産地別紅茶の研究4回目の今回は、ディンブラと同じスリランカの産地であるヌワラエリヤを取り上げます。
産地の特徴
ディンブラの記事でも説明したとおり、スリランカは国土の中央から南部にかけて山岳地帯が広がっていますが、ヌワラエリヤはその中心部にあり、スリランカで最も標高の高い産地です。山岳地帯の頂上付近に位置しており、夏と冬どちらの季節風からも影響を受けるため、クオリティシーズンは1~2月頃と8~9月頃の年2回あります。ただ、リプトンのティースクールで受けた講義によると、1~2月頃に採れた茶葉のほうが質は高くなるそうです。
名前に聞き覚えがない方もいらっしゃるかもしれませんが、実はヌワラエリヤは意外と身近な産地です。たとえば、キリン「午後の紅茶」のレモンティーは、ヌワラエリヤの茶葉を多く使用しているそうです。また、「青缶」の通称で知られるリプトンの「エクストラクオリティ セイロン」は、ヌワラエリヤを中心としたブレンドであると言われています。それ以外にも、スリランカのハイグロウンのブレンドでヌワラエリヤの茶葉が使われている場合があるので、知らず知らずのうちに口にしているかもしれません。
茶葉の特徴
ヌワラエリヤの特徴は、まず水色(すいしょく)の美しさにあります。他の産地と比べて酸化発酵の度合いが低いので、水色も淡くなり、透明感のある黄金色やオレンジ色になります。以下の画像はヌワラエリヤとディンブラの水色を比べたものですが、左のヌワラエリヤのほうが明らかに淡い色をしています。実は茶葉の量が同じではなく、ディンブラ(1.5g)に比べてヌワラエリヤ(2.0g)のほうが多いのですが、それでもヌワラエリヤの色が淡いですね。
香りについては、バラのような華やかな香りになることもあれば、柑橘類を思わせる爽やかな香りになることもあり、いずれにしても水色と同じく軽やかな印象があります。味はスリランカのハイグロウンらしく、爽快でしっかりした渋みが出る場合もありますが、香りが軽やかなのもあってか、渋みの強さがあまり気になりません。そうでなくても、酸化発酵が抑えられている茶葉や、OPなど等級が大きめの茶葉では渋みが穏やかになり、その分香りの良さを存分に楽しむことができます。
こうした水色の美しさや香りの華やかさから、シャンパンに喩えられることもあるヌワラエリヤは、やはりストレートで飲むのがベストでしょう。ただ、柑橘のような香りを活かしてレモンティーにするのもありです。その場合は、ヌワラエリヤの繊細な香りや味を損なわないように、レモンスライスをさっとくぐらせる程度にすることをおすすめします。
ヌワラエリヤに合う食べ物は?
意外に思われるかもしれませんが、真っ先に挙げられるのが和菓子です。特に羊羹など小豆餡を使った和菓子は、ヌワラエリヤの爽やかで繊細な味わいと相性抜群。桜の季節の桜餅や、こどもの日の柏餅と合わせるのもよいですね。
また、レモンティーにする代わりに、レモンケーキやウィークエンドシトロンなど、柑橘類を使ったお菓子と一緒に飲むのもよいと思います。
春らしい爽やかなお菓子と一緒に、ぜひヌワラエリヤを楽しんでみてください。
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