以前、紅茶初心者の方向けに書いた記事で、最初に選ぶのにおすすめの茶葉について、こんな風に説明しました。
これらの茶葉は、なるべくたくさんの人の口に合うように、そしてどんな飲み方でも(つまり砂糖やミルクを入れても入れなくても)美味しく飲めるように、各メーカーの定番商品として作られています。いわばコーヒーで言うところの普通の「ブレンド」に当たるものです。いちばん初めに選ぶ紅茶は、こうした一般的なブレンドティーにするのがおすすめです。
冒頭の「これらの茶葉」とは、日東紅茶やリプトン、トワイニングといった大手ブランドのブレンドティーのことですが、こんな風に書いておきながら、ふとあることに気づきました。
「……そういえば僕、この手のブレンドティーって、あんまり飲んだことなくない…………?」
思い返せば、日東紅茶は最後に買ったのがずいぶん前で、いつのことだったか思い出せません。リプトンはたまに買うことはあっても、最近は買っていませんでした。そしてトワイニングは、ダージリンやイングリッシュブレックファストを飲んだことはあったものの、それ以外はほぼ手つかず……。
少し言い訳をさせていただくと、美味しい紅茶を飲みたいと思う人ほど、好きな紅茶のブランドや専門店が決まっていて、スーパーなどで手軽に買える商品には手を出さないことが多い気がします。それどころか、「日東は美味しくない」「リプトンはまずい」などと毛嫌いする人さえいるほどです。
とはいえ、人に勧めておきながら、自分ではまともに飲んだことがないというのは、褒められたことではありませんよね。そこで今回は、大手ブランド3社を代表する商品を飲み比べてみました。
ラインナップ
まずはそれぞれの特徴を各メーカーのサイトやパッケージで確認しておきましょう。
トワイニング ハウス ブレンド
ハウス ブレンドは、トワイニングがお届けする最もバランスのとれた飲みやすいブレンド。クセのない飲みやすさのなかに、しっかりしたコクと華やかな香りも感じられ、ミルク ティーやアイス ティーにもマッチします。(https://www.twinings-tea.jp/products/houseblend.html)
産地は「ケニア、スリランカ(セイロン)、インド」だそうです。ケニアはともかく、スリランカとインドが具体的にどこなのかはわかりません。
日東紅茶 デイリークラブ
香り高いスリランカのハイグロウンとコクのあるインドのアッサムをいかしてバランスよくブレンドしました。豊かな香りと味わいは、ストレートティーはもちろん、ミルクティーにもおすすめです。(https://www.nittoh-tea.com/products/teabag/dailyclub02.html)
産地は「スリランカ、インド、その他」とのこと。スリランカは「ハイグロウン」とあるので、ディンブラあたりでしょうか。また「その他」がどこなのかも気になります。
ちなみに、受験シーズン真っただ中ということで、いちばん数の少ない10個入りが受験生応援パッケージになっていました。
リプトン イエローラベル
太陽の恵みたっぷりのケニアの自社農園の茶葉中心に使用しています。豊かな味わいと香りが特徴です。(https://www.lipton.jp/yellow_label/leaf/?ad=banner851)
産地は「ケニア、インドネシア、その他」とあります。こちらも「その他」がどこなのか気になりますが、ケニアとインドネシアは渋みが少なくコクの強い茶葉なので、イエローラベルもそういう味なのだろうと推測できます。
なお、こちらのパッケージも期間限定デザインでした。ハローキティとのコラボが可愛いです。
飲み比べ
商品の特徴を確認したところで、実際に淹れて比較していきましょう。なお、抽出の仕方は各商品のパッケージに書かれている方法に準じます。具体的には、
という感じです。
水色
まずは水色(すいしょく)ですが、3つともほとんど変わりませんね……。強いて言えば、リプトンは少し赤みが強く、透明感があるようにも見えます。
香り
抽出液の見た目にさほど大きな差はありませんが、香りや味はかなり違います。まずは香りの違いです。
- トワイニング ハウス ブレンド:果実のような甘く穏やかな香り
- 日東紅茶 デイリークラブ:トップは草木のような香り。後から甘い香りもする
- リプトン イエローラベル:焦がしたリンゴのような、甘く香ばしい香り。やや土っぽさもある。
味(ストレート)
味の違いは次のような感じです。
- トワイニング ハウス ブレンド:最初に強い渋みがあり、後からコクが広がる。最後に心地よい渋みが残る
- 日東紅茶 デイリークラブ:口全体にまとわりつくような渋み。コクは控えめで、キレのある味わい
- リプトン イエローラベル:上顎に残る渋みと、程よいコク。香りから想起されるような甘さは控えめ
ざっくりまとめると、トワイニングとリプトンは甘い香りとコクが特徴的なのに対し、日東紅茶は爽やかな香りと渋みが特徴というところでしょうか。トワイニングとリプトンはおおむね商品説明のとおりですが、日東紅茶はアッサムが含まれるわりにコクが弱く、スリランカのハイグロウンの主張が強いような気がします。
味(ミルク入り)
ストレートの味を比較したところで、今度はミルクティーにした場合の味の変化を確かめてみます。ミルクを入れた状態の水色はこちらです。ストレートより色の違いがわかりやすいかもしれませんね。
右のリプトンが赤みがかった明るい色をしているのに対し、真ん中の日東紅茶はややくすんだ色をしています。トワイニングはその中間くらいでしょうか。
味の違いも三者三様です。
- トワイニング ハウス ブレンド:ナッツのような香ばしさがある。アーモンドミルクのような独特の甘さ
- 日東紅茶 デイリークラブ:牛乳の味に紅茶が負ける。かといって、長めに抽出すると雑味が出るので塩梅が難しい
- リプトン イエローラベル:甘みが引き出され、元々のコクと相まって濃厚なミルクティーになる
総評
こうして飲み比べると、どれも日本の消費者向けに日本でブレンドされた商品*1でありながら、味や香りに大きな違いがあることがわかります。とはいえ、この3つに共通しているのは、どれもそれなりに美味しいということです。価格が安いからといってまずいということはなく、ちゃんとした紅茶として成立しています。
逆に言えば、こうした紅茶を飲んで「大して美味しくない」と感じるとしたら、よほど紅茶を飲み慣れて舌が肥えているのでなければ、単に淹れ方が下手なだけという恐れがあります。特にこの3つがどれもまずいと感じたのであれば、ご自身の紅茶の淹れ方を再確認したほうがよいかもしれません。そういう意味では、こうしたスーパーなどで手軽に買える紅茶は、紅茶の淹れ方の上手さを測るバロメーターになりそうです。