ただの紅茶好きが紅茶について色々語ったり勉強したりするブログ

ただの紅茶好きが、紅茶について知っていることをお話ししたり、紅茶の本やレッスンで勉強したりするブログです。

Afternoon Teaの定番紅茶を飲み比べてみた

このブログでもすっかりお馴染みになってきた飲み比べシリーズ。今回は株式会社サザビーリーグが展開するブランド「Afternoon Tea*1の定番紅茶9種を飲み比べます。なお、いつものことですが、自分が感じたままの感想をずけずけと書いているので、あらかじめご了承ください。

紅茶の缶が4つ、箱が1つ横に並んでいます。箱が中央にあり、その両脇に缶が2つずつあります。

※ブランド名が長いので、この後は「Afternoon Tea」ではなく「AT」と縮めて表記します。

 

今回の飲み比べのルール

本題に入る前に、まずは今回の飲み比べのルールを確認しておきましょう。

ATの紅茶の缶や箱を開けると、中には定番商品のリストが入っており、おすすめの淹れ方やペアリングなどが書かれています。

紅茶缶の中に入っているティーリストです。商品名とそれぞれの説明、おすすめの淹れ方やペアリングなどの情報が書かれています。

今回はこれに従って、ティーバッグ1個(茶葉3g)を熱湯200mlで抽出します。なお、いつも使っているテイスティングカップは容量が150mlしかないので、今回はマグカップを使用します。

また、ホットティーだけでなく、水出しでも飲んでみます。抽出条件はティーバッグ1個に対し、水は硬度約30mg/Lのミネラルウォーター250ml、時間は一晩(約8時間)です*2

 

さっそく飲み比べ

アフタヌーンティーブレンド

それではいよいよ本題に入りましょう。最初はATの看板ブレンドからです。アッサムとニルギリのブレンドとのことで、茶葉は多少カットされてはいるものの、全体的にはやや大きめに見えます。

葉っぱの形をしたガラスの皿に、「アフタヌーンティーブレンド」の茶葉があけられています。

まずはホットティーをストレートで飲んでみましょう。抽出時間は3分です。茶杯に注いだお茶の水色(すいしょく)はオレンジ寄りの褐色、あるいは琥珀色といったところでしょうか。

茶杯に注いだ「アフタヌーンティーブレンド」です。

口に含んだ瞬間、アッサムのモルティな香りを感じ、それから少し経つと花のような香りに変わります。味は適度なコクと渋味がある一方、甘味はやや控えめ。最後に飲み込んでから、またモルティな戻りが戻ってきます。

これに牛乳を加えるとどうなるのでしょうか?

茶杯に注いだ「アフタヌーンティーブレンド」のミルクティーです。

ミルクティーにすると、アッサムの甘い香りがさらに際立ちます。コクがありながら重すぎないので、誰にでも飲みやすいと思います。ただ、個人的にはもう少しコクが欲しいところ。試しに抽出時間を1分伸ばして淹れ直したところ、飲みごたえが増したので、ミルクティーにする場合は4分以上蒸らすのがおすすめです。

水出しでも飲んでみましょう。水色が淡いのは当然ですが、ホットよりもオレンジの色味がわかりやすい気がします(写真ではそう見えないかもしれませんが……)。

茶杯に注いだ「アフタヌーンティーブレンド」の水出しアイスティーです。

味が淡くなるぶん、香りの華やかさが際立つようになります。水分補給にゴクゴクと飲むのにはちょうどよさそうですが、これ単体を味わうにはちょっと物足りないかも……。

以上を踏まえると、ストレートかミルクティーかによらず、ホットティー向きの紅茶ではないかと思います。アッサムのコクが適度にありながら、個性が強すぎることもないので、毎日飲んでも飽きの来ない(悪く言えば突出した個性のない無難な)紅茶と言えるでしょう。

 

ファイブオクロックティー

2つ目の「ファイブオクロックティー」は、その名のとおり「夕方にほっと一息つきたいときにおすすめの渋みを抑えたブレンド」(公式オンラインストアから引用)だそうです。使っている茶葉はダージリンセカンドフラッシュとキームン、そしてジャスミン茶とのこと。ティーバッグを開くと、かすかに花の香りがするほか、緑茶もちらほら混じっていますね。

葉っぱの形をしたガラスの皿に、「ファイブオクロックティー」の茶葉があけられています。

ホットティーの抽出時間は4分がおすすめだそうです。抽出すると、水色はやや濃いめの褐色になります。ミルクチョコレートのような色とでも言えばよいでしょうか。

茶杯に注いだ「ファイブオクロックティー」です。

少量とはいえジャスミン茶が含まれているせいか、香りはジャスミンの印象が強め。味もジャスミン茶(正確にはベースの緑茶)の渋味が目立ちます。冷めてくると、ダージリンの味やキームンの香りもわかるようになりますが、やはり最後までジャスミン茶の主張が強いですね。

次はミルクティーでも飲んでみましょう。

茶杯に注いだ「ファイブオクロックティー」のミルクティーです。

渋味が消え、まろやかな口当たりになり、甘味が引き立ちます。その一方でジャスミン茶の苦味と香りは残るので、全体的な味のバランスが悪い気がします。これはミルクティーにしないほうが正解でしょう。

水出しでも飲んでみます。水色はきれいな黄金色になりました。

茶杯に注いだ「ファイブオクロックティー」の水出しアイスティーです。

普通は水出しにすると味わいがまろやかになりますが、このお茶は水出しでもシャープな味になります。ジャスミン茶の主張の強さも相変わらずです。

あくまで推測ですが、原料に使われているダージリンやキームンの茶葉に甘味や旨味の成分が少ないのでしょう。ジャスミン茶が好きな方なら問題なく飲めると思いますが、苦手な方には厳しいかもしれません。また、冒頭に挙げた「渋みを抑えたブレンド」という商品説明は完全な誤りですね……。ダージリンとキームンだけならそうかもしれませんが、ジャスミン茶がすべてを台無しにしています。どうして紅茶だけでブレンドを作らなかったのでしょうか……?( ・ั﹏・ั)

 

ダージリン

気を取り直して、ここからは産地別の紅茶を2つ飲んでいきます。まずはダージリンです。茶葉を見ると、全体的に色がくすんでいるように見えます。火入れが強めなのでしょうか。

葉っぱの形をしたガラスの皿に、「ダージリン」の茶葉があけられています。

抽出時間の目安は3~4分とのことなので、今回は間を取って3分半としました。水色はオレンジ寄りの褐色で、ややくすみ感があります。

茶杯に注いだ「ダージリン」です。

味は渋味や苦味が強く、甘味はあまり感じられません。白ワインのような香りも感じますが、それ以上に火入れの香ばしさが鼻をつきます。正直、原料の茶葉の質があまり良くないようですね……。

この香りがミルクティーにするとどう変わるのか、試してみましょう。

茶杯に注いだ「ダージリン」のミルクティーです。

牛乳を加えると、香りの不自然さが消え、むしろ飲みやすくなりました。とはいえ、やや水っぽいのは否めません。ミルクティーにしたい場合は4分以上蒸らしたほうがよさそうです。

最後は水出しです。水色は淡い褐色になります。

茶杯に注いだ「ダージリン」の水出しアイスティーです。

多少のフルーティーさは感じられるようになりましたが、甘味が増したわけではなく、全体的に淡白な味です。それでいて火入れの香りだけは残るので、味や香りの調和が取れていない気がします。

商品説明によると、「セカンドフラッシュ・シーズンに摘み取られた茶葉のみを使用した」そうですが、思わず「本当かなぁ……?」と疑ってしまいます。クオリティシーズン以外の茶葉も混ざっているか、セカンドフラッシュでもかなり質の低い茶葉を使っているのかもしれません。

 

アッサム

もうひとつの産地別紅茶はアッサムです。ダージリンと同じく、インド北東部の産地ですね。茶葉は典型的なCTCタイプです。

葉っぱの形をしたガラスの皿に、「アッサム」の茶葉があけられています。

3分抽出すると、水色は濃い褐色になりました。他の商品と比べても、ひときわ濃いですね。

茶杯に注いだ「アッサム」です。

飲んでみると、甘味も渋味もコクもしっかりしていて、花のような香りもします。よくあるCTCのアッサムといった印象です。渋味が強いとはいえ、ストレートでも飲めなくはありませんが、これはどう考えてもミルクティー向きでしょう。

というわけで、期待しながら牛乳を加えてみます。

茶杯に注いだ「アッサム」のミルクティーです。

案の定よく合いますが、CTCの紅茶をミルクティーにしたわりにはちょっと水っぽい気がします。牛乳を加えて飲むのであれば、ティーバッグ1個にお湯200mlは多すぎるかもしれません。

CTCのアッサムを水出しにする人は少ないと思いますが、念のため試しておきましょう。

茶杯に注いだ「アッサム」の水出しアイスティーです。

水色は濃い黄金色で、土や草を思わせる香りがします。渋味は少ないものの、多少の収斂味(しゅうれんみ)があり、飲みごたえを感じます。しっかりした味わいのアイスティーを手軽に作りたいときは案外ありかもしれません。

同じ産地別紅茶の「ダージリン」と比べると、こちらのほうが商品としての完成度は高いようです。ただ、やはりそもそも茶葉の質はあまり良くない気がします。

 

アールグレイ

ここからはフレーバードティーを3種類飲んでいきます。まずは定番のアールグレイです。ベースの茶葉はドアーズとニルギリのブレンドだそうで、コクのある味わいをニルギリで軽くしたものと予想されます。

葉っぱの形をしたガラスの皿に、「アールグレイ」の茶葉があけられています。

3分抽出のホットティーはこのようになりました。水色は暗めの褐色ですが、赤みが強いのか、透き通った印象があります。

茶杯に注いだ「アールグレイ」です。

口に含むと、強い渋味とベルガモットの香りを同時に感じます。柑橘系の香りのせいか、酸味や苦味があるようにも感じられます。コクがあり、飲みごたえがしっかりしている一方、渋味が苦手な人には飲みにくいかもしれません。

コクがあるということはミルクティーにも向いているのでは? というわけで牛乳を加えて飲んでみましょう。

茶杯に注いだ「アールグレイ」のミルクティーです。

予想どおり、牛乳を加えても紅茶の味が残ります。ただ、これもお湯は200mlより減らしたほうがよさそうです。

水出しでも飲んでみます。

茶杯に注いだ「アールグレイ」の水出しアイスティーです。

ホットティーにあったエグみが和らぐので、飲みやすくはなりますが、ベルガモットの香料が思ったより強めかもしれません。また、水出しにしても甘味は感じにくい気がします。

以上を踏まえると、ストレートよりミルクティーに向いているアールグレイではないかと思います。アールグレイでミルクティーを作るのが好きであれば、選択肢に加えてもよいかもしれません。

 

アップル

次のフレーバーはりんごの香りです。ベースの茶葉はニルギリを使っています。

葉っぱの形をしたガラスの皿に、「アップル」の茶葉があけられています。

熱湯で3分抽出した水色はこんな感じです。やや濃いめの褐色といったところでしょうか。

茶杯に注いだ「アップル」です。

酸味のある青りんごのような香りがします。味は基本的にマイルドですが、どこかツンツンした印象も受けます。りんごの香りのせいでしょうか?

ミルクティーには向いていない気もしますが、一応試してみましょう。

茶杯に注いだ「アップル」のミルクティーです。

やはりミルクティーにするには微妙ですね……。コクがなさすぎて水っぽくなります。素直にストレートで飲んだほうがよいでしょう。

では、同じストレートでも、水出しだとどうなるでしょうか?

茶杯に注いだ「アップル」の水出しアイスティーです。

りんごの香りはそのままに、さらに渋味が取れるので、口の中で引っかかることなくゴクゴクと飲めます。良く言えば飲みやすい反面、悪く言うとアイスティーとしてはちょっと物足りないかもしれません。

というわけで、基本的にはホットのストレートティーで飲むのがおすすめです。ティーカクテルなどのアレンジに使うのもよさそうですね。

 

ストロベリー

3つ目のフレーバーはイチゴの香りです。ベースの茶葉はダージリン、キームン、ウバのブレンドとのこと。

葉っぱの形をしたガラスの皿に、「ストロベリー」の茶葉があけられています。

これもホットの抽出時間は3分にしました。水色はややくすんだ感じの褐色です。

茶杯に注いだ「ストロベリー」です。

マイルドで飲みやすい紅茶の味わいに、いちごの香りがマッチしていて、フレーバードティーとして悪くないと思います。香りがあまりきつすぎないので、誰にでも飲みやすいのではないでしょうか。

ただ、味わいがマイルドということは、ミルクティー向きではないとも言えそうです。試してみましょう。

茶杯に注いだ「ストロベリー」のミルクティーです。

思ったとおり、かなり水っぽくなりますね。しかもキームンと思しきスモーキーな香りが悪目立ちします。茶葉を増やすか、抽出を長くすれば味の薄さは解決できるかもしれませんが、このスモーキーさだけはどうにもならないでしょう。ミルクティーにはしないほうがよさそうです。

最後に水出しでも飲んでみます。

茶杯に注いだ「ストロベリー」の水出しアイスティーです。

多少の収斂味を感じるとはいえ、ほとんどただの香料の水溶液ですね。ベースの茶葉に含まれている成分が少ないのでしょう。

そんなわけで、ひとつ前の「アップル」と同じく、これもホットのストレートティー向きではないかと思います。ただ、スモーキーな香りもあるので、アレンジティーのベースとしては微妙かもしれません。

 

ディカフェ アフタヌーンティー

残る2つはデカフェの紅茶です。まずは定番ブレンドデカフェから飲んでみましょう。茶葉の見た目が通常のブレンドとまったく違うようですが、それもそのはず。実はこちらの茶葉はスリランカ産がベースになっています。

葉っぱの形をしたガラスの皿に、「ディカフェアフタヌーンティー」の茶葉があけられています。

熱湯で3分半抽出して、まずはストレートのまま飲んでみましょう。水色はカフェインありのブレンドより少し淡く見えます。

茶杯に注いだ「ディカフェアフタヌーンティー」です。

口に含むと、草のような香りと酸味が広がります。デカフェなので苦味はないものの、多少の渋味は感じます。

次はミルクティーにしてみます。

茶杯に注いだ「ディカフェアフタヌーンティー」のミルクティーです。

牛乳を加えても不快な酸味が残ります。しかもコクがないのでかなり水っぽいですね。これは茶葉の量や蒸らし時間を変えてもどうにもならなそうです。

気を取り直して、水出しアイスティーも飲んでみます。

茶杯に注いだ「ディカフェアフタヌーンティー」の水出しアイスティーです。

ホットのときの草のような香りはそのままに、酸味や渋味が薄くなります。口当たりがソフトなので、夏場の水分補給にもよさそうです。

以上を踏まえると、カフェインありの「アフタヌーンティーブレンド」とはまったくの別物と言えるでしょう。そもそもベースの茶葉の産地が違うので当然と言えば当然ですが、この商品名はミスリードと言わざるを得ないような……( ・ั﹏・ั)

 

ディカフェ アールグレイ

最後はデカフェアールグレイです。これもベースの茶葉はスリランカ産だそうですが、ひとつ前の「ディカフェ アフタヌーンティー」と茶葉の見た目や色が違いますね。それにしても、香料の香りがきつい……。

葉っぱの形をしたガラスの皿に、「ディカフェ アールグレイ」の茶葉があけられています。

抽出時間は3分にしました。ホットティーの水色は暗めの褐色で、ややくすんでいるようにも見えます。

茶杯に注いだ「ディカフェ アールグレイ」です。

味は「ディカフェ アフタヌーンティー」以上に酸味が強烈です。ベルガモットの香りのせいで、なおさら酸っぱく感じます。飲み続けるのが躊躇われるほど不快な味です。よほどのアールグレイ好きでない限り、これを美味しく飲むのは難しいのではないかと思います……。

この不快な酸味は牛乳を加えれば消えるのでしょうか?

茶杯に注いだ「ディカフェ アールグレイ」のミルクティーです。

よかった、酸味が和らぎました(笑)。とはいえ、あくまで「飲めなくはない」というレベルです。デカフェにこだわらないのであれば、カフェインありの「アールグレイ」でミルクティーにしたほうが満足できそう。

最後は水出しです。

茶杯に注いだ「ディカフェ アールグレイ」の水出しアイスティーです。

ミルクティーよりも酸味がさらに和らいで、かなり飲みやすくなりました。ベルガモットの香りも大人しくなりますね。

というわけで、個人的には水出しアイスティーにするのがおすすめです。カフェインありの茶葉がミルクティー向きだったことを踏まえると、同じアールグレイでも正反対ですね。

 

飲み比べた感想

全9種類のお茶を飲み終えたところで、最後に今回の感想を書いておきます。

率直に言ってしまうと、どの商品も値段のわりにあまり質が良くない(有り体に言えばコスパが悪い)ように感じます。他のブランドや専門店は似たような値段でもっと質の良い紅茶を販売していますし、スーパーやコンビニに行けば、同じくらいの品質でもっと安い紅茶が買えるはずです。

もちろんATのティールームなどで実際に飲んだことがあり、味や香りが気に入っているのであれば、自宅用に購入してもよいと思います。また、ATは期間限定のフレーバーも販売しているので、気になる紅茶があったら検討するのもありでしょう。しかし、そうでなければわざわざ買うメリットは薄いんじゃないかなぁ……。せっかく全国展開しているブランドですし、もう少し頑張ってもらいたいと思います。

*1:厳密に言うと、「Afternoon Tea LIVING」など生活雑貨のブランドはサザビーリーグが運営していますが、「Afternoon Tea TEAROOM」などの飲食店舗はアイビーカンパニーという会社が運営しています。この会社は今年(2024年)4月にサザビーリーグからの分社化で設立されています。

*2:水出しの場合、茶葉と水の比率は1:100が目安なので、最初は水の量を300mlにしたのですが、これでは味が薄くなってしまいました。