ただの紅茶好きが紅茶について色々語ったり勉強したりするブログ

ただの紅茶好きが、紅茶について知っていることをお話ししたり、紅茶の本やレッスンで勉強したりするブログです。

ルイボスは紅茶ではありません

カフェインの摂取を控えたいときでも気軽に楽しめる飲料として、ルイボスがすっかり定着してきましたね。僕もほとんど毎日ルイボスを飲んでおり、下手をすると紅茶より消費量が多いほどです(笑)。

しかし、ルイボスの人気が高まるにつれ、「ルイボスは紅茶の一種である」という誤解が広まってきているようです。一個人がそう勘違いしてしまうのは仕方ないかもしれませんが、大手のウェブメディアやSNSインフルエンサーが吹聴してしまうのは、褒められたことではありません。

そもそも、紅茶の原料となるチャノキ(学名「カメリアシネンシス」)がツバキ科の常緑樹なのに対し、ルイボスは「アスパラサスリネアリス」という学名を持つマメ科の植物であり、分類が大きく異なります。しかも、チャノキがさまざまな国や地域で栽培されているのに対し、ルイボスは南アフリカのセダルバーグ山脈周辺の高原地帯にしか生育していません。つまりルイボスと紅茶はまったくの別物なのです。

茶葉の見た目も明らかに違います。左がルイボス、右がダージリンです。

ではどうしてルイボスは紅茶の一種であると誤解されてしまうのでしょうか? それはルイボスと紅茶に多くの共通点があるからではないかと思います。

1つ目は水色(すいしょく)です。皆さんよくご存じのとおり、スーパーやコンビニでよく売られているペットボトルのルイボスティーは綺麗な赤色をしています。そのせいで「赤いお茶だから紅茶だ」と勘違いする人が多いのでしょう。しかも、紅茶の中でもケニアマラウイ、ジャワなどは赤い水色をしており、ますますルイボスとの区別が付きづらくなります。

左がルイボスで、右は大塚食品の「ジャワティストレート」なのですが、色の濃さが少し違うだけで、ほとんど区別がつきません。

また、製造工程にも共通点があります。実はスーパーやコンビニでよく売られているルイボスは、厳密に言えば「レッドルイボス」と呼ばれるものなのですが、レッドルイボスの製造工程には、紅茶と同じ酸化発酵のプロセスが含まれています。この酸化発酵のおかげで紅茶とよく似た赤い水色が生み出されるのです。

しかも、紅茶に対して緑茶が存在するのと同様に、レッドルイボスにも対になる存在としてグリーンルイボスというお茶があります。「ルイボスの緑茶」とも呼べるグリーンルイボスは、レッドルイボスよりも風味が穏やかなので、「ルイボスは苦手なんだけど……」と思っている人にも飲みやすく感じられるかもしれません。まあ、僕はレッドルイボスのほうが好きですけど。

茶葉が同じでも、酸化発酵の度合いで色や風味が大きく変わるという点も、ルイボスとチャノキの共通点です。

さらに、フレーバードティーのベースとして使われるところも、ルイボスと紅茶の共通点と言えるでしょう。このブログでよく取り上げるルピシアをはじめ、紅茶専門店の中にはルイボスのフレーバードティーに力を入れているところも少なくありません。ルイボスは風味のクセが強くないので、香りを着けて楽しむのにも向いているんですね。

秋冬限定で販売されるルピシアの人気商品「いもくりかぼ茶」もレッドルイボスをベースにしたフレーバードティーです。

このようにルイボスと紅茶には多くの共通点があるわけですが、とはいえそもそもの植物が異なる以上、別物として区別しなければなりません。ルイボスを紅茶の一種と見なしている人を今後見かけたときは、「この人、本当はお茶に詳しくないんだなぁ……」と生暖かく見てあげようと思います(笑)。