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インドネシアのジャワ紅茶とは? 産地別紅茶の研究(16)

紅茶の生産量が多い国といえば、インド、ケニアスリランカなどが思い浮かびますが、実はこれらの国に次ぐレベルで生産量の多い国がインドネシアです。その中でも紅茶の一大産地として知られているのがジャワ島。あの大塚食品の「ジャワティストレート」も、その名のとおりジャワ島の紅茶を原料として使っています。今回はそんなジャワ紅茶の特徴やフードペアリングについて見ていきたいと思います。

 

インドネシア紅茶の歴史

インドネシアの紅茶について取り上げるのは今回が初めてなので、まずはインドネシアの紅茶産業の歴史や現状について簡単に触れておきましょう。ちょうどインドネシアの教育文化研究技術省のブログにインドネシア紅茶の歴史をまとめた記事(下記リンク)があったので、その内容をかいつまんでご紹介します。

jalurrempah.kemdikbud.go.id

この記事によると、インドネシアに初めてチャノキが持ち込まれたのは1684年アンドレアス・クレイエルというドイツの植物学者*1が観葉植物としてチャノキの種を中国から持ち込んだそうです。しかし、栽培はあまり上手くいかなかったようで、最終的に栽培に成功したのは1826年のことでした。この年にジャワ島のボゴール植物園で中国種の栽培に成功した後、各地でチャノキの栽培が盛んに行われるようになり、特にジャワ島ではプランテーションの建設が進んでいきました。インドのアッサム地方で紅茶の生産が1839年に始まったことを踏まえると、インドネシアの紅茶産業はかなり早い時期に産声を上げたと言えるでしょう。

しかし、せっかくスタートした紅茶の生産が順調に拡大していったわけではありません。日本紅茶協会が編集した『紅茶の大事典』という本によると、「茶産業として確立するのは1890年以降のこと」で、しかも「第二次世界大戦や1949年の独立に伴う混乱期に茶畑は荒廃」してしまったそうです*2(p.155)。最終的にインドネシアの紅茶産業が復興を遂げたのは1960年代以降とのことで、それから現在までまだ60年ほどしか経っていないということになります。

 

インドネシアの紅茶産業の現状

とはいえ、その60年で生産量が大きく伸びたことで、今やインドネシアは世界でも有数のお茶の生産国となっています。国際茶業委員会(International Tea Committee)の統計(PDFファイル)によると、インドネシアの茶の生産量は2020年時点で126,000トン*3に達しています。これは中国、インド、ケニア、トルコ、スリランカベトナムに次ぐ世界第7位の生産量です*4。また、2020年の生産量のうち28,700トンが緑茶だったので、逆算すると紅茶単体の生産量は97,000トン前後と考えられます*5。ちなみに、日本の生産量が69,800トンだったので、インドネシア紅茶だけで日本より茶の生産量が多いということになります。

さらに、製造方法別の生産量にも目を向けると、オーソドックス製法の茶葉が約88,000トン、CTC製法の茶葉が約9,000トンとのことで、インドネシア紅茶の大部分はオーソドックスタイプの茶葉ということになります。その中でも主流となっているのは、次の写真のようなBOPの茶葉です。

葉っぱの形をしたガラスのお皿に細かい茶葉が広げられています。

こちらの茶葉はジャワティー・ジャパンという札幌の会社から取り寄せました。

テイスティングカップで淹れた紅茶と茶殻の横に、ガラスのお皿に乗った茶葉と袋が写っています。

OPタイプの茶葉も作られてはいますが、割合としては少なめ。ちなみにこちらはブキットサリという茶園の茶葉です。

こうしたインドネシア紅茶の一大産地となっているのが、今回取り上げるジャワ島です。インドネシア総合研究所という企業のブログによると、「茶葉の総生産量も茶畑の面積も(中略)インドネシア全体の80%以上をジャワ島が占めている」と言います。上で説明したように、プランテーションの建設がジャワ島で早くから行われていたことを踏まえると、インドネシア紅茶の大部分がジャワ島で作られているのも当然と言えるかもしれません。

 

ジャワ紅茶の特徴

さて、そんなジャワ紅茶の特徴を一言で表現するとしたら、「青みを帯びた香りとマイルドですっきりした味わい」と言えるでしょう。大塚食品の「ジャワティストレート」を飲んだことのある方であれば、あの味や香りがジャワ紅茶だと思っていただければ、おおむね間違いありません。飲み方に関しては、ある程度のコクがあるのでミルクティーにもできますが、基本的にはストレートですっきりとした味わいを楽しむのがおすすめ。あるいは急冷式のアイスティーにしたり、フルーツティーのベースに使ったりするのもよいでしょう。

「ジャワティストレート」のペットボトルの横にティーカップとティーポットが前後に並んでいます。

自分で淹れたジャワ紅茶と「ジャワティストレート」を飲み比べると、味や香りが似ていることに気づきます。

なお、「ジャワ紅茶はスリランカ紅茶(セイロンティー)に似ている」と言われることもありますが、個人的にはスリランカよりも全体的に味があっさりしていると思います。渋味や苦味、甘味や旨味など、さまざまな味の要素がマイルドなので、ミルクや砂糖を加えなくてもゴクゴクと飲みやすいのがジャワ紅茶の魅力です。

 

おすすめのフードペアリング

全体的に味が淡白で、食べ物の味を邪魔しないジャワ紅茶は、食事をしながら飲むお茶にぴったり。大塚食品が「ジャワティストレート」をテーブルドリンクとして売り出しているのも納得と言えるでしょう。適度な渋味と青みを帯びた香りが口の中をリセットしてくれるので、味の濃い食べ物や脂物とのペアリングには特に向いています。

正面に大きくハンバーグ丼があり、その後ろにティーポットと「ねこぺん日和」のマグカップが写っています。

ハンバーグなどの肉料理との相性は抜群です。

もちろん甘い物と合わせるのもOK。ジャワ紅茶はどんな食べ物とも合わせられる万能選手と言えるでしょう。

丸いお皿の上に乗ったメロンパンの後ろに、紅茶が入ったティーカップと茶葉の個包装のパッケージがあります。

バターが香るメロンパンともよく合います。

 

*1:ちなみに、Wikipediaによると、1682年から1686年まで日本の出島でオランダ商館長を務めていたそうです。もしこれが正しいとすれば、クレイエルがインドネシアにチャノキを持ち込んだのは、商館長としての任期中ということになります。

*2:二次大戦中のインドネシアは1942年から日本の占領下にあったので、その影響もあったと思われます。

*3:紅茶だけでなく、緑茶や烏龍茶など他の茶類も含めた数字です。ただし、近年は生産量が減少傾向にあり、2016年以降は一貫して減り続けています。

*4:「世界第4位」とするサイトが多いようですが、インドネシアの上に中国、インド、ケニアスリランカが位置しているのは何年も変わっていません。こうしたサイトは統計などで裏を取っていないものと思われます。

*5:インドネシアでは烏龍茶や白茶なども作られているので、緑茶を除いた残りの97,300トンがすべて紅茶というわけではありません。ただ、紅茶と緑茶以外の生産量は微々たるものと思われます。