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紅茶ってどうやって作られているの?――紅茶の製造工程と等級

(最終更新:2023年7月4日)

以前、茶葉の等級について次のように説明しました。 

たとえば、紅茶の種類を指す言葉として「オレンジペコ」なんて聞いたことはありませんか? これは茶葉の等級、つまり大きさや形を表しています。

茶葉は摘んでから発酵、乾燥させるまでの間に、一つひとつの大きさや形にどうしても差が生じます。そこで、紅茶の味に予期せぬ影響が出ないよう、等級を揃えているのです。オレンジペコOrange Pekoe:OP)は等級の中でも、茶葉の形がそのまま残っている大きなものを指します。

このとおり、紅茶の等級(grade)とは、茶葉の形状や大きさのことを指すものであり、品質の善し悪しや稀少さのことではありません。その等級にも、上で挙げたオレンジペコOrange Pekoe: OP)のほかに、以下のような分類があります。 

これ以外にも、実際には非常に細かい分類があります(リンク先は英語のWikipedia)が、今回はいったん置いておくことにして、ではどうして茶葉の形や大きさに差が生まれるのでしょうか? それは紅茶の製造工程を見てみると分かります。そこで今回も日本紅茶協会のサイトを参考に、オーソドックスな紅茶の製造工程を追ってみましょう。

 
大まかに言うと、紅茶は次の工程を辿って製造されます。 

摘採(てきさい、plucking)

萎凋(いちょう、withering)

揉捻(じゅうねん、rolling)

発酵(fermentation*1

乾燥(firing)

区分(grading)

配合(blending)

最初の三つはあまり見慣れないかもしれませんが、要は「茶摘み」「陰干し」「揉んで捻ること」です。人によっては漢字より英語のほうが分かりやすいかもしれませんね。

この中で茶葉の大きさの違いをもたらす最大の要因は揉捻、つまり茶葉を揉んで圧力をかけ、発酵を促す工程です。当たり前ですが、圧力をかければ茶葉は潰れます。そしてその潰れ方は均一ではありません。だから形や大きさに違いが生まれるんですね。

 

さて、茶葉の大きさがまちまちになる原因はこれでわかるとして、ではどうして茶葉を大きさごとに分ける必要があるのでしょうか? 以前の記事でも簡単に触れましたが、もう少し詳しく説明します。

茶葉を摘んでから発酵、乾燥させるまでの間に、茶葉の大きさや形状にはどうしても差が生じます。茶葉に限らずあらゆる物体に当てはまりますが、サイズが小さければ小さいほど、相対的な表面積は大きくなります。そして茶葉の場合、表面積が違えば抽出にかかる時間も変わります。そのため、サイズがバラバラの茶葉が混ざっていると、抽出にかかる時間の判断が難しくなります。お茶を淹れるたびにちょうどよい抽出時間が変わってしまっては売り物になりません。そこで、紅茶の味に予期せぬ影響が出ないよう、等級を揃えているのです。

ちなみに、ブレンドの段階で等級の異なる茶葉を混ぜることはあります。とはいえ、それはあくまで意図的にやっているもので、茶葉の味や香りを安定させるために混ざり具合が均一になるよう調整しているはずです*2。 

このように、茶葉の抽出時間を揃えて商品の質を安定させたり、ブレンドをしやすくしたりするために、等級ごとに茶葉を分けておく必要があるというわけです。

 

では、今回のまとめです。 

紅茶の製造工程には、茶葉に圧力をかけるプロセスが含まれているため、茶葉によって大きさや形(つまり等級)に違いが生まれる。等級がバラバラの茶葉が混ざっていると、抽出時間の予測がつかず、味や香りの質が不安定になるため、等級ごとに分けておく必要がある。

 

最後に、ここまででご紹介したオーソドックスな製法とは別の方法のひとつとして、CTCと呼ばれる製法についてお話しします。

CTC製法では、摘んできた茶葉を専用の機械で潰して(Crush)、引き裂いて(Tear)、丸めて(Curl)製造します。茶葉の大きさも何も関係なく潰して丸めてしまうので、製造にかかる時間が短く済み、大量生産が可能になります。また、成分の抽出も早くなるので、ミルクティー向きの茶葉になることが多いです。 

なお、オーソドックス製法との対比で、CTC製法はアンオーソドックス製法とも呼ばれる場合があります。とはいえ、茶葉の生産量は実はオーソドックス製法よりもCTC製法のほうが多く、世界の紅茶生産量の半分以上がCTC製法で作られています。 

「この茶葉、紅茶ってわりにずいぶん丸くて小さいな……」と感じたら、実はCTC製法で作られたものかもしれません。もしそうなら、ミルクを入れて美味しくなるか、試してみてくださいね。

*1:紅茶の世界では慣用的に「発酵」と呼ばれていますが、厳密に言えば本来の意味での発酵ではありません。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

*2:ただ、製造技術が未熟なメーカーやブランドの場合、茶葉の混ざり具合が均一でなく、ティーバッグごとに味が変わることも実は珍しくなかったりします……。