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ケニア紅茶の特徴とは? 産地別紅茶の研究(11)

(最終更新:2023年6月1日)

これまでの「産地別紅茶の研究」シリーズでは、インドやスリランカの産地しか取り上げてきませんでしたが、主要な産地はほぼ網羅したので、これからは他の地域にも目を向けていきたいと思います。まず今回はアフリカのケニアです。

 

ケニア紅茶の歴史と現在

ケニアで紅茶なんて作ってるの?」と思われるかもしれませんが、実はケニア紅茶の歴史は100年以上前まで遡ることができます。

1903年、G.W.L.ケインという人物によってインドからアッサム種が持ち込まれ、ケニア中部のリムル近郊で紅茶の栽培が始まりました。その後、民間企業による本格的な茶園の経営が1924年に始まりますが、当時は特別な許可がない限り、ケニア人による紅茶の栽培は認められなかったそうです。

ケニアで紅茶の栽培が本格化するのは、1964年にケニア紅茶開発局(Kenya Tea Development Authority:KTDA)が設立*1され、ケニア人による紅茶栽培が奨励されるようになってからのこと。それ以来、わずか半世紀ほどでケニアの紅茶産業は急成長を遂げました。現在、ケニアの紅茶産業はインドに次ぐ世界第2位の生産量と、スリランカを上回る世界トップの輸出量を誇ります。今やケニアは世界でも有数の紅茶生産&輸出国なのです。

「そうは言っても、ケニアの紅茶なんて見たことないけど?」という方がいらっしゃるかもしれませんが、ケニア産の紅茶は身近なところでも簡単に見つけることができます。たとえば、リプトンはケニア西部のケリチョという街に自社経営の茶園を所有しており、「イエローラベル」のブレンドのベースにケニア産の茶葉を使用しています。

www.lipton.jp

また、スーパーなどでよく見かける「ひしわ」というブランドには、ケニア産の茶葉を使っている商品がラインナップにいくつか含まれています。さらに、ファミリーレストランチェーンのココス(COCO'S)のドリンクバーには、ケニア産の紅茶をベースとしたアールグレイがあります。それ以外にもケニアの紅茶はさまざまなメーカーやブランドが扱っているので、気づかないうちに飲んだことがある方も多いはずです。

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アールグレイのベースにケニアの茶葉を使うのはちょっと珍しいかもしれません。

 

産地の特徴

さて、ケニアの紅茶産業がわずか半世紀で急成長を遂げた理由のひとつは、産地の自然環境にあります。ケニアの茶園は標高1,000m以上の高原地帯に分布しており、雨季と乾季は明確に分かれるものの、気温の年較差が小さい環境にあります。そのため、年間を通じて茶葉が常に成長し続けており、一度摘んでも1~2週間ほどで元の状態に戻るそうです。このような産地の環境がケニア紅茶の高い生産性の基盤となっています。

また、茶園が高地に位置しており、茶畑に虫が少ないので、農薬不使用の茶園が多いそうです。いくら輸入前に残留農薬の検査が行われるとはいえ、元々農薬が使われていないのは、消費者である僕たちにとっては嬉しいことですね。ただし、2021年5月のAFP通信の記事によると、ケニアの紅茶産業が「気候変動に伴う気温の上昇、不規則な降雨パターン、虫害などにより壊滅の危機に直面している」とする報告書が発表されたそうです。今後も無農薬栽培が続くかどうかについては注視したほうがよいかもしれません。

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AFP通信の記事から引用したケニアの茶園の写真。高原地帯に広がる広大な茶園の様子が見て取れます。

なお、ケニアの紅茶はほとんどがCTC製法で作られています。オーソドックスタイプの茶葉もないわけではありませんが、非常に希少価値が高いと言えるでしょう。

オーソドックスタイプのケニアの茶葉を入手できる経路は限られています。なお、この茶葉はリーフルダージリンハウスで購入しました。

 

茶葉の特徴

ケニアの紅茶はアッサム系の交配種が多いので、しっかりしたコクのある味わいの茶葉が多く見られます。とはいえ、モルティな風味が特徴のアッサムと比べるとマイルドで若々しい印象があり、ミルクを加えずにストレートで飲める茶葉も少なくありません。特に茶葉のサイズが大きい場合は、抽出のスピードが多少遅くなるので、味も穏やかになる傾向があります。

したがって、「ケニア紅茶は基本的にはミルクティー向きだが、茶葉によってはミルクなしでも美味しく飲める」と考えておけば問題ないでしょう。

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日本ケニア交友会の「ケニア山の紅茶」。等級はPF1(Pekoe Fannings One)と呼ばれるもので、かなり細かめ。ミルクティー向きの茶葉です。

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上のPF1と比べ、こちらの茶葉はやや大きめです。等級はおそらくBP1(Broken Pekoe One)で、ストレートでも楽しめます。

 

フードペアリングについて

マイルドな味でおおむねどんな食べ物とも合うところはスリランカのキャンディと似ていますが、キャンディよりもコクが強いことを踏まえると、味の濃い食べ物のほうがマッチしやすいと思います。

たとえば、食事であれば揚げ物やカレー、ピザやハンバーグなどがぴったりです。また、甘いものであればチョコレートやドライフルーツ、ベイクドチーズケーキなどがおすすめです。どら焼きや羊羹など、小豆を使った和菓子ともよく合います。

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もみじ饅頭や羊羹の甘さをケニア紅茶が引き締めてくれます。

もちろん、コクの強いミルクティー向きの紅茶なので、ビスケットやスコーンなどの焼き菓子との相性も抜群。寒い季節におすすめのペアリングです。

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焼き菓子とケニア紅茶は、定番ながらハズレのない組み合わせ。

 

*1:2000年にはケニア茶業開発機構(Kenya Tea Development Agency)として民営化されましたが、略称が「KTDA」なのは変わりません。なお、設立年を1963年としている資料や文献もありますが、KTDA公式サイトの沿革(Our History)のページでは1964年とされているので、この記事ではそちらに合わせました。