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ティーアドバイザーになったので認定試験の傾向と対策を考えてみた

先日、日本紅茶協会が主催するティーアドバイザー認定試験に合格しました。点数は開示されませんが、みっちり勉強したおかげで、少なくとも9割は取れたと思います。

そこで今回は、ティーアドバイザー資格の取得を検討している方、あるいは認定試験に向けて勉強している方を主な対象として、養成研修の内容や試験の対策について解説します。

 

ティーインストラクターと何が違うの?

本題に入る前に、そもそもティーアドバイザーとはどんな資格なのかを説明しておきたいと思いますが、こういうのは比較対象があるとわかりやすくなります。そこで、同じく日本紅茶協会が認定する資格のひとつであり、名前が似ているティーインストラクターとの違いを見ていきましょう。

認定制度の趣旨

まずはそれぞれの資格認定制度の趣旨についてです。日本紅茶協会のサイトでは次のように説明されています。

ティーインストラクター養成研修の目的は、「一般消費者に対して、紅茶に関する正しい知識と紅茶のおいしいいれ方の技術を講習する方」を養成することにあります。紅茶について体系的に学ぶ座学やテイスティング実習、おいしいいれ方を伝えるデモンストレーションの実習など充実した内容です。
ティーアドバイザー養成研修は、紅茶販売やフードビジネスの現場に役立つ知識の習得ができる研修です。(原文ママ

……飲み込みにくいので、もう少し噛み砕いて言い換えると、ティーインストラクターは「インストラクター」という名のとおり、紅茶の教室やセミナーなどで講師をしたい人向けの資格です。したがって、養成研修では紅茶の基礎知識だけでなく、講師として人に教えるために必要なスキル(レッスンの開き方、人前での話し方、資格取得後の活動方法など)についても学ぶことになります。

一方、ティーアドバイザーは紅茶を提供するカフェや飲食店、紅茶のメーカーや販売店など、紅茶を商材として扱う企業で働きたい人(あるいはすでに働いている人)や紅茶ビジネスを立ち上げたい人向けの資格です。マーケティングや関連法規についても学習するため、ティーインストラクターと比べてビジネス色が強いと言えるでしょう*1

認定試験の内容

こうした趣旨の違いは、認定試験の内容にも強く現れています。たとえば、ティーインストラクターになるには、筆記試験テイスティングの試験に加え、紅茶の淹れ方を人に説明するデモンストレーションの試験に合格しなければなりません。

一方、ティーアドバイザーの認定試験は筆記のみです。テイスティングや紅茶の淹れ方の実習はありますが、認定試験に実技はなく、ペーパーテストの結果さえ良ければ資格を取得できます。

養成研修の期間と受講料

認定試験を受けるには、どちらの資格も養成研修に参加しなければなりませんが、その期間と受講料にも大きな違いがあります。ティーインストラクターの養成研修では、週1回または隔週1回の授業を4月から12月まで全30回受ける必要があります*2。受講料は297,000円(税込)で、さらに認定試験の受験料と認定登録料がそれぞれ10,000円ずつかかるので、合計317,000円もの費用がかかることになります。

これに対し、ティーアドバイザーの養成研修の場合、会場に行かなければならないのは実習2コマ*3と認定試験のときだけです。ただし、実習から認定試験までの間に約3週間あり、その間に座学の5科目を動画で自習*4しなければなりません。受講料は88,000円(税込)。これには資格認定料も含まれます。

 

以上を踏まえると、取得までに時間と手間とお金のかかるティーインストラクター資格のほうが難易度が高いと言えそうです。ただ、ティーアドバイザーはビジネス関連の内容も養成研修に含まれるため、ティーインストラクターの下位資格とは必ずしも言えません。実際、ティーインストラクターとティーアドバイザー両方の資格を取る人もいるそうです*5

ちなみに僕の場合、

  • 大学時代に教員免許を取得したうえ、塾講師を何年もしていたから、人に教えるスキルはそこそこある
  • 紅茶講師として活動するつもりは(少なくとも今のところ)ない
  • そもそも30万円もの大金を用意したくないし、1年間も講座に通い続ける気力がない

という理由により、ティーインストラクターではなくティーアドバイザーの資格を取ることにしました。

 

認定試験の科目と配点

さて、いよいよ本題の認定試験についてです。科目の一覧はティーアドバイザー養成研修のページにも載っていますが、各科目の配点も合わせてまとめると、次のようになります。

  1. 茶の流通 200点
  2. 産地別茶産業とテイスティング 200点
  3. 紅茶の淹れ方とティーメニュー 100点
  4. 紅茶製品の製造技術と品質保証 150点
  5. 紅茶市場のマーケティング 100点
  6. 紅茶と健康 100点
  7. 食品に関わる諸法規 150点

以上の7科目1,000点満点中、70%の700点が取れれば合格です。科目の多さに驚いてしまうかもしれませんが、試験時間が100分もあるうえ、どの科目の講義でも大事なポイントを講師が強調してくれます。そこをきちんと押さえておけば、7割を取るのは難しくないでしょう。また、科目ごとに合格点が設定されているわけではなく、合計で700点取れればよいので、仮に苦手な科目があったとしても他で挽回できればOKです。

ちなみに、2011年に資格を取った方のブログ(下記リンク)によると、マーケティングに関する科目の配点が150点だった(現在より50点多かった)ほか、「紅茶製品の製造技術と品質保証」の科目がなく、代わりに「その他飲料(コーヒーなど)の基礎知識」という科目があったそうです。今後も科目や配点が変わる可能性があるため、念のため紅茶協会からの告知や案内には注意しておきましょう。

lesser.asablo.jp

 

各科目の内容と対策

重要な事項を覚えておけばとりあえず合格できるとはいえ、具体的にどう勉強すればよいか、お困りの方もいらっしゃると思います。そこで、以下では各科目の内容を紹介しつつ、効果的な学習法を考えていきます。

茶の流通

茶園で詰まれた生の茶葉がリーフティーティーバッグとして消費者の手元に届くまでの過程を学ぶ科目です。紅茶の歴史、主な品種、生産量の統計、製造方法の種類、物流の流れなど、さまざまな題材を幅広く学習します。

扱う題材が多いといっても、ひとつひとつの中身はあまり深く突っ込まれません。紅茶に詳しくない人でも、大事なポイントをひととおり覚えておけば高得点が取れると思います。元々紅茶の知識がある人なら満点も狙えるでしょう。

「ただテキストを読んで覚えるだけではつまらない」という方は、たとえばこうした入門書を眺めてみるのもおすすめです。

産地別茶産業とテイスティング

その名のとおり、紅茶の主要な産地の特徴とテイスティングの方法について学ぶ科目です。テイスティングの方法については、講師が強調する部分を覚えておけば問題ないと思いますが、主な産地の特徴については重点的な学習が必要です。というのも、試験では各産地の特徴を答えさせる問題が大半を占めており*6、主要な産地のクオリティシーズン、茶葉の色や見た目、紅茶の水色(すいしょく)、味や香りの特徴を暗記しておかなければ解答できないのです。そのため紅茶ビギナーの人にとっては最難関の科目になると思われます。

対策としては、各産地の特徴をひたすら覚えるしかありませんが、文字だけを見て丸暗記するより、自分の五感を使ったほうが覚えやすくなるでしょう。実習の授業で飲む機会があるとはいえ、できれば茶葉を自分で購入し、紅茶を淹れてみることをおすすめします。その際は、次の科目の「紅茶の淹れ方とティーメニュー」で習った方法で淹れると、2科目同時に復習できるので効率的です。

復習を兼ねつつ、ダージリンファーストフラッシュとキームンのテイスティングをしました。

紅茶の淹れ方とティーメニュー

基本のホットティーやアイスティーの淹れ方に加え、各種アレンジティーの作り方を練習する科目です。学習内容自体はかなり簡単ですが、普段自分で紅茶を淹れる機会のない人は、実習を受けた後に基本のホットティーの淹れ方だけでも練習しておくとよいでしょう。なお、練習の際は使う茶葉の量やお湯の量、茶葉の蒸らし時間などの数字を意識してみてください。

紅茶製品の製造技術と品質保証

市販の紅茶飲料やインスタントティー(粉末飲料)の製造工程を学習する科目です。ほとんどの人にとっては馴染みのない内容が続くので、用語を覚えるのが大変かもしれません。学習の際は、重要な用語を闇雲に覚えるのではなく、製造工程の大まかな流れを念頭に置きながら各工程の注意事項を理解していくと、記憶に残りやすくなると思います。

紅茶市場のマーケティング

科目名のとおり、日本の紅茶市場の現状についても取り上げられますが、メインになるのはマーケティングの歴史やマーケティング分析の手法です。マーケティングに馴染みのない人にとっては、前の科目と同じように初めて習う内容ばかりだと思います。加えて、マーケティング用語は英語やカタカナが多く、苦手な人は苦戦するかもしれません。幸い配点が少ないので、場合によっては必要最低限のところだけ覚えて、後は捨ててしまうのもひとつの手です。一方、英語や横文字が得意な人にとっては得点源になります。

紅茶と健康

紅茶の成分と健康効果について学ぶ科目です。覚える量が少ないので勉強に時間はかからないと思いますが、学習の際は緑茶の成分との違いを重点的に覚えるとよいでしょう。

食品に関わる諸法規

紅茶製品の食品表示について、食品衛生法景品表示法などの各種法令でどう規定されているかが主な学習内容です。紅茶に限らず、食品や飲料のパッケージで原料や原産地などをよく見ている人にとっては、取っつきやすい内容だと思います。ただ、他の科目よりも試験の難易度がやや高めに感じられたので、テキストを念入りに読み込んでおくことをおすすめします。

 

試験全体の注意事項

各科目の内容について見たところで、次はすべての科目に共通する注意事項をいくつか紹介しておきます。

  • 漢字に不安があれば書き取り練習をしておく
    試験問題は記号選択式が多いのですが、少数とはいえ語句を書かせる問題も出されます。用語がうろ覚えになっていると失点につながるので、不安があれば漢字を書く練習をしておきましょう。特に「紅茶製品の製造技術と品質保証」や「食品に関わる諸法規」は漢字の用語が多く、注意が必要です。
  • 筆記用具は多めに準備する
    科目数が多いため、試験中に書く量も必然的に多くなります。不意に鉛筆が折れたり、シャープペンが壊れたりしたときに備え、筆記用具は多めに持ち込んでおきましょう。鉛筆削り器やシャープペンの替え芯を持っていくのもおすすめです。
  • 試験問題は持ち帰れない
    設問と解答欄が同じ用紙に印刷されている(つまり問題用紙と解答用紙が分かれていない)ため、試験終了後に問題用紙を持ち帰ることはできません。当然ながら、自宅で自己採点や復習をすることもできません。

 

試験の予想問題

問題用紙が手元にないうえ、講座の内容を転載することは禁じられているため、試験問題そのものをここに書くことはできません。そこで、これから認定試験を受ける方の参考になるよう、実際の試験問題に似せた例題を作ったので、最後にいくつか掲載しておきます。なお、これはあくまで予想問題であり、本番の試験で同じ問題が出るわけではないという点をご承知おきください。

問1 次の文中の空欄に当てはまる語を下の語群から選び、その記号を空欄に記入しなさい。

 

 現在のヨーロッパで紅茶大国として知られているのは英国だが、ヨーロッパで初めて紅茶を輸入した国は(  )と言われている。英国で紅茶が広まる最初のきっかけになったのは、ポルトガルのブラガンザ公の娘であった(  )である。彼女が1662年頃、英国王室に輿入れした際にお茶を持ち込み、貴族たちに振る舞ったことで、宮廷で喫茶の習慣が流行した。

 

【語群】

a:フランス b:オランダ c:ドイツ d:キャサリン e:メアリ g:アンナ・マリア

 

【正解】

1つ目はb、2つ目はd

 

問2 次の文中の空欄に紅茶の成分の名称を入れ、文章を完成させなさい。

 

 茶葉の旨味成分のひとつである(  )は、日光を受けると渋味成分の(  )に変化する。これが発酵の過程で酸化重合すると、橙黄色を示す(  )になり、さらに発酵が進むと赤褐色を示す(  )に変わる。

 

【正解】

前から順に、テアニン、カテキン、テアフラビン、テアルビジン

 

問3 以下の文が正しければ◯を、誤っていれば✕を書きなさい。

 

  1. STP分析の「STP」とは、Segmentation、Targeting、Propositionの頭文字を並べたものである。
  2. 世帯あたりの品目別消費金額を見ると、紅茶もコーヒーも世帯年収によって消費金額が大きく変わることはない。
  3. コロナ禍の影響により、近年は家庭内での紅茶消費量が増加傾向にある。

 

【正解】

1.は✕、2.は✕、3.は◯

以上の問題があっさり解けた方、あるいはちょっと勉強すれば解けそうだと思った方は、ご興味があればチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

合格すると、試験から数週間で認定証とバッジが届きます。

 

*1:とはいえ、ティーインストラクター資格の取得者にも、講師業以外で紅茶関連の仕事に就く人はたくさんいます。また、ティーアドバイザー資格を取得した後に講師業を始める人もいます。

*2:各種実習や認定試験のほか、静岡での製茶実習1回を含んだ回数です。

*3:コースによって、1日で完結する場合と、2日に分かれる場合があります。

*4:以前はこの5科目も会場で講義が実施されていましたが、新型コロナウイルスの影響により、数年前からeラーニングに変わりました。もしかしたら今後また会場での講義に戻るかもしれません。

*5:なお、ティーインストラクターの厳密な資格名は「ティーインストラクター(ジュニア)」であり、ジュニアの上にはシニアとマスターという2つの上位資格が存在します。

*6:僕が受けた回では、配点が200点中140点もありました。