（最終更新：2023年9月12日）
産地別研究のシリーズもついに2桁となりました。記念すべき10回目の今回は、スリランカのウバを取り上げます。紅茶にあまり詳しくない人にとっても、ウバは馴染みのある産地ではないかと思います。
産地の特徴
本シリーズでこれまで取り上げてきたスリランカの産地は、いずれも山岳地帯の西側に位置していますが、ウバは反対側の東側に位置しています。したがって、他の産地が冬の時期にクオリティシーズンを迎えるのに対し、ウバは南西の季節風の影響を受ける7～9月頃にクオリティシーズンがやってきます。夏に摘まれた茶葉が船便で日本に運ばれてくるまでには数か月かかるので、ウバの新茶が日本で出回るようになるのは秋から冬にかけて、つまり今くらいの時期ということになります。
なお、ウバの標高はおおむね1,200m以上なので、ハイグロウンに分類されると思っておけば間違いありません。ただし、茶園によってはミドルグロウンに含まれるところもあります*1。
茶葉の特徴
ウバの特徴といえば、他の産地とは一線を画すほどの強烈な渋みと、「ウバ・フレーバー」とも呼ばれる爽やかな香りにあります。バラの花のような香気を持つこともありますが、よく見られるのはメントールのような香りで、強烈なものは「サロ○パス」や「リステ○ン」に喩えられることもあります（笑）。
ただし、メントール香が強すぎる茶葉には少し注意したほうがよいかもしれません。というのも、茶葉によってはメントール香が人工的に後付けされている可能性があるそうなのです。日本の紅茶専門店にも、ウバの着香問題について以下のように言及しているところがあります（いずれの引用も原文ママ）。
旬の時期になるとすーっとしたメントール系の香りが突出するウバですが、ここ10年くらい、その香りを人工的に強調させた着香茶が市場に出回り・・・大きな問題になっていました。人工の香りは、時間が経っても香りが変化しないのが特徴で・・・自然香とは似て非なるもの。（紅茶専門店ChaTea）
近年、ウバのピーククオリティシーズンの茶はこのサルメチール香がそれ以外の時期と比べてまるで別物なのではないかと思うほどインパクトの強いものとなっています。（中略）現地でやりとりをしている紅茶業界の方々とお話を伺うと案の定、このサルメチールは着香されている可能性があるとのことでした。（紅茶専門店ラ・テイエール）
ウバの中には、メンソールのようなスーッとする香りを持っているものがあります。近年では、より強い香りを、という需要に対応するために着香を施すものが増え、自然な香りのウバがなかなか入手できないという本末転倒の事態も。（コノハト茶葉店）
特に茶葉そのものからメントールの香りがする場合は、着香されている可能性が高いので注意したほうがよいでしょう。
なお、ウバはストレートで香りや渋みを味わうことも、ミルクを加えてフルーティーな味わいを楽しむこともできる茶葉です。ストレートで飲む場合、BOPなど等級の小さい茶葉を使うのであれば、まずは30秒～1分ほど抽出したところで味見をしてみてください。他の産地の茶葉と同じように2～3分抽出すると、渋くなりすぎる可能性があります。
相性の良い食べ物は？
ウバは香りも味も主張が強いので、合わせる食べ物には味がしっかりしたものを選ぶことをおすすめします。たとえば、バレンタインの頃の記事にも書いたとおり、チョコレートとウバのペアリングは定番です。甘さの強いミルクチョコレートでも、苦味の効いたチョコレートでも、ウバは確実に受け止めてくれます。ミントのような香りのウバとチョコレートの組み合わせは、さながらチョコミントのようです（笑）。
チョコレート以外では、チーズや生クリーム、ナッツなどもウバに合わせるのにぴったりです。特にチーズケーキはチョコレートと並んでウバと相性のよいスイーツと言えます。
ウバは好みが分かれやすい茶葉ですが、上質なウバとチョコレートやチーズのペアリングは格別です。ウバがあまり得意ではない方にもぜひ一度試していただきたいと思います。
*1:たとえばディックウェラという茶園は標高700～1,200mの範囲に位置しているそうです。
