今回の産地の研究は、スリランカのキャンディを取り上げます。「キャンディ」といっても、ローマ字の綴りはcandyではなくKandyなので、飴とは関係ありません。
産地の特徴
スリランカの国土の中央から南部にかけて広がる山岳地帯の中でも、キャンディはディンブラなどと同じく西側に位置しています。標高はおおよそ600~1,200m*1なので、セブンカインズ(7大産地)の中では唯一ミドルグロウンに分類されます。
クオリティシーズンについては、山の西側に位置していることから、ディンブラやヌワラエリヤと同じ2~3月頃と考えられますが、「クオリティシーズンがなく、年間を通じて品質が安定している」と説明しているメーカーや専門店も少なくありません。これらの説明を総合すると、「クオリティシーズンはあるにはあるが、他のシーズンとの差はそこまで大きくない」ということではないかと思われます。
また、キャンディはスリランカ紅茶発祥の地としても知られています。1948年まで英国の植民地だったスリランカでは、1820年代からプランテーション方式によるコーヒーの栽培が行われ、生産量を伸ばしていたそうです*2。しかし、1860年代末*3に「さび病」が発生したことでコーヒー産業が壊滅的な打撃を受けてしまいました。そこで、1870年代からは、主要産業が紅茶の栽培へシフトしていきました。そしてそのきっかけとなったのが、スコットランド人のジェームス・テイラー(James Taylor)がキャンディのルーラコンデラ(Loolecondera)茶園でアッサム種の栽培に成功したことだったのです。
このように、キャンディはスリランカ紅茶の歴史的に重要な産地なのですが、日本ではディンブラやウバなどのハイグロウンの産地に比べると、あまり知名度が高くないようです。しかし、以前レビューしたキリン「午後の紅茶」のミルクティーに茶葉が使われていたり、モスバーガーで紅茶を注文するとキャンディのティーバッグで提供されたりと、キャンディの茶葉も他の産地と同様に日本で広く消費されています。紅茶に詳しくない人でも、実は気づかないうちにキャンディの紅茶を飲んでいるかもしれません。
茶葉の特徴
さて、そんなキャンディの特徴を説明するとしたら、「マイルド」の一言に尽きます。もちろん実際の風味は茶葉によって多少の違いがあるものの、基本的にキャンディは渋みが控えめで香りやコクも穏やかと思っておけば間違いありません。
そのマイルドな味わいを楽しめるように、基本的にはストレートで飲むのがおすすめですが、等級の小さい茶葉を使ってミルクティーにしても美味しいです。また、渋みが控えめということは、タンニンの含有量が比較的少なくクリームダウンが起きにくいということでもあるので、アイスティーにも向いています。フルーツティーのベースとしてもおすすめです。
キャンディに合う食べ物は?
渋みが少なく癖のない味をしているので、乱暴に言えば大体何でも合います。そのうえで、渋みが強めであればバターやクリームを使ったお菓子に、マイルドな風味であれば繊細な味のお菓子に合わせるようにすると、おおむね間違いないと思います。
ただ、お菓子と一緒に飲むなら、お菓子の種類に応じてもっと相性の良い紅茶を選べばよいと言えるかもしれません。そこでおすすめしたいのが、食事と一緒に飲むことです。元々紅茶は口の中の油分を洗い流してくれますが、その中でもキャンディは食べ物の味を邪魔しないので、食事中に飲むのに最適です。特にこれからの季節は、焼き肉やカレーにキャンディのアイスティーを合わせると、さっぱりと楽しめると思います。