紅茶の主な生産国といえば、インドやケニア、スリランカなどが挙げられますが、日本国内でも紅茶が作られていることをご存じでしょうか? 一昔前は「日本の紅茶は美味しくない」と言われることもありましたが、近年は生産者の皆さんの努力により、茶葉の質・量共に向上してきていると言われています。また、他の産地の茶葉にはない独特の風味をアピールするために、「和紅茶(Wakoucha)」としてブランディングが行われているようです。
これまでこのブログでは、さまざまな産地の茶葉を取り上げてきましたが、日本の紅茶については手薄になっていました。そこで今回は、国産紅茶の茶葉をいくつか取り寄せ、飲み比べてみることにしました。
ラインナップ
今回の対象は全部で6種類。そのうち以下の5種類は、おくだ茶房という国産紅茶の専門店で購入しました。
もう1種類は、以前ルピシアで購入した静岡県掛川の有機紅茶です。
ちなみに、年末にテイスティングカップをまとめ買いしたので、6種類を一度にまとめて淹れてみました。紅茶専門店でしか見たことのない光景なので、紅茶好きとしてはちょっとテンションが上がります(笑)。
では、それぞれの香りや味を見ていきましょう。
猿島紅茶 いずみ(茨城県)
ジャパンティーフェスティバルのプレミアムティコンテストで最高賞を獲得した茶園で生産された茶葉だそうです。水色(すいしょく)は明るめで、梅雨時の森のような草木の香りが広がります。味は渋みがやや強めに感じました。
最高賞の茶園ということでちょっと期待していたのですが、正直それほどではないかなと……。
狭山野紅茶(埼玉県)
この茶葉を生産している増岡園という茶園は、埼玉県で唯一、有機JAS認証を受けているそうです。抽出した茶液の水色はやや暗めで、煎茶のような爽やかな香りがします。味は渋みに加えて雑味が強く、甘みや旨味は控えめに感じました。
嬉野紅茶(佐賀県)
水色の明るさは、1つ前の狭山野紅茶と同程度ですが、味や香りはかなり穏やかです。お店の説明では「香りと甘みのバランスが非常に良い」とされていますが、バランスが良いというより個性が薄いと言ったほうがよい気がします。
天の紅茶(熊本県)
嬉野紅茶とは対照的に、茶葉の見た目から香りや味までインパクトの強い茶葉です。水色は暗めで、烏龍茶のような焦げた香りがします。味はさらに強烈で、竹炭を口に含んだような味に感じられます(竹炭を口に入れたことはありませんが……)。
屋久島紅茶(鹿児島県)
天の紅茶ほどではありませんが、水色はやや暗め。焚き火のような香りがあり、口に含むと燻製のチップような味が広がります。茶葉を燻しているわけではないはずですが、かなりスモーキーです。
掛川有機紅茶(静岡県)
水色は明るめ、というより淡いと言ったほうがよいかもしれません。煮詰めたリンゴのような香りがあり、素直な甘みと旨味が強く感じられます。個人的に、今回の6種類の中ではこれがいちばん飲みやすいと思います。
まとめ
今回飲み比べた6種類は、それぞれに多少の個性の差はあるものの、おおむね次のような特徴は共通していました。
- 日本茶(緑茶)に通じる旨味と香りがある
- 他の産地の紅茶に見られる渋みやコクは弱い
- 渋みに代わり、雑味やエグみを含む茶葉もある
爽快な渋みや強いコクなど、いかにも紅茶らしい特徴がないので、紅茶らしさを期待して飲むと拍子抜けしてしまいます。一方、渋みが少なく緑茶に近い独特の味があるので、紅茶の渋みが苦手な人でも飲みやすいと思います。同じように渋みの少ない茶葉にはスリランカのキャンディやインドネシアのジャワなどもありますが、紅茶らしいコクより緑茶に近い旨味を求めるのであれば、国産紅茶は十分選択肢になるでしょう。
ただ、他の産地に比べて紅茶作りの歴史が浅い*1分、品質が安定していない印象も受けます。とはいえ、それは今後の伸びしろがあるということでもあるので、これからの質の向上に期待したいところです。
今後もこのブログでは、美味しい国産紅茶を見つけたら、随時ご紹介していきたいと思います。