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硬水を使うと紅茶の味が変わるって本当?

(最終更新:2023年8月17日)

英国で紅茶を飲んだことのある人から、「日本で飲む紅茶はコクが足りない」という声を耳にすることがあります。

僕自身は英国で紅茶を飲んだことはありませんが、英国への留学経験のある人から何度か実際に聞いたことがあります。また、ルピシアには「ユニオンジャック」というブレンドティーがあり、「イギリスで親しまれる紅茶の味と香りを再現」したと謳っています。わざわざこうして商品化するくらいなので、「日本の紅茶は物足りない」と感じる人は決して少なくないようです。では、このように感じる原因はどこにあるのでしょうか?

ルピシアのサイトによると、原因のひとつは英国と日本の水の違いにあるそうで、

日本の水は軟水ですが、イギリスは硬水。イギリスで飲んだ紅茶が日本では別物に感じるのはそのためです。

と説明されています。英国で硬水を軟水に変える装置を販売している企業のサイトによると、英国の水がすべて硬水というわけではありませんが、英国の全世帯のうち約6割で硬水が使われており、特にイングランドの東部や南部、中心部に集中している*1そうです。イングランドの南東部には、ロンドンなど観光客の多い都市が集まっているので、「日本の紅茶は英国とは違う」と感じる人が多いのも頷けます。

とはいえ、英国で紅茶を飲んだことがない僕にとっては、そんなに違うものなのかとちょっと不思議に思っていました。そこで今回は、軟水と硬水で紅茶を淹れて飲み比べる実験をしてみました。実験の条件は以下のとおりです。

結果は以下の写真のとおりになりました。左が硬水、右が軟水です。

紅茶_硬水と軟水

水色(すいしょく)が明らかに違いますね。右の軟水のほうは、我々がよく知る一般的な紅茶の色ですが、左の硬水のほうは色が濁っています。英語のblack teaという名前は茶葉の色に由来するそうですが、この茶液の色も十分blackですよね。

水色だけでなく、香りや味もまったく違います。軟水のほうはバラのような穏やかな香りと強い渋み、そして焦がしたナッツのような香ばしい後味がします。一方、硬水のほうはスモークチーズのような熟成された感じのある香りで、渋みが消えて独特のコクが出ています

また、ウバはミルクティーにも合うので、それぞれ大さじ1杯の牛乳を加えてみました。写真だと少しわかりにくいかもしれませんが、ミルクを入れても右の軟水のほうが澄んだ色をしています。

紅茶_硬水と軟水_ミルクティー

軟水のほうは強い渋みが消えて飲みやすくなり、また南国の花のような香りが感じられます。これに対し、硬水のほうはカフェラテのような飲みごたえのあるミルクティーになります。軟水の場合とは異なり、ミルクを加えたほうがかえって渋みが増すようです。

このように、茶葉が同じでも、軟水と硬水では水色も香りも味も大きく変わります。では、なぜこのような違いが生まれるのでしょうか? 実は、紅茶の渋みの原因であるタンニンが水分中のカルシウムやマグネシウムと結び付くと、渋みが抽出されにくくなります。その結果、渋みが消えて紅茶のコクが際立ちやすくなるのです。

これは悪く言えば茶葉本来の味や香りが失われるということなので、紅茶メーカーやブランドでは軟水を推奨しているところが多いように思います。とはいえ、最終的には自分の好み次第。いろいろな茶葉を軟水と硬水で淹れてみて、自分の好きな組み合わせを探してみてはいかがでしょうか?

*1:原文は、About 60% of homes in the UK suffer from hard water. These are mainly concentrated in central, eastern and southern England.