の見た目からして他と違いますね。緑色が中心で、典型的な春摘みダージリンの外観です。

TEAPOND ダージリンスノードロップ 茶葉外観

ホットティーの抽出時間は3分、4分、5分としました。水色は綺麗なレモンイエローになります。

TEAPOND ダージリンスノードロップ ホットティー

香りは新緑のような、ティーカードに描かれているスズランのような、いずれにせよ爽やかな香りがメインですが、釜炒り緑茶を彷彿とさせる豆っぽい香りも微妙に感じます。味は甘みもしっかりしていますが、それ以上に渋みが強いようです。今回は茶器を予熱したうえで茶葉を抽出したので、渋みが強く出すぎたのかもしれません。春摘みダージリンのセオリーどおり、このブレンドは少し冷ましたお湯を使ったほうがよさそうです*1

どう考えてもミルクティーには向かないと思いますが、念のため牛乳も入れて飲んでみます。牛乳の量は5mlずつです。

TEAPOND ダージリンスノードロップ ミルクティー

牛乳の量を少なめにしたおかげか、渋みがほどよく消えて飲みやすくはなりましたが、春摘みダージリンらしい香りのよさも消えてしまいました。レモンイエローの綺麗な水色もなくなってしまいますし、やはりミルクティーにするのはもったいない気がします。

水出しでも飲みましょう。水色はホットティーより黄金色に近づいたように見えます。

TEAPOND ダージリンスノードロップ 水出し

香りや味はホットティーと大きくは変わりませんが、柑橘のような風味が際立つように感じます。

以上を踏まえると、紛れもないダージリンファーストフラッシュのみのブレンドではありますが、たとえば紅茶ビギナーの人に「春摘みダージリンってこういうお茶だよ」と勧めるには、ちょっと個性的なようにも感じました。春摘みダージリンには、果実のような香りの茶葉もあれば、花やハーブを思わせる香りの茶葉もあり、バリエーションが多彩なのですが、このブレンドはフローラル系やハーバル系の風味にかなり寄っている気がします。ファーストフラッシュが好きな人の間でも好みが分かれそうなお茶だと思います。

 

ダージリン セブンバレー

ダージリン スノードロップ」が春摘みダージリンのみのブレンドなのに対し、次の「ダージリン セブンバレー」は夏摘みの茶葉のみのブレンドです。茶葉の外観は典型的なセカンドフラッシュの形や色をしています。

TEAPOND ダージリンセブンバレー 茶葉外観

まずはホットティーで。抽出時間は3分、4分、5分です。

TEAPOND ダージリンセブンバレー ホットティー

水色は琥珀のような明るい褐色。香りは熟した果実のような印象と火入れの香ばしさが同時に感じられます。味は甘みがメインで、さすがに5分蒸らすと渋みが気になりますが、3~4分程度ならそこまでではありません。渋みが苦手な人にとっては飲みやすい一方、ボディが弱いので、夏摘みダージリンならではのしっかりした味わいを求める人には微妙かも。

ミルクティー向きのセカンドフラッシュではなさそうですが、念のためこれも牛乳を加えて飲んでみます。牛乳の量は5mlずつです。

TEAPOND ダージリンセブンバレー ミルクティー

紅茶自体のコクがないので、やはり牛乳を入れると水っぽくなります。かといって牛乳の量を増やすと紅茶の風味が負けるので、やはりミルクティーには向かないと思います。

水出しでも飲んでみましょう。水色はオレンジ色になりました。

TEAPOND ダージリンセブンバレー 水出し

ダージリンを使った他のブレンドと同じように、これも火入れの甘香ばしさが悪目立ちしています。味はほろ苦い甘みもありますが、全体的にちょっと薄い気がします。火入れで甘い香りは出ているものの、茶葉自体の味や香りの成分はあまり多くないのかなぁと思われます。

以上を踏まえると、甘く香ばしい香りとマイルドな味わいが特徴のブレンドということになるでしょうか。マスカテルフレーバーとまではいかないものの、セカンドフラッシュの特徴はよく表現されていると思います。ただ、味や香りの特徴が「アウルブレンド」と若干かぶっているのが気になります。もちろんきちんと飲み比べれば違いはわかるのですが、もう少し差別化ができるとよいのかもしれません。

 

ミルクティーブレンド

最後の「ミルクティーブレンド」は、CTCの茶葉だけを使ったブレンドです(そういえばここまでCTCの茶葉を使ったブレンドがありませんでしたね……)。茶葉の産地は「インド」としか書かれていませんが、おそらくアッサムがメインでしょう。

TEAPOND ミルクティーブレンド 茶葉外観

ホットティーの抽出時間は2分、3分、4分です。チーク材のようなダークブラウンの水色になります。

TEAPOND ミルクティーブレンド ホットティー

香りは土っぽさと芋っぽさが共存しています。茶殻からは夏野菜のような香りもしました。味は渋み、甘み、コクがいずれもしっかりしていて、蒸らし時間が長くなると渋みも強くなる一方、コクはあまり深くならないように感じました。僕は3分くらいまでならストレートでも普通に飲めてしまいますが、やはり素直にミルクティーにしたほうがよいでしょう。

というわけで、牛乳を15mlずつ加えて飲んでみます。

TEAPOND ミルクティーブレンド ミルクティー

抽出時間が2分だけだと、さすがに少し水っぽい気がします。ミルクティーにするなら3分以上、牛乳を多めに入れるなら4分は蒸らしたいところです。

最後は水出しです。鮮やかな紅色の水色になりました。

TEAPOND ミルクティーブレンド 水出し

香りはホットティーのときより芋っぽさが強くなります。味は渋みが抑えられ、モルティな甘さが際立ちます。味がしっかりしていて飲みごたえもありますね。

というわけで、名前のとおり基本的にはミルクティーですが、水出しにするのもありと言えばあり。オーソドックスなCTCなので、ミルクティーが好きな人にとっては、今回飲み比べた中では第一候補になるでしょう。

 

まとめ

というわけで、TEAPONDのブレンドティー7種を飲み比べてみました。個人的に好みだったのは、やはり「イングリッシュ ブレックファスト ティー」でした。他のブランドのイングリッシュブレックファストと比べても、TEAPONDはかなり好みなので、今後もちょくちょく買うことになりそうです。

ちなみに、飲み比べた後に気づいたのですが、今回のラインナップの中にはニルギリやケニアの茶葉を使ったブレンドがひとつもないんですよね……。ひとつひとつのブレンドが良くも悪くも個性的だったのは、このあたりに原因がありそうな気がします。TEAPONDはクオリティシーズンのニルギリの取り扱いが多いし、ニルギリを使ったブレンドがあってもよさそうなんだけどなぁ……。

*1:茶器を温めずに常温のままで使うか、お湯の温度を90℃くらいにするとよいと思います。ただし、両方やると温度が下がりすぎて、香りが立ちにくくなります。