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紅茶を光の当たる場所で保管してはいけません

紅茶の保存の仕方について、ビギナーの方から質問されることがたまにあります。紅茶は毎日何杯も飲まない限り、一度購入したら飲み切るまで数週間~数か月はかかるので、慣れていない人はどう保存すればよいのか悩むのかもしれません。

僕はそういう質問をされたときは、「しっかり密封して、光の当たらない涼しい場所で常温保管してください」と伝えています。これは僕が自分で考案したわけではなく、各種紅茶メーカーやブランドも広く推奨している保管方法です。たとえば、カレルチャペック紅茶店のサイトでは、茶葉の保管方法について次のようにわかりやすくまとめられています。

紅茶の保存では、湿度、温度、光、酸素、臭いの5つの要因に注意することが重要になります。購入した茶葉は、高温多湿、直射日光を避けた冷暗所で保存し、開封していなければ1~2年、開封後は半年くらいで使いきるようにしましょう。
(太字は引用元に準拠)

さて、今回注目したいのは、上の5つの要因のうち3つ目の「」です。食品が光によって劣化する場合があるというのは、小中学校の家庭科の授業でも習うほど基本的な知識のはず。ところが、実際は茶葉を透明なパッケージに詰めて販売している専門店やメーカーが少なくありません。これは日本に限った話ではなく、紅茶の本場である英国でも、中身が見えるパッケージで茶葉を販売しているブランドがそれなりに見受けられます。

では、中身が見える透明なパッケージに入った状態で、茶葉が光に当たり続けたらどうなるのでしょうか? 今回はそれを検証するための実験をしてみました。

 

実験の手順

まずは以下の手順で実験の準備をしました。

  1. 茶葉を器に入れ、ラップで密封し、光の当たる場所に置く(室内光のみ。太陽光は当たらない)。
  2. 手順1と同じ種類の茶葉を別の器に入れ、密封されていない状態で暗い場所(具体的には台所のシンクの下)に置く。
  3. この2つの茶葉をそれぞれ1週間放置する。
  4. 1週間が経過したところ、開封直後の茶葉を含めた3種類を飲み比べる。

手順2のような茶葉を用意したのは、茶葉を空気に晒し続けることによる影響を確認するためです。手順1の茶葉はいくらラップをしているとはいえ、空気が多少入り込むのは避けられないので、純粋な光の影響を確認しやすくするために、密閉せずに保管した茶葉も用意することにしました。

なお、実験にはカレルチャペック紅茶店の「カレルブレックファスト」を使用しました。

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左が1週間光に当てた茶葉、右が1週間密閉せずに暗所で放置した茶葉です。

 

飲み比べの結果

ではいよいよ飲み比べに移っていきましょう。まずは茶葉の状態ですが、見た目にはほとんど差がありません。

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左から順に開封直後の茶葉、光に当てた茶葉、密閉せずに放置した茶葉です。

しかし、においを嗅いでみると、光に当てた茶葉だけ明らかに異臭がします。梅干しのような、赤紫蘇のような、ツーンとくる不快な臭いがするのです。抽出するとその特徴がさらに際立ち、砂糖が入っていない紫蘇ジュースのような、梅酢のような、何にせよとても紅茶とは呼べない風味がします。さすがにこれは誰が飲んでも不味いと思うのではないでしょうか……。

なお、密閉せずに暗所で放置した茶葉は、開封直後の茶葉と比べて香りや味が抜けていたものの、飲めないことはないというレベルでした。きちんと密封して、暗いところで保管した茶葉でも、開封から数週間が経つと同じくらいの風味になるので、まだ紅茶の範疇にあるとは言えるでしょう。 

 

結果から言えること

以上の結果から、「茶葉を空気や湿気に触れさせるのも良くないが、それ以上に光が当たる環境で保管するのは厳禁である」ということが言えるでしょう。しかもここで言う「光」とは、直射日光はもちろんのこと、室内の照明の光も含まれます。「実験の手順」の節で説明したとおり、今回の実験では茶葉を室内光にのみ晒しており、直射日光には一切当てていませんが、それでも味や香りが大きく変質していました。

また、茶葉を保管する環境に注意しなければならないのは、商品を購入した後だけではありません。購入前の茶葉がどんなパッケージに包装され、どんな環境に置かれていたのかについても注意を払う必要があります。当然ながら、透明なパッケージに入った茶葉は買わないほうがよいでしょう。いつパッケージに詰められたのかがわからない以上、購入時点で品質が大きく劣化している恐れもあるからです。

そういったリスクを避けたければ、光を通さない箱やアルミの袋に入った商品を選ぶようにしましょう。たとえば、スーパーでよく売られている紅茶や、ルピシアやカレルチャペックなど主要なブランドの商品は、光や空気を通さない包装に入っているので安心です。

さらに、繰り返しになりますが、いったん開封した茶葉を保管する際は、空気が入らないよう密封したうえで、光の当たらない涼しい場所に置きましょう。密封の際は、袋の口をクリップなどで閉めたり、下の画像のようなパッキン付きのティーキャディに入れたりします。また、茶葉本来の香りが消えてしまわないよう、においや香りの強いものの近くや冷蔵庫の中には置くのは避けてください。 

ティーキャディ

左はパッキン付きのティーキャディ、右は中蓋付きの缶に茶葉を入れています。

紅茶は正しく保管すれば、未開封なら製造後1~2年は保存でき、開封後でも1~2か月は楽しめます。せっかく買った紅茶なのに、保管の仕方がいい加減で無駄にすることがないよう、この記事で説明した条件を守って保管することをお勧めします。